わんわんパークに鬼発生

 おれと比渡は鬼の臭いをたどっていた。


「比渡、武器無くて戦えるのか?」


「戦えないわ」


 ええ、じゃあどうするの? おれ鬼を殺したことなんてないよ? 首も斬れなければ核も壊せないよ。


「だからあなたが鬼を殺すの」


「そんなこと言われても、首は斬れないから無理として、核を破壊するって拳だけでなんとかなるのか?」


「あなたは超人型よ、力の使い方が分かれば首を刎ねるのも核を破壊するのも簡単にできるわ」


 その力の使い方を知らないのだけど、どうすれば良いのでしょうか。


「いたわ! 鬼よ!」


 比渡が指さす方には、鬼の手に捕まる女性と男性がいた。


「はははは、青春エネルギーうまぁ。お前らも鬼になれば青春エネルギーの美味さが分かるぞ? どうだ? 鬼へとなるのは……ひへへへ」


「いやぁ! 誰か助けて!」


 と、女性の方は助けを呼ぼうと声をあげる。男の方はすでに気絶しているらしい。


「おい! 鬼野郎!」


「あ?」


 おれは鬼を蹴り飛ばした。すかさず捕まっていた二人をキャッチするのも忘れずに。


「貴様! 鬼狩りか!」


「いいや、おれは犬だ」


 わんわんパークにまで現れやがって! わんちゃんたちが怖がって逃げちまうだろうが。この鬼には少しお仕置きが必要だな。


「日野君、さっさとその鬼を殺しなさい! また鬼が来るわ!」


 なんだと? ってそうだよな、そこら中に鬼の臭いだらけだもんな。悪いけどお仕置きは後にしてやる。


 と、おれは鬼の顔面を殴り飛ばし、鬼を気絶させた。どうやら鬼も気絶するようだ。天災だかなんだか知らんけど、鬼も人間と同じだな。


「何をしているの! 核を狙いなさい!」


 核、核しかじか。と、おれは気絶している鬼の左胸を攻撃したが……鬼は消滅してくれなかった。


 ん? どうなってんだ? おれには鬼を殺すだけの攻撃力がないってことか? どうすればいい?


「鬼を殺す時は青春エネルギーとは真逆の玄冬エネルギーを込めなければならないの」


 え、そんなの聞いてないよ。てかげんとうエネルギーって何? おれのボッチエネルギーだけじゃダメなの? ボッチって青春エネルギーと逆だよね? それじゃダメなの?


「ああ、鬼狩りクセェなぁ」「ああ、犬クセェよ」


 と、新たに鬼が二匹現れてしまった。


「バカ犬、あなたがのそのそとしてるからよ。このバカ犬」


 バカ犬バカ犬って、動物虐待だよ? おれを虐待していいのは比渡ヒトリだけだ――つまりいいってことか。もっと罵ってくださいご主人様!


「あなた、鬼を殺したいほど憎くないの……」


 憎い……そこまで憎く思ったことはないな。ムカつくけど、殺したいほど憎いわけじゃない。


「つまり、殺したい気持ちで殴れば殺せるってことだろ」


 と、おれは他の二体の鬼に突っ込んでいった。


「待ちなさい! バカ!」


 バカでも犬は付けてほしいところだ。


 おれは二匹の鬼を殴り飛ばした……と思ったら一体の鬼に腕を掴まれ、そのままおれは地面に叩きつけられてしまった。


 痛っ、たくねぇな! こんな攻撃じゃおれに傷ひとつ付けられねぇぜ!


 おれはお返しとばかりに鬼を地面に叩きつけた。


「ぐあっ!」


「ひっ、ひえええぇぇ!」


 まずい! 鬼が一匹逃げた!


「あ! いたいた! おーい!」


「おにい! ヒトリ先輩と何やって、って……え! なにこの化け物!」


 そこに暗子とおれの妹が現れた。


 どうしてこんな時にこんな漫画みたいな状況が生まれるんだよ。


「ひひひひっ、こいつらは鬼狩りじゃないな!」


 と、逃げた鬼は暗子とおれの妹を人質にとった。


 やべぇ、この状況はまずい。

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