第14話 ほぼほぼ、DVの夜。2人のしおりは、ピンクにならず。期待していた人、残念!「ピンクのしおり」の意味がわからない人、もっと、残念!

 「…ああ。終わりました」

 巫女は、汗をハンカチでぬぐって、その身体全体を、カルディナといわれた扇であおいでいた。

 「色っぽいよなあ」

 「ちょ、ちょ」

 「エッチっぽくて、良いな…」

 「ちょっと!」

 「ルシアさん、痛い!」

 またつねられた、門番。

 いや、ツバキ。

 「巫女様?急なお願いでしたが、ありがとうございました」

 「礼には、及びませんよ」

 巫女は、シュシュシュッと唇を震わせながら、立ち上がった。

 何も受け取らず、店を出ていく。

 「もう、裏切らないでくださいね。今度裏切ったら殺しますからねって、あの人に、言っておいていただけますか?」

 不気味な言葉を、残して。

 「何、誰のこと?」

 店先の角を曲がったときには、もう、巫女は見えなくなっていた。

 「まあ、良いか…」

 門番となっていたツバキが代表して、地図の、印のあった場所に向かう。

 「こ、これは…!」 

 これが、見つからなかった物だったとは!

 誰もが忘れかけていた、あの、盾。

 「探している物は、ここにあったのか!」

 「やったな」

 「ルシアさんのお父様が帰ってきたら、真っ先に、見てもらおう」

 盾は、店の西側天井裏の端に、そっと、置かれていた。

 もちろん、事件は、これで終わらない。

 「くー、くー…」

 見つけた門番、いや、ツバキは、盾を一階に下ろすと、一眠り。

 軽率すぎた。

 「あ、何で?」

 目を覚ますと、やっと見つけられた盾が、なくなっていたのだ。

 彼女に、正直に相談。

 「あの盾を、なくしてしまいました」

 「え?」

 「巫女のおかげで見つけられたあの盾を、目を離したときに、どこかに、やってしまいました」

 「はあ?」

 激怒され、ぐられた。

 連打。

 連打。

 連打。

 スパルタンX。

 今どきの子が、そんなゲームを知るか!

 「うう…」

 気になっていた人を前にこうまで激怒されてしまうと、相当、へこむもの。

 ツバキは、道場から去った。

 あわてたのは、まず、彼女。

 「ごめんね。言いすぎた」

 門番、いや、ツバキを探しに、店の中や町を走った。

 そうしたら、また、おかしなことがおきてしまう。

 夕方のこと。

 ツバキと入れかわっていた門番が死んでいるのが、発見されたのだ。

 発見されたのは、アルバイン城へと続く道の途中。

 「おーい!」

 「何だー?」

 「あの防具屋の印の入った服を着た男が、倒れているぞー!」

 城の者が言って、すぐに、町の人々のうわさに上がった。

 「きゃあ!」

 かけつけ、叫び、彼の身体を動かそうとした、彼女。

 なぐってもみた。

 が、門番となっていたツバキは、動かなかった。

 ツバキの身体のすぐそばには、カルディナとばれる扇子が、落ちていた。

 彼女は、悔やんだ。

 が、どれほど悔やんでも、倒れたツバキの意識が戻ってくることはなかった。

 「ごめん…」

 彼女の涙が、ツバキのほほに落ちた。

 そのとき…。

 鼓動が、よみがえる。

「何、生きているの?」

 「…う、うう」

 「さっきは、ごめんね!」

 ツバキのほほを、強くはたいた。

 バシッ!

 バシッ!

 ほぼほぼ、DV。

 その夜。

 2人の心の中にはさまれていたしおりは、ピンクにはならなかった。

 「ピンクのしおり」を期待していた人は、残念でした。

 翌朝。

 軽く、いや、重苦しい音が、届く。

 コトン…。

 店の外に出てみると、玄関の外には…!

 え?

 なぜ、見つからなくなっていた盾がここにあるんだ?

 不思議なできごとは、続く。

 仲間の、クマダやオオウチヤマのことが、なぜか急に、思い出されてきた。彼らも、心で再会できたということなのか?





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る