第11話 五月山ハイキング その3
池田に着いた。駅に行かねばならない。最初は五月山動物園という無料の動物園にウォンバットを見にいこうかなぁ……などと呑気に思っていたのだが、街へ行くということは下るということ、つまりずっと下り坂を進むということなのだと道中でやっと気づいた。
車道を避けて霊園から続く山の道を歩く。
石や丸木が組まれた階段道がひたすら下へ下へと続いている。段差が50〜60センチ以上はあろうかという階段に膝が悲鳴をあげ始めた。一段一段のダメージがハンパない。私のガラスの膝が……
階段横のせま〜い石畳をちょこちょこと降りてみるが、これまた膝へのダメージがーっ!!うぅっ……
泣きべそをかく。坂道は上りより下りがしんどい。ハイキング初心者の私は、またしてもお決まりの罠にお約束のように引っ掛かっていた。
くすんくすんと泣いてみても、子供なら声を掛けて貰えるだろうが、おばはんだと避けられる。しかし面白いほど誰も居ない。休み休み階段と坂道を下り、ようやく民家が見えてきた。目の前には踊り場が4つ程ある100段ほどの石の階段。手すりを持ちながら横歩きで降りる。真っ直ぐ前を向いているより膝への負担がマシかなと思ったのだ。
階段を降りると住宅街だった。
ハイキングコースは分かれ道ごとに標識が立てられている。その点迷子になりにくくてありがたいが、街歩きは方向音痴の私にとっては地獄への入り口だ。毎回毎回何時間も彷徨いフラフラになる。
取り敢えず方向はわかっていた。とにかく下へ下へと降りるのだ。そうすれば駅がある。
途中のバス停などでルートを確認しながら黙々と歩いた。人目があるので半べそもかけない。道はやっぱり下り坂。膝痛い……ここ何処?心の中で泣く。毎度のことに後ろの皆様は「……はぁ……」と盛大にため息をついていたことだろう。
池田市は「インスタントラーメン」と「落語」と「古墳」の街。そしてその昔は「呉服」の街。
中国の呉の国から来た2人の織姫。
『
これ程疲れていなければゆっくり散策したい街なのに……古墳も落語も神社も大好きなのに!あ、もちろんインスタントラーメンも食べるのは好き。
倒れ込む前に阪急池田駅に何とか辿り着けた私は、あらためて池田に来ようと心に誓いながら帰途に着いた。
膝は生まれたての子鹿状態だったが大満足のハイキングだった。さっきまで半泣きやったくせに……という後ろの皆さまの声は聞こえないし聞かない。
無計画って本当に楽しい。やっぱり無謀チャレンジはやめられそうにない私なのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます