無人販売


 ある新米冒険者は腹を空かせていた。

 何か食べるものは落ちてやしないかと路地裏を彷徨っていると、奥の方に屋台を見つけた。

 人の姿はない。

 そこにはたくさんの肉と、木の板を適当に破ったような看板があり、


 『肉、1ゴールド』


 と、汚い字で書かれていた。

 新米冒険者は辺りを見回し、誰の姿もないことを確認すると、肉を取れるだけ取ってその場を逃げ出した。


 一応、1ゴールドだけは払っておいた。


 肉は美味かった。


 何の肉かは分からなかったが、とにかく美味かった。


 肉をたくさん食べ、元気を取り戻した新米冒険者は、ダンジョンに潜った。


 「グールが出たぞぉ!」


 誰かの声がした。


 グール? いったいどこにいるんだ?


 新米冒険者は慌てて辺りを見回す。


 剣や槍、そして魔法が、新米冒険者の身体目掛けて飛んできた。


 「この辺りにはグールなんて出ないのに…一体どこから迷い込んだんだ?」


 グールの死体を見下ろし、冒険者たちは首を捻った。




 

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