第17話 降ってきた無理難題。俺はいったい、どうしよう。(その3)

 「リュージ、どうする? 地竜ユンボでドラゴンに対抗できないのか?」

対抗? できる訳がない。ユンボは土木作業が出来るだけだぞ。

ブレスなど喰らったら、一巻の終わりだ。

「無理だな。敵のブレスに勝てるとは思えない。」

ユンボ以前に、俺の方がジ・エンドだろうが。

「そうだな。ユンボは地竜とはいっても小型竜、巨大なエンシャント・ドラゴンには対抗できそうにないな。ならばリュージ、ユンボ以上の、もっと強力な眷族を召喚できないのか? いや、そんな面倒なことをする必要はないな。 魔王リュージが直接、深淵魔法をふるえば済むではないか。強烈な灼熱炎弾ファイアーボムか? それとも天を切り裂く激烈雷撃ヘル・サンダーか? もしかして遊星鏖殺陣メテオストライク?    なんだ、簡単な話ではないか。」


「できるかーっ!!」

俺は肩で息をした。いかん、このままでは ············ 。


「さすがは魔王、冷静だな。確かに魔王の力をふるえば、エンシャント・ドラゴンなど物の数ではないが、同時にソレナリノ鉱山も木っ端微塵。それでは本末転倒、別の手を考えるべきだな。」


こいつのド天然キャラはどうにかならんか?

神に祈ってもダメなら、次は悪魔か?

いや、悪魔も怒ってサジを投げつけそうだ。


 「とにかくリュージ、なんとかドラゴンの退治を考えた方が良いと思うぞ。でないと、失業状態の村人800人をどうやって食わせていくつもりなんだ? それとも見捨てるか?」

「 ········ 確かにこれは難題だな。まあ、見捨てようとは思ってないが、どうするかな。」

「ありがとうございます。感謝いたします。王都で勇者パーティーを雇うよりも、リュージ殿と巡り会えた事の方が心強い。どうか、ドラゴン討伐をお願いします。」

頭目はそう言って、もう一度額を地面にこすり付けた。


ドラゴン退治? 無理に決まってるじゃないか。

確かにティグと頭目は戦力として計算できる。

でも、それだけだ。

俺が何か役にたつとは思えない。

強いて言うなら、荷物を運んだり、食事を準備したりという裏方しかできないぞ。


「頭目、考えてはおくが、すぐには無理だ。戦力が足りない。それよりはトナーリ村の村人を飢えさせない方法をまずは考えよう。」

「それが順当だな。天才美少女騎士たる私でも、さすがにドラゴンには勝てるとは思えんからな。」


こいつ、珍しく、しおらしい事を言うじゃないか。

私にかかれば、ドラゴンなどでもないわ! とか言いそうなんだが。

いや、待てよ。ということは、ドラゴンはそれほど強いという事なのか?

くわばら、くわばら。

これはうかつに安請け合いなどしたら、マジでヤバいやつだ!


さて、どうする?

でも、俺は深刻に悩んではいなかった。

なぜなら、俺には優秀な参謀がついているからだ。

念のために言っておくが、ティグのことでは(ここは強調だ)ない。

もちろんTFのことだ。


「ティグ、頭目。とにかく今日はもう帰って休もう。明日もフツーノ村に来るから、そこで改めて話をしよう。」

「魔王様はここ、フツーノ村に逗留している訳ではないのですか?」

「いや、俺はここの近くの黒川邸 ········ いや、魔王城から来たんだ。たまたま近くの村がフツーノ村だったというだけだ。」

「なんと、魔王城がこの近くに出現したのですか! となると魔王様、城内にはどれほどのモンスターや魔物が棲息しているんですか? まさかドラゴンが群れている、とか言わないでしょうね。」


アホかっ! そんなもんいるかーっ!

俺は心の中で叫んだが、なんとか押しとどめた。

魔物城って、モンスターが群れているものなのか?

だったら一匹もいない黒川邸は、めちゃくちゃ貧相な魔王城になるな。

リゾート用の魔王城別邸? いや、犬小屋の方が近いか。


「いや、魔王城にいるのは俺一人だ。モンスターなどいない。」

「それを聞いて安心しました。鉱山を占拠したドラゴンが、魔王城を逃げ出したペットだったら目もあてられません。いや、そっちの方がいいか。それなら魔王様がペット回収に来るでしょうからね。」


おいおい、魔王ってドラゴンをペットにしているのか?

初耳だぞ。

だったら鉱山にいるのは本家魔王の逃亡ペット? 

それとも野良ドラゴン?


「そういえばリュージ、おまえが住んでいる魔王城には、当然、魔道具所蔵室があるだろう。一度見せてくれないだろうか。他にも拷問室や処刑室、牢獄なんかもあるだろう。ぜひ見せてくれ。」


おいおい、魔王って城内で何をしてるんだ?

そんな趣味だと思われてるのか?

それにしてもこいつ、目をキラキラさせてきいてくるな。

もしかしてこいつ、ヤバい奴なのか?

「わかった、考えておく。そのうちな。」

「ありがたい。忘れるなよ。きっとだぞ!」


期待していらっしゃるようだが、残念ながら応えられそうにないな。

御希望は拷問室か?


「それではティグ、頭目。今日のところはじいちゃん家、いや、魔王城に帰って休む事にする。長い一日だったな。御苦労様。」



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