第7話 バァバと母さん③
ジィジを見送ったバァバは、気が抜けたようになった。たまには旅行がしたいと言ってたのに、母さんが誘っても全く興味を示さない。
ジィジが亡くなって1年後には、買い物に行くといつもお札で払うようになり、お財布は小銭でどんどん重くなっていった。支払い金額が理解できず、結局お釣りをもらう方が問題が少なかったのだ。
バァバはある日、自分の銀行預金からお金がおろせなくなったから一緒に来てと言った。
母さんは、ジィジの通っていた診療内科にバァバを連れて行った。結局、アルツハイマー型の認知症と言うことだった。
バァバはとても不本意で傷ついていたが、それからまもなく失禁が始まり、トイレまでオシッコの水たまりの後始末が大変なのでパンツ型のオムツを付けてもらうようになった。
言葉が目に見えて減って行き、意思疎通も難しくなった。
今のうちに気持ちを聞いておこうと思い、母さんはバァバに尋ねた。
「バァバはジィジをあらゆるお医者さんに連れて行き、栄養に気をつけて、最後まで動けるように運動もさせてあげてたよね。
ほんとに素晴らしいパートナーだったね。
でね、今、バァバは私の手が必要になってるけど、バァバがジィジにしてあげたようにして欲しい?それとも、食べたくなければ食べないし、動きたくなければ運動はしないようにする?バァバがして欲しいのはどっち?
バァバがやってたようにしようか?」
バァバは首を横に振った。
「じゃ、好きなようにしたい?」
バァバはうなづいた。
「そっか、わかった。じゃ、バァバがしたいようにするね」
「白マル。
バァバはきっと辛そうなジィジの傍らで、もう居ても立っても居られなかったんだと思うよ。それに、頑張れば1日でも長く一緒に居られると思ったんだと思う。愛情深くて真面目な人だったからね。
ジィジもそんなバァバの気持ちが分かったたら、最後まで頑張ってた。
私はバァバほど愛情深くないし頑張り屋でもないし根気強くもない。
だから、バァバの言葉に従えた」
と母さんは笑った。
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