豚学

 私立豚小屋学園。通称、豚学。


 おれと比渡ヒトリはその豚学に来ていた。


「あぁん? なんだテメェら?」


「ここの学生じゃねぇな? 何の用だあぁん?」


 おれたちは豚学の生徒にさっそく絡まれた。てか生徒なのか? 見た目がもう成人式でパラリラやってるヒトにしか見えないんだけど。


「邪魔よ。どきなさい」


 ええ、こんなヤバい連中にそんな口利いたらボコボコにされるよ? こんな奴ら相手だと犬のおれでも比渡のこと守る肉盾にもならないよ。


「あぁん? コラ! 誰にそんな口利いてんだ?」


「おれたちは豚学の特攻隊だぞ! 舐めてんのか? あぁん?」


「名無しのモブなんて知らないわよ。邪魔だからどけって言ってるのが聞こえないのかしら?」


 そんなに挑発しないであげてよ比渡さん! おれまだ死にたくないよ。お前に頭をなでなでしてもらうまでは死ねないよ? 良いの? おれの頭をなでなでしないで殺されても。比渡もおれの頭なでなでしたいでしょ? それができなくなるよ?


「このアマ!」


 と、モブAとBは比渡に掴みかかろうとしたが、


「邪魔だって言ってるのよ」


 比渡は軽やかにモブたちを避けた。ついでに足かけをしてモブたちを地面にこけさせた。


「雑魚に用はないわ」


 と比渡は、モブ共に蹴りを入れて気絶させてしまった。


 え、比渡ってこんなに強かったの? やべぇ、比渡のこと本気で好きになりそう。


「駄犬! こんな雑魚はあなたが片付けないでどうするの?」


「え、いや、だって怖いし。てかおれ戦えないし」


「言い訳しないで。戦えないなら非日常なんて言葉口にしないで」


 飼い主に叱られたおれはクゥーンとなってしまった。


 いやいや、非日常って言ったらさ、もっとこう日常を否定する感じで魔法が使えたりするやつじゃん? これ日常に喧嘩が混ざっただけでしょ。嫌だよ喧嘩は。


「これから相手にするのはこんな雑魚じゃないのよ」


 そういえば鬼退治って言ってたっけ? 鬼って鬼ほど強い人間って意味だったのか。豚学の鬼って誰だ?


「あの、どうして比渡は喧嘩なんてするんだ?」


「喧嘩? わたしがしているのは鬼退治よ」


「いや、相手が鬼じゃないし、ただの殴り込みだろ。後々報復されても仕方ない行為だぞ」


「はぁ」と比渡は大きくため息をついてから「ここの生徒を見なさい」


 おれは先ほど比渡が倒した生徒を見た。ただの不良にしか見えない。


「生徒がどうした?」


「まだ分からないの? ここの生徒を見て青春なんて言葉があると思う?」


 無いな。喧嘩上等って言葉しか見当たらないな。


「青春がどうした?」


「はぁ、もういいわ。あなたのような駄犬に説明するより見てもらった方が早いわ」


 と、比渡は校舎内に入っていった。


 ワンワン! (待って比渡! おれを独りにしないで)


 おれたちは校舎内を進んだ。比渡の言う通り青春という文字すら無い校舎内は酷いありさまだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る