第11話 がんばれ、飲食店!このエッチな友情話は、意外にも、プリンセス・メーカーだったのかもしれない。そういうゲームを知らないと、つらいが。

 飲食店は、強いんだ。

 エッチな友情にひかれていく2人を、ツバキは、横で、そっと見届けるくらいしかできなかった。

 少しばかり、間が開く。

 「お客様?」

 「何だい、マスター?」

 「…巫女は、お好きですか?」

 「ちょっと、マスター?何を、言っているんだい?」

 「巫女、ですよ。巫女」

 「…どうしたんだい、マスター?」

 「いえ、何となく」

 何だ、何だ?

 ちょうど、そのころ…。

 ツバキの入りこんでしまったこの世界のひずみが、はげしくまわっていく…。

 ルシアの防具屋が、はしゃぐ。

 「いらっしゃいませ!」

 「戦士の訓練も、おまかせあれ」

 「良い防具、そろっていますよ」

 「試しに、装備してみますか?」

 飲食店には、負けていられないのだ。

 店のその熱意は、すぐに、バー、レモン・ハートルまで飛んできた。

 テレポーテーションしてきた思いが、彼女の父親にするどい目をさせ、門番となったツバキに襲いかかる。

 「お前も娘も、いい年頃だ」

 おお。

 ドキドキすることを言ってくる父親、だなあ。

 「お前たちに結婚してもらって、この店兼道場を継いでもらえれば、私も、大助かりなんだがなあ」

 「は、はい」

 「お前は、門番で、見習い剣士の身」

 「はい」

 「まだまだ、何かと力の無さはあるかもしれん」

 「…はい」

 「しかしな、人としては悪くないよ」

 「畏れ多いことです」

 「真面目だな」

 「は…」

 「それは、そうなんだが…」

 「はい」

 「お前には、何か、断ち切れない迷いのようなものが、あるだろう」

 「…」

 「お前のことを、もっと見たい」

 「はい」

 「お前が、我が娘を充分に守れるだけの力量をもった男なのか、判断したいと思っている」

 「…」

 「お前は、本当に、娘を守れるのか?」

 「はい」

 「本当だな?」

 「守ってみせます!」

 「よし。もう、店に帰ろうか」

 「そうですね」

 「父親として、あの子を、立派な姫のようにしてみたいもんだ」

 プリンセス・メーカー。

 そういうゲームは、知っていますか?

 次の週。

 このマーティアルの町で、祭りが、はじまった。

 おてんば彼女は、店を他の人にまかせて、外出してしまう。

 祭りに直接参加するわけじゃなかったが、買物が、続いた。

 ついでに、寺院まで、祈りごと。

 「どうか、盾と巫女の正体をさぐる良いチャンスが、おとずれますように…」

 …すると?

 その祈りが、通じたのか?

 アルバイン城で、盾やよろいの品評会が開かれることになった。

 さすがは、護衛に力を入れている町だ。

 城に住むルフト国王が力を入れる防具イベントとなれば、当然、彼女の防具屋が注目を集めた。

 防具こそ、防具屋。

 店や、彼女の護衛を任せられていた門番、いや、ツバキの運命は、どうなる?

 ツバキとなってしまった門番の男は、どうなる?その、元門番のほうは、ちっとも、姿を見せないのだが。

 祭りの日が、近付く。

 「店が城に認めてもらえる、チャンス!」

 積極的な彼女なら、喜ぶばかり。

「私が、店を代表して、アルバイン城までいくから」

 品評会が開かれるのは、3日後。

 「城の王に認めてもらえれば、店側の評判も、上がるよね!」

 まさに、そのころだ

 町では、妙なうわさが飛び交っていた。

 「おい」

 「え?」

 「知っているか?」

 「って、何を?」

 「見知らぬ美人が、歩いていたらしいぞ」

 「どんな人?」

 「巫女っぽい」

 「巫女?」

 町全体が、ゆれた。

 「へえ。これほどきれいな人が、この町にいただろうか?」

 ざわつく、男たち。

 巫女がキーワードにもなっている、不思議で妖しい世界。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る