悪の集う橋

アカニシンノカイ

悪の集う橋

 さいたまスーパーアリーナのところに線路をまたぐ橋がかかっています

 この陸橋、ある方面のかたがたには有名なようで。


 そう、出るんです。

 怪物が。



 ある夏の日のこと。その年はまぁ暑い年で、ビールがよく売れたそうです。

 大宮にある某会社の納涼会が終わり、Qさんは同僚と一緒に電車に乗り込みます。

 列車がさいたま新都心駅に近づいたとき、Qさんは同僚の妙な様子に気付きます。


「どうした、窓の外見上げて」

「あ、いるないるな、とは思ったんですけど、やっぱりいたな、って」

「いる? なにが?」

 ここで同僚は声をひそめます。

「俺、見えるんだよ」

「見える?」

「うん、この世のものじゃないやつが見えるんだ」

「それって、霊ってことか?」

 質問に答えず、同僚は黙ってしまいます。

 重い空気のまま、さいたま新都心駅に着くと「じゃ」と同僚は電車を降りてしまいます。彼の最寄り駅はまだ先です。

 慌ててQさんもホームに降ります。

「なんで降りるんだよ」

「ちょっとこの目で確かめたかったんだよ。でも、やめとくわ。やっぱ、やばい気がするし」

 幽霊が見えるなどとからかって、一人で帰りながら不安にさせるのが目的だったと考えたQさんは意地悪く報復を試みます。

「いや、行こうぜ。せっかく降りたんだ。まだ時間もあるしよ。どこにいたんだよ、お化けは」

「スーパーアリーナのとこに陸橋があるだろ。あそこだよ」

「じゃ五分も歩けば着く。行こうぜ」

 Qさんは歩き出します。

 問題の橋が近づき、Qさんは息をのみます。

「見えたみたいだな、お前にも」

 橋の上には、揃いの黒装束の仮面の人々がずらっと並んでいたのです。

「なんなんだ、こいつら」

「お前も昔、見てただろ。特撮ヒーロードラマ。俺らの世代だと旅行戦隊ワールドトラベラーとか物理戦隊シュレディンガーとか」

「特撮ってあれか。正義の味方の五人組が半年間だけ世界制服をもくろむ悪の組織と闘うってやつ」

 同僚は大きくうなづきます。

「わんさかいる黒いマスクの連中は極悪同盟ダンパーの戦闘員だ。向こうにいるのは電脳魔団の総統、ポケベル伯爵だし、あっちにいるのは売上上げるんだゾウと除草ザイだ」

「幽霊じゃなくて、昔放送されていたテレビのキャラクターがなぜ?」

「この橋は戦隊ものの撮影でよくロケ地になるんだ。ここで闘って命を落とした悪の組織の戦闘員は数知れない。だからかな」

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