第24話 とある王宮にて。俺の預かり知らぬ話。

 それから一週間後、ジモト王国の王都ミヤコ。

国王エドモント3世と宮廷魔術師オグノースの間で、こんな出来事があったらしい。

もちろん俺はこの事を知らない。

後で話を聞いただけだ。



 「国王陛下、大変です!」

「どうした、オグノース。何か緊急事態か?」

「いえ、そこまでの重大事ではありませんが、城下でこのようなものがバラ撒かれております。」


魔術師は、1枚のビラを差し出した。

「これはなんだ? ずいぶん薄くて白い。羊の皮ではないな。」

「おそらくこれは紙というものでしょう。はるか東の国にあると聞き及んだ事があります。」

「で、何が書かれているというのだ? なになに、大魔王リュージ展、開催? なんじゃこりゃあ。」

「その紙によりますと、魔王リュージと申す者が、秘蔵している魔剣、魔槍、そのほか門外不出の魔道具を公開展示するそうです。」

「魔王がそんな事をしてもいいのか?」

「その他にも、地竜やエルフ転生竜など、眷族も大公開。」

「その眷族竜とやらも、さぞ迷惑な事であろうな。」

「魔界の食品、カップメン大試食会あり。魔界の青い炎で調理されます。この世のものとは思えないうまさ!」

「そりゃあ、魔界の食品なら、この世の味ではないわな。」

「1日に4回、魔王リュージが自ら魔剣さばきを実演。驚異の切れ味は必見。恐るべし、魔王リュージ!」

「 ············· 。」

「 ············· 。」

 

「オグノース、これ、本当だと思うか?」

「もし本当なら、とんでもない魔王です。人間界で金儲けを考えるなど、

魔王の風上にも置けません。魔王たるもの、もっと真面目に世界征服せねば!」

「オグノースが怒る理由がよくわからんが、我らが召喚した魔王、という訳ではあるまいな。」

「魔王の名前が異なります。それに話の内容からして、おそらくニセモノではないかと。」

「だが、全く無視する訳にもいくまい。一応は確認しておいた方が良くないか?」

「ごもっともです。念のため様子を探らせた方が良いでしょう。では誰を派遣なさいますか?」

「そうだな、一応、万が一のことを考えて、近衛騎士団長のサイラストスを向かわせよう。奴は王国一の剣士、例え相手が魔王であっても遅れはとるまい。」

「陛下も心配性ですな。おそらくはサギ師集団が逃げ出して終了、という結末でしょうに。」

「そうだろうと思うが、例の大魔術師がいまだ行方不明のままだ。奴が極大魔法を使えば、すぐに検知できるのに、その気配がない。ここはわずかな可能性であっても、さぐってみるにしかず、だ。」

「わかりました。それではサイラストス団長に準備をさせます。すぐに出発させましょう。」



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