第2話 白マルの懐古とつぶやき

しばらく車に揺られて着いた所は

庭に濃いピンクの花がふさふさ咲いているお家だった。


玄関でにっこり迎えてくれたのは、バァバとジィジ。ナナミさんがそう呼んでた。

母さんのパパとママらしかった。


玄関を入ってすぐのリビングルームに私のコーナーが作られて、私は床におろされるとトコトコ歩いてみた。

今まで居たペットショップのケージの中しか知らなかったから、どこまででも行けるような気がした。


かわるがわる皆んなが抱っこしてくれたけど、正直、好きにさせて欲しかった。

でも、ごはんをもらったりオシッコをする場所も作ってもらい、悪い気はしなかったわ。


今の私は、そのリビングに一日中居ます。

ほとんど眠ってるけど、目が覚めると母さんにご飯の催促をします。

私のコーナーは無くなり、この部屋全部が私のコーナー。

そこに父さんと母さんが同居してるって感じ。


母さんは私が食欲旺盛だって喜んでるけど、時々上から眺めて「ウエストのクビレがじぇんじぇん無い」とぬかしよる。

それは「貴女も同じよ」と言いたい。


しかも「これ、何回目のごはんだっけ?」とか私に聞くけど、オヤツの干し肉をカウントに入れれば、もうけっこう頂いてます。


「白マル、ご飯食べたの忘れてるみたい。認知症かな?」って父さんに言うけど「食べ物あげたら記録しておいたら?」って答える父さんは賢い。

むしろ認知症になりかけてるのは母さんのほうだ。

しかし、それを面と向かって言うと、夜のおつまみが一品減るから、そこまで言及しない父さんは賢い。

ちなみに、肝心なことは記録しない母さんです。


あ〜

ジィジもバァバも女の子たちも、いつの間にかこの家から居なくなって、居るのは父さんと母さんだけ。

たまにナナミさんが来るけど、あっという間にいなくなる。


静かでいい、とも言える。


とりあえず、寝ることと食べることさえ

ちゃんとしてもらえれば、いいワン。



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