第22話 熱い夜

 翌朝、見届け人達が見ている中で目が覚めた山彦とあやめ山彦は二十歳を幾つか過ぎた当たりで筋骨隆々の姿をしていた。

 あやめは17~8歳くらいの年頃まで若返っていた。

 2人共に朝起きて顔を洗って口をゆすぐと昨日の差し入れの残りを食べ出した。

 どうやら腹が減っているらしい。

 見届け人はそれを見て質問した。


「山彦にあやめよ、記憶などは大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃぞ! 頭が昨日よりも冴えているくらいじゃ!」

「私もです」

「身体に異常が無いのだったら良いのじゃ」

「身体に異常はありましたよ。顔を洗う時に見た私の顔が若返っていました」

「わしもじゃ」

「そういう意味じゃないわい!」

「「わははははは」」


 そうして朝食を楽しむと、見届け人は各家に帰っていって”若返りは本当の事じゃった”と言って家に入り寝たそうだ。

 あやめは又、昨日の夜に汗をかいたそうなので川に洗濯に行った。

 山彦は弓と矢を持って狩りに出かけた。

 

 俺達はと言うと、昨日のこの星特有のナノマシンの分析や解析結果と俺に投与して大丈夫なのかの分析等の結果を聞いていた。

 育成カプセルと輸送船トランスが言うには基本的に打っても大丈夫だが、濃度が濃すぎると副作用として熱が出る可能性があるそうだ。

 熱と言っても高熱じゃ無く微熱になるらしいが、被検体がなく他は不明らしい。

 打ってみなければ分からないのは確かなので、体に副作用が出ないと思われる分量を打って貰った。

 

 育成カプセルは俺がカプセルから外に出たときのことを考えて遠くの森の木を切った後、切り株を引っこ抜いて根っこを取って底面も平らにしておまるを作っていた。

 

 後は山彦とあやめ夫婦のダニやノミにシラミやネズミにシロアリと最終生物兵器のGと蚊対策の薬を作っている。

 山彦とあやめはもちろん、この家全体で駆除した後、長期間寄せ付けなくするので薬剤の量もそれなりになる。

 副作用や人体に毒など出ないように配慮している為、製作が大変だと言っている。

 山彦とあやめにはシャンプーと石鹸状態の薬でノミやダニ、シラミを退治して貰うそうだ。

 汚染されないように自然分解されるとの事だ。

 まぁ、それ以外でも人体に副作用や毒が出ないように作られてはいるらしいが…………。

 

 石鹸とシャンプーが完成した頃にあやめが戻ってきた。

 あやめは庭の物干しに洗濯物を干しに行っている。

 それが終わったら、夕食の用意をしはじめた。

 昨日よりも若返ったせいか、動作が昨日よりもキビキビしている。

 今の内に言っておくか。

 育成カプセルにあやめに石鹸とシャンプーの使い方を教えるように指示を出した。

 あやめはちょうど洗濯物を干し終わった所のようで、育成カプセルが用事があるというとすぐに来た。


「ここにある石鹸とシャンプーなるものを作り出してみた」

「何をする道具なんでしょうか?」

「シャンプーは頭皮と髪の汚れ、それにノミ、ダニ、シラミを取ってくれる。石鹸はシャンプー同様だが此方は体と顔専用だ」

「どうやって使えば良いのでしょうか?」

「このシャンプーだがこの手で押せる部分を1回押すと1回分の適量が出る。髪が長い場合は2回押すのが適量となる。

 後はこすり合わせて泡が出てきたら髪に付けて良く髪をかき混ぜて洗うだけだ。

 石鹸は水に少し塗らせて持ってこすると泡が出て来るのでそれを体に直接塗ってこするか布に当てて泡立てた布を体に押しつけてゴシゴシと洗うかだ。わかったか?」

「頭が茹でそうですが何とか分かったと思います」

「では、今日の夕方の食事前に川の人気の居ない場所で体と髪を旦那共々洗ってこい。少し臭うぞ」

「が~ん! 臭いますか。……そうですか」

「1回で洗ったのに泡が少ないと感じた時は汚れがそれだけ溜まっているという事なので2回目以降に突入し、泡が出るまで洗った方が良い」

「わかりました」

「耳の後ろやあそこなども洗うのだぞ」

「はい」


 分かったのかどうかイマイチ分からないけど、分かったと思っておこう。

 2人が川で髪や体を洗っている時に家の中を消毒するぞ!

 そうして夕ご飯を作った時に山彦が鹿を持って帰ってきて来た。

 残念ながら鹿は明日の夕食になりそうだ。

 あやめと2人で話をして川に体を洗いに行ってくると言い、家を出て行った。

 育成カプセルに命じて作成した殺虫剤? を家の中から撒く事になった。

 一応、食料と食事と水にはバリアで蓋をしてあるから大丈夫だと思うのだけど……。

 20分程で殺虫剤は撒き終わった。

 撒いてみたら色々な虫が家の外に向かって大移動し始めた。

 あれは一種のホラーだった!


 

 川辺の2人はシャンプーと石鹸を使うのに大わらわだ。

 シャンプーは何とか使い方が聞いていたので分かったが、実践してみると手では泡が出るのに髪につけると泡が出なくなる。

 一通り洗って、もう一度洗うと今度は少し泡が出た。

 洗って最後に3度目の髪洗いをすれば泡がもこもこ出てきた。

 成る程、これが言われていた汚れが酷い状態だったのだなと思った。

 石鹸も同様に使うが、手では体が泡立たないので布を使って泡立てて体を洗う。

 だが、これも泡立たない。

 結局、体も3回程洗って泡立ちが良くなった。

 言われていた耳とあそこの洗浄も忘れなかった。

 山彦は忘れそうになっていたが。


 良く洗った布を絞り、その布で体を拭いた。

 拭いた布を水で洗った。

 水気が少し無くなるが未だ服を着るには早いので体を乾かしていた。

 今が夏で良かったと思った。

 冬ならとても無理だ。

 いい加減に乾いたので服を着て家に帰ることにする。

 2人から良い匂いをさせているのでもう臭いとは言われないだろう……たぶん。

 山彦とあやめが帰って来て家が少し変な感じだなと思ったが気にせず中には居ると虫が居ない事に気がついた。

 御技で虫を追い出してくれたのかと思い、忠誠を新たにする2人だった。


 

 2人が晩御飯を食べ終わるのを待って、俺は育成カプセルに今日は外で過ごそうと言った。

 こういう時は外で過ごした方が良いのだ。うん。

 と言う事で2人に育成カプセルは今日は外で過ごすから二人きりになるが用心しろよと言って2人にした。


 その晩、お爺さんであった者とお婆さんであった者は熱い夜を過ごした。

 この後、十月十日後に女の子が生まれ桃子と名付けられるとは思っていなかった。


―――――――――――――――――――――――――――――

次回は時は戻ってタローと分かれた直後の楓の話だよ!

次回の内容は辺境ポリス -楓視点-です。

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