第5話 飲食店にいくと、何かが変わりそうな気がしてくるから、やばい。どんな店に、いくのかな…?「ククルスドアンの店」ではないらしいけれど?

 「あーん!」

 あの女性の色っぽい声で、我に返る、ツバキ。

 妄想は、一休み。

 横では、親子の真面目な話しあいが、はじまっていた。

 「なあ、ルシア?」

 「え?」

 「防具ということで、店の落とし物なんだろうって、思われたんじゃないのか?」

 「うん。そこは、お父さんの言うとおりだと思う」

 盾は、不気味に、緑色の光を放っていたともいう。

 伝説よ、よみがえれ。

 盾を届けてくれた巫女の正体は、だれにも、わからないまま。

 この状況を、変えたいもんだ。

 「この、ルシアちゃんと、どっちがかわいいのかな?」

 まただ。

 どうして、ツバキは、そういうことを考えてしまうんだ?

 あの女性との、あんなことも思い出してしまう、ツバキ。

 妄想疲れ。

 困ったおじさん、だな。

 「私ね、ツバキさん?」

 「あ、はい」

 「巫女が、店に盾を届けたとき、店には、門番しかいなかったって、聞いたのね」

 「ああ、はい」

 彼女の父親も母親も、家の者は、全員、出かけていたところだったんだそうな。

 「ルシアさん?あの巫女は、緑の衣をまとった、きれいな人でしたよ」

 門番は、それくらいしか、言わず。

 もともと、寡黙な門番。

 本当に知っていることしか、言わなかった男。

 ウソなんて、言おうとも思っていなかったろう。

 それを考えれば、信じられる証言だったということになる。

 そんな門番も、今では、40代の年齢になった。まるで、今の、ツバキのようじゃないか…。

 と、突然!

 ツバキは、頭を、ガツーンとなぐられた気になった。

 ここで、また、ツバキをとりまく時空がおかしなことになる。

 ツバキの記憶が、門番のものと、入れかわってしまったのだ。

 「ルシアさん?」

 「な、何ですか?ツバキさん?」

 「早く!店の地下サンドイッチに、いきましょう」

 彼女は、それを聞いて、驚いた。

 「地下サンドイッチ」

 それは、彼女や父親、そして、門番くらいしか知らない、言葉だったからだ。

 店の地下1階と地下2階の間にある、隠しフロアを指す合い言葉のようなもの。

 ツバキの記憶は、本当に、門番のものと入れかわっていたらしい。

 「あ…!」

 「あったでしょう、ルシアさん?」

 「ど、どうしてあなたは、こんなにも、うちの店のことを知っているの?」

 たしかに、店の地下には、おんぼろの盾があった。

 伝説の盾と同じく、丸盾だ。

 が、光りもしない。

 何の力が、ある?

 「邪魔な物、ですよね。どこにいったのかは、わかりませんが。ルシアさん、どうしましょう?」

 店は、あたふた。

 そこで、店は、魔封じの術をかけられないものかと考えた。

 「霊力ある巫女に、きてもらおうじゃないか」

 盾に込められた魔力をおさえてから、店の地下に、再び戻すことにしたのである。

 「こちらですよね?」

 巫女が、店にやってきた。

 盾の魔力をおさえ、地下にしまう。

 「…本日は、ありがとう…あれ?」

 あれ?

 巫女の姿は、いつの間にか、消えていた。

 「よし、門番君!例の店に、いこうか」

 それに引き換え、元気の良い、ルシアの父親。

 彼女の父親のいう例の店とは、飲食店。良いことがあると、その店にいくのが、習慣になっていた。

 門番とツバキが入れかわっていたことに、気が付いていなかった様子の、父親。

 飲食店が、何かを変える?

 ククルスドアンの店は、どこにある?

 「タツミ、ヤマシタ、スナガ、タカクラ、タナカ、クマダ、オオウチヤマ、ヨシユキ、ワカツキ、シンカイ、オカムラ、イケダ…」

 皆、見つかるのか?






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る