鬼退治へ
放課後、比渡に言われた通りおれは校門で待っていた。
これってやっぱりデートの誘いだよな? 男女が校門で待ち合わせするなんてそれしかないよな?
でも校門で待ち合わせって目立つな。影の薄いおれでも比渡と話をしているところ見られたら学校中で噂になるぞ。それでおれは怖い先輩方に呼び出しをくらうんだ。
うん、ボコボコにされる未来しかない。
やだなぁ、怖いなぁ、帰りたいなぁ。帰ったら妹の頭をなでなでするんだ。
「早いのね」
と、おれがいろいろと思考している間に比渡が来た。
何やら竹刀袋のような物を持っているではないか。
「比渡って剣道部なのか?」
「違うわ」
え、違うの? じゃあどうして竹刀袋を背負っているのでしょうか?
「まあ何でもいいけど、さっさと帰ろうぜ」
ここにいると目立つし、周りの視線が痛い。これはあれだな、嫉妬の視線だな。明日のおれ大丈夫かな? 殺されたりしないかな?
「帰りはしないわ」
「え?」
帰らないの? じゃあやっぱりこれからデートってパターンか。おれにも春が来たんだな。こんな性格悪い女の子だけど付き合ってやってもいいか。おれ顔面至上主義者だし。
「帰らないんだったらどこに行くんだよ……」
おれは訊いた。いやいや、高校生でホテルに入るのはあれだよ? 制服だしさ、なんか言われるかもしれないしさ。そういうのはもうちょっと大人になってからだとおれは思うんだよね。
と、おれが妄想していると、
「学校よ」
「学校? どこの?」
「私立豚小屋学園よ」
うわぁ、不良しかいねぇところじゃねぇか。どうして他校に行くんだ? てかおれら学校違うのに入っていいのか? まあいいか、私立豚小屋学園なら先生方も緩いだろうし。
「何しに行くんだ? てか襲われたらあぶねぇだろ」
「あなたが守ってくれるでしょ。わたしの護衛なんだから」
「犬は犬でも使えない犬だぞ、特におれは」
雑魚の中の雑魚なおれは喧嘩なんて出来ないぞ。というか喧嘩を回避するために真っ先に土下座して相手の靴をぺろぺろ舐めるぞ。ご褒美ご褒美、しかし相手は女性に限る。
「そんなこといいからさっさと行きましょう」
「待て待て、まだ質問に答えていないぞ――その学校に何か目的があって行くのか?」
目的も教えないで行くんじゃ無駄だ。おれだって暇じゃない、家に帰ったら妹の頭をなでなでしなければならないからな。
「もちろん」
「その目的とは……」
「――鬼退治よ」
「鬼退治……」
日野陽助、高校二年生の春、この物語がただの青春ラブコメだと思っていたおれは、比渡ヒトリの犬になったことで青春が狂わされていくことになる。
日常は青春ラブコメ、非日常は何なのか……。
舞台の幕はこうして上がった。
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