第3話 ループ
あの後、少女に従った私は、随分廃れて、屋根が半壊しているバスの停留所の様な所に連れられ、2人で椅子に座っていた。それにしても、何故森の中にこんな物が…?
「あの…すいません、貴方の名前は…?
それと、ここって一体何処なんですか…?」
そう聞くと、少女は少し困った様な、なんだか複雑な表情をしていた。数秒経ち、溜息をついてから少女は答えた。
「ごめんね、もう名前は覚えていないんだ。
それと、この場所が何処かも分からない。
まあ、日本の何処かの風景なんじゃないかな。」
そこから1拍置いて、また少女が口を開く。
「分かっているのは、
私が既に“死んでいる”事だけだね。」
「…え?何を言って…」
「信じられないと思う、
でもこれは本当なんだよね。」
本当に、本当に目の前の少女が
何を言っているのか分からない。
だって、この子は私に見えているし、確かにここに存在しているはずだ。
「刺されちゃったんだよね、
自分より小さい子に、ナイフで何回も何回も。
私、それなりに強かったから
油断してたのかもね。」
「…でも、貴方は私に見えているし、確かにここに存在してるじゃないですか…?そんな状態で“死んでる”って、なんだかおかしくないですか?」
「うん、それは多分…」
「ここが冥界的な場所だからなんじゃないかな。
まあ、確証は無いけどね。」
そう言い終わった直後、
少女はハッと思い出した様に声を上げる。
「でもね、私ほんの少し飛べるんだよ。
これが何よりの証拠なのかもね。」
そう言うと少女は椅子から立ち上がり、ジャンプして見せた。
「…変わってなくないですか?」
「ほら、下。」
そう言われ下を向くと、
少女は確かに飛んでいた。
……数センチだけ…
「ほらね、私は死んでいるんだよ。
ここは冥界的な場所なの、うん、多分。」
ここまで淡々と解説されると、そうなんだ…と逆に冷静になる。ただ、そうなった事で最悪な可能性に気付いてしまう。
「じゃあ私って…もしかして…もう…?」
「いや、それは違うね。」
即座にそう返される。
「君は…いや、毎回こう呼ぶのも味気ないね。
取り敢えず、名前を教えて欲しいかな。」
そんな場合なのか?と疑問に思いつつも、
「モチヅキです…」
と最早使うのが当たり前になった偽名で返答する。
「モチヅキ、君は生きてる、けど死んでるんだ。
いや、正確には“死んだ事がある”だね。」
突然そう告げられても、さっぱり理解出来ない。
「それって、どういう意味なんですか…?」
反射的に説明を求めると、
予想外の答えが返ってきた。
「さっきも言った通り、君はこの世界で1度死んだ事がある。そして、今存在している君は、1度死ぬ前に、つまり過去に戻ってきている。」
「まとめると、君はこの世界をループしている。
いや……
ループさせているみたいだね。」
ご飯の時間と被っちゃったのでいつもより短めかもです。ここまで読んでくれる人が居るかは分かりませんが、取り敢えず許して欲しいです。
【仮名】貴方が此処へ来ないように、貴方が私を見ないように @Ayameee
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