第4話 あの伝説の野球本は、正規と非正規の差を埋めてくれるくらいに、エッチだった(ウソだあ)!気付けば、また、あの女性が現れて。

  先輩とは、正社員との身分差の話で、盛り上がってしまった。

 「星野君の二塁打」

 考えれば考えるほど、犠牲にする側と犠牲にされる側の物語のようにも、受け止められてしまうなあ。

 「うーん…」

 「どうしたんです、先輩?」

 「実はなあ…ツバキ?」

 「はい」

 「俺も、いく世界に困っている者の、1人なんだ。だから、ここにいる」

 「はい?」

 「あの店に入ったら、こうなってしまったんだ」

 「…あの店?」

 「あの、謎の女性と、身体を…。いや、何でもない」

 「先輩も、あの女性と、良いことになったんですか?」

 「ツバキ?」

 「はい」

 「皆、皆、犠牲の世界」

 「…」

 「働くっていうのは、エロいことだ」

 「…」

 「非正規は、打っても勝っても、ほめられない…。犠牲バントでしか、認められないんだよな」

 「…」

 「そうだ、ツバキ?」

 「はい」

 「ククルスドアンの店って、聞いたことがあるか?」

 そのころ、塾講師の仲間たちは、いくつもの罪の世界に堕ちていた。

 それは、それは、不可思議な世界…。

 彼らを探して、1つの世界にまとめることは、できるのか?

 「異世界を旅するっていうのも、難しいもんだなあ」

 頭と心が、震えるんだよな。

 「あ…」

 「また、会えましたね」

 いつかの、身体を重ねてしまった女性が、また、ツバキの目の前に現れた。何なんだ、この世界は…?

 「お客様?静か、ですわね?」

 …え、え?

 謎の女性の声が、あたりに、かわいらしく響きはじめる。

 「これだけ、響くっていうことは…?」

 ここは、どこなんだ?

 「あ!」

 ツバキは、謎の女性と一緒に、風呂場のある施設の中に閉じ込められていたことがわかった。

 「銭湯っていう、感じか?それか、健康ランド?」

 なるほど。

 だから、あんなにも、声が反響していたのか。

 健康ランドというのは、良い表現なんじゃないか?

 「う…」

 ツバキの下半身が、どんどん、健康になっていく気がした。

 「ぴちょ」

 それを最後に、一旦、あたりに反響していた音が消えた。

 シャワーでも、止まったのか?

 大きな風呂場の前で、緊張して、動けなくなっていたツバキ。

 謎の女性が、その風呂場を離れ、ツバキに近寄ってきた。

 「うわ」

 あたり一面、湯でくもっていて良く見えなかったが…。

 女性は、たぶん、はだか。

 その、謎の女性から、声がかけられる。

 「今度は、これに、入りましょう」

 女性は、プラスチック製の大きな大きな透明ボウルを、かかえていた。

 そのとき、はじめて、完全な彼女のはだかを、まじまじと、見てしまった。

 「ひい…」

 なぜだろう?

 うれしいようなことが急におこると、モンスターでも見たかのような声が出てしまう。 

 顔が、赤くなったどころではない。

 ぶっ倒れそうになる、ツバキ。

 「ち、ちがう!」

 「そんな目で、私を見るんですね。エッチですよねえ…」

 「ちがう!」

 「ちがうって、何ですか?」

 「ちがう!俺は、送りバントだけの、犠牲を愛する人生なんて、送りたくないんだ!」

 「…え、どういうことなの?」

 「星野君の二塁打!」

 「…はい?」

 「攻めてやるんだ!」

 「ちょ…」

 「ときには、攻めるのも、あり!」

 「ああん…エッチ!」

 女性は、ケラケラと、笑っていた。

 非正規の犠牲バントは、エロエロでおかしな世界につながることがある。

 この女性って、何者?

 「ククルスドアン」と仲間を見つける旅、「真・2編」に続く。




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真・ククルスドアンの店Ⅰ(エッチな気分になりたい非正規の男たちが、飛ぶ世界) 冒険者たちのぽかぽか酒場 @6935

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