第12話 ドキドキする、うわさの美人巫女を発見しました。エッチな予感が、止まらない。茶屋で、わざわざ水を飲んでいるのが、気になるんだが?

 いくつもの謎がうずまきそうな、守りの世界。

 見知らぬ美人巫女についてのうわさ話が、うるわしい。

 エッチな予感が、しています。

 「どんな巫女、でしたか?」

 「緑の衣を、まとっていてな」

 「へえ」

 「この世では他に見られないほどの、きれいな人」

 「本当に?」

 「ああ」

 「本当に、そういう巫女だったのか…」

 「漆黒の瞳と髪の、美しい巫女だったよ」

 今は門番の姿となっていたツバキも、そのうわさを聞いて、気にならないわけがなかった。

 「胸騒ぎが、してきたぞ。何かを、見つけなければならん気がしてきた。何かを…」

 そこで、ツバキは、ハッとさせられることに。

 「そうだ!アルバイン城の王に見せなければならない物が、あったはずなんだ!何だったかなあ…」

 彼女の父親の目を盗み、道場の門を抜け出して、町を走った。

 「あ…人が、集まっている。密、密。あそこに、秘密がありそうだ」

 そこには、うわさになっている女性の姿があった。

 足が、止まる。

 「あ、きれいな人、発見!寺院につとめる人のような、あの出で立ちなら、たしかに、巫女だな」

 巫女は、城へ伸びる町のアーケードの中にある茶屋先に座って、水を飲んでいるところだった。

 「茶屋で、水を飲むのか?」

 茶屋なんだから、茶を飲んでいれば、良かったのに。

この国では。巫女もそうだが、僧侶系の者は、国から特別な許可をもらって、暮らせている。たとえば、税金が、安くなるなど。  

 不思議だ。

 「茶を、くださいな」

 巫女が言えば、茶屋は、喜んで、極上の茶を出してくれただろう。

 が、水?

 なぜ?

 緑の衣をまとい、白い肌と燃える紅が、見事なまでのコントラストを描かせていた。

 「巫女が、茶屋で、水を飲むとはな…」

 「はい…?」

 「聞こえていたか。ごめんなさい」

 「…?」

 「実は…」

 「何です?」

 「あなたに、占ってもらいたいものが、あるのです」

 「私に、占ってもらいたい物?」

 「はい。見つけなければならない物が、あるのです」

 「それは、何なのですか?」

 「それが、こちらにも、良くわからないのです」

 「はい?」

 「とにかく、店…というのか道場まで、きていただけないでしょうか?」

 「そうですね…」

 あごに手を置き、考えごとをはじめる、巫女。

 「わかりました」

 「良かった…」

 「では、少しだけなら」

 「すぐに、終わりますから」

 「良いでしょう」

 もう、正午は、回っていただろうか?

 店兼道場に、巫女がやってきた。

 「自分は、そこで、門番をやらせていただいております」

 ツバキもドキドキする、美人巫女じゃないか。

 本当は門番ではなかったのだが、そんなことは、言っていられない。

 「では、門番さん?」

 「はい」

 「私には、少しながら、霊力が備わっております」

 「そのようですな」

 「何かのお力になれるとは、思うのですが…」

 「期待しておりますよ!」

 「私は、何をすれば、よろしいのでしょうか?」

 「それは、そうと…巫女さん?」

 「何でしょう?」

 「先ほどから、その扇を使って、何度も扇いでらっしゃいますね。それほどまでに、暑いのですか?」

 「ええ、まあ」

 「素敵な扇、ですね」

 「カルディナといいます」

 「カルディナ…」

 「いたって普通の、扇です」

 さすがは、巫女か。

 ツバキの心を見抜いていたように、言葉を付け加える。

 「私の店は…」

 「門番さん?何も言わなくても、結構でございます」

 「え?」

 「だって、あのときと、同じですもの」

 「?」

 不思議なことを、言うもんだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る