第15話 星の神様と出雲口伝

 昨日豊能町にある妙見山に登って来ました。

 妙見山にはハイキングコースが5つほどありまして、私が一番最初に独りでハイキングに行ったのもこの妙見山です。

 この山の頂上には北極星の神様である「北辰妙見大菩薩」が祀られております。

 今回はハイキングの話ではなく、この妙見信仰というか日本の星の信仰について考えたこと、更に最近読んだ出雲口伝の本からワクワクしたことなどを書かせて頂こうかと思います。

 

 そもそも日本には「木火土金水」以外にも風、雷、岩、勿論太陽と様々な自然に対する崇拝がありそれぞれの神様が祀られていますが、和歌にはあれほど出てくるお月様なのに月の神様は結構少ない気がします。勿論三貴神のひとりである「月読命」がおられますが、何か他の二柱の神「天照大御神」と「須佐之男命」に比べて存在感が薄いですよね。その月よりさらに存在感がない「星」です。

 これだけ情緒的な日本人がどうして月の和歌を詠むのに星を無視するのか、何か不思議な気がします。日本人には星が見えてないのか?いやいや、結構好きですよね、星。

 夜空を見上げればもれなく付いてくる星。昔は今より更に輝いて見えていたはずの満天の星。なのに何故日本の神様には有名な星の神様が居ないのかなと。私が知らないだけかなと調べて見ました。


天津甕星あまつみかぼし」またの名を「天香香背男あめのかがせお

 古事記には登場しませんが、日本書紀の葦原平定の部分に登場する星の神様が居りました。

 経津主神ふつぬしのかみ武甕槌神たけみかづちのかみが葦原中国を平定しようとした際、最期まで不順まつろわぬ悪神として登場するのが「星の神 香香背男」です。日本神話では星の神は「まつろわぬ神」、服従させるべき神様であったようです。

 強く輝く星とされる「金星」であるともいわれる「天津甕星」

 古代の日本ではあまり言の葉にのせることが少ない「星」とは、そういった背景があり歌に詠んだとしても後世に残して貰えなかったのかも知れません。

 外国の神話には星がたくさん関係するものがあるのに日本では極端に少ない気がするのはそのせいでしょうか。

 

 でも七夕ってあるよなぁと思いこちらもちょっとだけ調べてみました。

「織姫と彦星」これは中国から来たものなのかな。織姫がベガ、彦星がアルタイル。これに白鳥座のデネブが加わって夏の大三角形が出来るんですよね。

 ところで日本には昔から棚機たなばたという神事があります。

 穢れを清める行事だそうです。

 まず水辺に小屋を建てその中で神に供える着物を織る女性が選ばれます。その女性が小屋に籠もり織り上げた着物を棚に供え、その年の秋の豊作を祈るという神事だそうで、その時使用した機織り機が棚機たなばたと呼ばれるそうです。恐らくこの神事と中国から伝わったものが合体して七夕行事になったんでしょうね。

 でも日本の棚機、星関係ないやん。やっぱり星の扱いなんか影薄いよなって思いました。


 最近古事記だけじゃなく色んな古史古伝といわれるものを読んだり見たりしているのですが、これがすっごく面白いことがわかりました。お陰で書きかけてた「ひな振り」っていう作品を書くのを止めてしまいましたが……

「出雲口伝」に沿って書かれた「出雲王国とヤマト政権」という大元出版の本を古本で買ったのですが、ちょうど私が書こうとしていた葦原中国平定の話がこの本では全く違う展開になってまして、またそれがめちゃくちゃ面白かったんです。

