第6話 バァバと母さん②

一緒に暮らしてみたら、バァバには許しがたい事がいくつか有った。


家族7人の食事がてんでバラバラなこと。

そして食後直ぐに片付けない母さんのこと。


マゴは歳が長男と次女は8歳離れていたから生活時間が違うし、父さんは勤務医で仕事熱心だから帰宅が超絶遅い。


食べられる人が食べられる時に食卓につき、母さんは賄いのオバチャンに達していた。


しかも、いつもくたびれてる状態だったから、シンクには調理した道具と洗い物の食器がたまっていた。

食洗機は有るけれど、それを使いこなす段取りができない。なんか何時もアタマの中がとっ散らかってる状態だった。


きっちりした性格のバァバは、自分が頑張って育てた一人娘がこのテイタラクでがっかりし、腹を立てた。


バァバも手伝ってくれるのだけれど、だんだん疲れて、もっと家族に協力してもらうよう指導すべきだと何度も言ってた。


そういえば、母さんは私、白マルの躾も下手だったなぁ。


一緒に暮らすのは、キツイ・・・母さんは子どもたちの学校に行けば「自分の両親と暮らせて幸せね」とママ友に言われたらしいけど、おかげさまでと口で言いながら、本音は違った。


「今になって思う。あの頃の私は家族に『助けて』が言えないし、手伝ってくれる母に、ちゃんと感謝もできなかった」

「『もっと夫に協力してもらいなさい、せめてもう少し早く帰ってもらって、眠る時間を確保しなさい』ってバァバは言うけど、それを言っても無駄なのは分かってた。だから、我慢する事が多かった」


「バァバの言うことは正しかった。正しいのに正さない一人娘は許し難かったんだと思う」


母さんが行きつけの美容室にバァバも行くようになり、バァバが亡くなってから、母さん担当の美容師さんにそう告げると

「あ、あのきちんとしたお姑さんね。ほとんどお話しなかったけれど、とても品の良いお母様だったわね」と言われたらしい。

「いや、実の母、生みの親」と言うと、驚いて何度も聞き直したって。


「もうこれは自虐ネタになってる」そうだ。


それほどに異なるキャラクターの母娘だった。

いや、あえてそう演じていたのかもしれないわね。

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