第四七話 重力操作の魔眼②
魔眼を晒したプピロットは俺達を注視しながら前に出る。
「――来る!」
目視はできないが得体の知れない力をプピロットの眼から感じとり、迫り来る不可視の力を『因果律無効の魔眼』で跳ね除けた。
「っ!」
一方、セラは体勢を崩し、両足が橋にめり込んだので踏ん張っていた。あまりにも一瞬のことだったので彼女に迫り来る力までカバーはできなかった。
「『フィジカルアップ・フィフス』」
セラは身体能力を向上させる魔法を唱え、めり込んだ場所から抜け出す。
「無事か?」
「どうでしょうか……体が鈍い感じしますわ」
セラの様子を確認すると、彼女は両拳を何度か握りしめて体の調子を確かめていた。
「『フィジカルアップ・サード』を唱えた状態に近い……身体能力が二分の一以下になっている気がしますわ」
「タチの悪い魔眼だな」
「それはファル様も一緒かと」
「……確かに」
俺とセラは会話を切り上げ、前方にいるプピロットに敵意を向ける。
「ど、どうであるか! 奴ら平気で動いているようにみえるが!」
プピロットの横にいる枢機卿ジャスティン・バーバーは俺達に魔眼が効いたか尋ねていた。
「駄目だあ、ファルとかいうやつには無効化された」
「な、なんだと⁉」
プピロットは頭を掻き、のほほんとしていた。対照的にジャスティンは焦る。
「でも王女には効いたかなあ。自分が魔力を消費している限り、魔眼の力は永続的に続くよ。それに自分にはあの魔法があるからなあ」
「そ、それもそうであるな! よしよし……」
ジャスティンはプピロットの言葉で安心していた。
話を聞く限り、プピロットの魔眼は俺の特殊な魔眼と違って魔力を消費しなければならないタイプだ。いわゆる、一般的な魔眼だ。
ただ、プピロットが魔眼に魔力を吸わせている間はセラはずっと身体能力が低下したままだろう。
「セラ、プピロットは俺が相手する。ジャスティンと神官達は頼む」
「また雑兵退治ですわ」
不満そうなセラ。
「ジャスティンは大物だろ、それに相性的に俺がプピロットをやった方がいい」
「ではファル様、ご武運を」
「ああ」
セラは足を一歩前に踏み出し、
「『フィジカルアップ・テンス』」
と、魔法を唱える。彼女の体から煌めく白色のオーラが噴出した。
身体能力が二分の一以下になっていると言っていたから今の状態は『フィジカルアップ・フィフス』に近い状態だろう。それでもナナとレイズの攻撃を捌ける強さを誇っているので神官達相手なら問題ないだろう。
問題はジャスティンだが――
「ひぃぃ! 貴様らあとは任せたぞ!」
ジャスティンは怯えながら人混みの中に逃げる。何故ならセラが跳躍して迫って来たからだ。
セラはあっという間にピプロットの横を通り過ぎ神官達を殴り倒し始めた。
殴打音がボコスカと聞こえる中、俺とプピロットは対峙する。
プピロットの手元には目立った得物はない。
「徒手空拳で戦うつもりか?」
「うーん、どうだろ……なんて言ったらいいか分からないなあ」
俺の質問に対して、歯切れの悪いプピロット。
「まあ見ててよ……『ポイズン・モード』」
プピロットが魔法を唱えると、奴の体は紫色になり指先からは紫色の液体が滴る。
「おいおい、随分と具合悪そうな肌色だな。老婆心ながら病院お勧めするぜ」
俺は相手を茶化しながら、プピロットの体を隅々まで確認する。
見るからに毒々しい……『毒属性魔法』ってやつか。
プピロットの指から滴る液体が橋の上に落ちるとジュウという音を立てて橋を溶かす。
あの液体、溶解性まであるのか。
「厄介すぎるな」
「お互い様だよ。自分、魔眼の力が効かない相手と戦ったことがないんだよなあ」
俺の呟きにプピロットは反応していた。
いきなり、『毒属性魔法』を見せられて面食らったし、こいつの戦い方が読めない。情報が無い。だか、何がどうあれ、目の前の敵を叩き潰すことには変わりない。
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