第10話 五月山ハイキング その2

 山道は続く。ミーンミンミンみぃ〜ん。蝉の鳴き声が響いていた。

 無心で歩いていると目の前に階段が見える。段数が少ない丸太階段が2メートルほど組まれていた。

 ハイキングコースにはよく、丸太階段や縁を石で作り土を踏み固めたような階段が組まれている。たまに縁が崩れたり、地面から飛び出したりしていて余計に危ないものも見かけるが、斜面を滑らず登るのは初心者には至難の業なので、階段は非常にありがたい。さっそく登ってみると、人ひとり分ほどの狭い踊り場があり、そのまま180度回転してまた短い階段が続いている。さらに登るとまた同じくクルッと向き直って新たな階段。これが延々と続いた。

 もし上まで一直線の階段だったら、見ただけで心折れていたかも知れない。何より足を滑らせたら大惨事だ。

 この『これで終わりかな終わりかな詐欺』的階段は、私のようなタイプには非常に有効なシステムだ。

 先が見たくてついつい上ってしまうし、「疲れた、もうイヤやー」と心折れそうになっても「いや、もしかしたらこの階段が最後かも知れん」と期待してしまう。有能なクネクネ階段のお陰で最後まで登れた。

 

 因みに何回かしか行ったことはないのだが、若い頃に遊び半分で試してみたパチンコで、延々とリーチが続いた際、案の定私は玉を入れ続けて財布の中が空になった。それ以来恐ろしくてパチンコには行っていない。非常にチョロいタイプなのだ。

 

 階段の先には標識が立っていた。池田方面へ進む。というかもう五月山なのかも知れない。この時点で80分以上経ってた。

 そのまま進むと車道に出た。目の前にはゴルフ場。フェンス越しにゴルフ場の青々とした芝生を眺めながら車道の端を歩いた。ポツポツと雨が降ってくる。

 山を出るまで雨が待っていてくれたみたいで、ありがとうございますと空に向かってお礼。右左後ろの皆様にも無事池田に来れたことに対してお礼を言った。キョロキョロと頭を下げている不審人物だが、幸い私以外は誰もいない。車も走っておらず、ゴルフ場の人達は豆粒程に遠い。

 

 車道は怖いなぁ……と不安だったが歩いている間に通った車は片手で数えるほどだった。折りたたみ傘をさしながらアスファルトの上を歩く。20分ほどで霊園が現れた。かなり広大な霊園で敷地内に「日の丸展望台」という螺旋階段を登る展望台が立っていた。

 阿呆と煙は高いとこが好き、と大阪では言われるが私は別に高い所から見る景色に興味がない。山の中で自然を見るのなら楽しいのだが、ビルや街並みを昼間に見渡すのは「へー」ぐらいの感慨しか持てないのだ。でも折角来たし、と螺旋階段をクルクルと上がってみた。そしててっぺんで「へー」と雨に濡れた街並みと遠くの山々をボンヤリ見つめてそそくさ降りた。

 そこからが問題だった。

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