「こっちの方が断然面白いな!」ってなっちゃって書く気が失せました。いや、ホントに面白かったです。

 出雲口伝ではあの中国から不老不死の妙薬を探しにやって来た「徐福」がエライことになってます。徐福はスサノオでありホアカリでありニギハヤヒでもあるというんです。

 出雲口伝によると、徐福は3回に渡って日本に上陸してるんですが、最初の渡航では出雲族に追い払われ、2回目に日本に行く前にホヒとタケヒナトリ親子を先にスパイとして出雲に潜入させます。前もってこれから日本に行くから宜しくねと伝えさせる目的もありました。ホヒとタケヒナトリが出雲で良い感じに信用を勝ち取った頃、徐福は秦の始皇帝から騙し取った財宝と童男童女を連れて日本にやって来ます。実は徐福はユダヤ人の子孫でその血筋の子供達を連れて来たとも書かれております。

 その時連れて来られた童男童女たちは「海童」と呼ばれ秦国からやって来たので「秦族しんぞく」とも呼ばれ、また機織りの技術も持って来たのでのちに「ハタ族」と呼ばれるようにもなりました。

 この少年少女たちは夜に高い山の頂上に行って星神を拝んだそうです。星の中で一番大切にしたのが「北極星」でその周りをまわる「北斗七星」も彼らの信仰の対象であったそうです。

 出雲の主王と副王の役職名はそれぞれ「大名持おおなもち」と「少名彦すくなひこ」というのですが、後にこの時の大名持であった「ヤチホコ」と少名彦であった「コトシロヌシ」はこの海童たちを先導したタケヒナトリによって洞窟に監禁され枯死してしまいます。 

 海童のひとりが白状したことにより、結局捕まったホヒとタケヒナトリは徐福の命令でやっただけだと言い、徐福は中国へ逃げ帰ります。この時徐福は和名で「ホアカリ」と名乗っていたのですが、ヤチホコの娘の「下照姫」と結婚していました。古事記だと「天若日子」が下照姫と結婚してたんですけどね。

 私が書いていた「ひな振り」はまさにこの辺の話だったわけです。

 主人公が天若日子と建比良鳥と高比売(下照姫)ですからね。

 もう、えらいこっちゃあーですよ。びっくりしすぎて書く気が失せました(笑)

 そんなことは置いといて、海童たちです。

 徐福はとっとと逃げましたが、海童たちは置いてけぼりです。出雲の人には忌み嫌われた事でしょう。星を拝んでいた彼らはその後どうなったのでしょうか……

 出雲口伝にはその先も色々書かれてあるのですが、興味のある方は是非読んでみて下さい。

 竹内文書や宮下文書、そのほかにも色んな口伝や文書が日本には残っていますが、そのほとんどが偽書だと言われています。記紀だけが正当な日本の歴史書だということなのですが、日本書紀なんかは「ある書曰く」的な書き方もしているので各地に残る文献の内容が記紀と違っているからといって偽書であるとは言い切れませんよね。

 記紀は明らかに何かを隠している書き方をしてますし、都合の悪い神様は隠しまくってもいます。色んな文献と照らし合わせてみて初めて記紀が書こうとしている内容が見えて来るのかもしれません。


 日本書紀では悪い神様扱いの「星の神様」

 でも星に対する信仰は日本でも確かにありました。そんなことを考えながらの能勢妙見山ハイキング。なかなかに楽しかったです。

 そんなこんなで「ひな振り」は恐らく削除させて頂きます。

 読んでくれていた方いらっしゃいましたら誠に申し訳ございません。また全く違う形で「葦原中国の平定」を書けたら良いなあと思っております。


 今回全然 BeautifulWorld ちゃうやんけと思われるお話になってしまいましたので、何の脈絡もなく唐突ではありますが今私が思っていることをひとつ。


 ユダヤ教もイスラム教もキリスト教も仏教も神道も。

 結局世界中で古くから信仰されている宗教の根源はひとつなんじゃないかなと。種族も国境も越えて遡れば全てが一つに行き着くのではないでしょうか。人間もそう。みんな混ざり合い繋がって今があるのだから。最近私はそんな風に思うようになりました。

 そしてそれはとても美しい未来への希望に繋がる考えではないかと思うのです。大きな和を成して生きる。そんな世界が来るよう日々祈っております。

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