第9話 極楽亭でのひととき

リンダリアはダイダロスと共に北川の経営する居酒屋『極楽亭』に来ていた



「そう言えばキタさんの居た世界では鉄の塊が人を乗せて走ったり飛んだりするって言ってたわね?」



「ええっ?!何それ」



「まぁ驚かれるのも仕方ありませんよ。私の居た世界では科学や医学が発展してましたから…」



「簡単に言うと鉄や合金で出来た板を貼り合わせて外壁を作り、動力源となる機械を取り付けて人が乗れるようにした乗り物ですね…」



「ええ〜想像つかないわ…どうやって動かすの?」



「動かすのは人ですね…専門の知識を覚えた人が操作するんですよ。マニュアルと言って操作方法があってそれを用いて動かすんですよ」



「マジか…凄い世界だな。どれくらいの人数を運べるんだ?」



「ざっと2、300人って所でしょうかね?大きさにもよりますけど…」



「ドラゴンに乗るより効率的なのね…」



「こっちの世界には船はあるのですか?」



「船はあるわよ。」



「戦艦は?」



「戦艦って何?」



「戦いに使われる専用の船ですよ」



「そんなモノまであるの?人を運ぶ以外のモノはこっちには無いわね」



「なるほど…魔法がある世界だから機械を使っての戦争は無いと言うわけなのですね?」



「キタの世界って意外と物騒なのね」



「そうですね…常に何処かで戦争がある世界ですから…アメリカなんかは銃の所持を許可されますからね…それによって事件や事故も多いのは否めないのですが…」



「サラッと言ったけど銃?」



「ああ…鉄の弾、銃弾を発射して人などを殺傷する事が出来る武器ですよ」



「私の世界では剣や槍は装飾品で大昔は戦闘の武器として使用されてた時代もありましたが、今では武器としての使用は禁止されてます」



「でも存在はしてるんだ?」



「ええ…演舞や神への奉納行事に用いるだけで刃が入って無いモノを用いますけどね」



「不思議な世界だな…武器の使用は制限されてるのに戦争はしてるなんて」



「ですよね…まぁ私の国は戦争に関与してはならないので直に見る事は無いですけど、今だに紛争の被害者が居るのが現実なのです」



リンダリアとダイダロスは北川の話を熱心に聞いていた



「今日は珍しいモノを作ったのでお代は要らないので試食してもらませんか?」



「何コレ?」



見た目はオレンジ色で小さな小鉢に入れられたモノだった



「ホヤの塩辛ですよ。何とか神様にお願いして食材を使ってもらいましたが分かりづらいモノなので時間がかかりました」



恐る恐る口に運ぶと磯の香りが口いっぱいに広がり適度な塩味が酒に合った



「初めての食感だけどけっこうイケるわね〜お酒のおかわり頂戴♡」



「うん!なかなか…こりゃ酒が進むな〜」



リンダリアとダイダロスはご満悦の様子ですっかり酔っ払っていた



「おやおや…大丈夫ですか?一升瓶が空になるまでお飲みになるなんて…」



しばらくしてニルヴァーナが呆れた様子で迎えに来た



「ごめんね北川〜すっかりお世話になったみたいで…お代はここに置くわね」



「ありがとうございました。おやこれでは少し多いですよ?」



「貰っといてよ!いつもお世話になってるんだらか」



「では遠慮なく…またのお越しをお待ちしております」

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