第44話


 怒涛の編入も終わって二日が経過し、週末となった。

 

 今日明日と休息日ということもあって、学園の寮から離れて二日間は皇城で過ごす。


 馬車から降りたオレは思わず城を見上げていた。

 

 たった二日学園に通っただけだったが、随分と久しぶりな気がする。

 

 一ヶ月ほど住んだだけだが、もう家のような感覚になっていた。

 

 慣れとは恐ろしいものだ。

 

 雨漏れのするコンクリブロックの中で生活していたというのに、こんなに立派な城に懐かしさを覚えてしまう。

 

 学園で力を隠すという目標は初日で失敗したが、ロベルトやアリシア達は特に怒った様子もなく、まぁそうだよねーくらいなノリだった。


 当の本人としては案外気楽なものだが、他の人間達はそう思っていないようだった。


 城につくなり使用人の連中がコソコソとオレの方を見て話している。

 早速問題を起こしたオレの噂話でも始めたのだろう。


 今一番皇城でホットな男になってしまったようだ。やれやれ有名人は辛いな。


 アリシア達と別れたオレは自室に向かって廊下を歩く。

 先ほどからメイドを中心に、コソコソと話をしており、「あの人たちが退職したのも……」などという言葉も聴こえてきた。

 

 使用人を三人退職に追い込んだことも広まっているようだ。

 だが、直接言ってくる人間もいないのでスルーして自室前に辿り着いた。


 そのまま扉を開けて自室に侵入する。


 まず目に入ったのは白い肌だった。

 正確には白い肌を晒して下着姿になっているヨルとかいう知り合いにそっくりな女が視界の真ん中にある。


「いやーん」


 というかヨルだった。


 感情を全くこめず、色気のない悲鳴をあげている。


「人の自室で何してんだオマエ」


 間違いなくここはオレの部屋なのだが、ヨルは下着姿で棒読みの悲鳴をあげて胸を隠している。

 情報量が多過ぎてツッコめない。


「サービスしようかと思って。編入祝い」


「オマエのちみっこい身体が褒美になるかよ。仕事しろサボりメイド」


「失敬な。全世界が拳を握る美少女のヨルちゃんの下着姿を見て興奮しないなんてリドは不能か?」


「別の意味で拳握りそうだわ」


 いまだに表情さえ作れば悩ましく見えるポーズを決めるヨルの横を通り過ぎてソファーに座る。

 どうやらオレが帰ってきたのは知っていたらしく、テーブルの上にはまだ暖かい紅茶のポットが用意されていあ。

 こういうところは気がきくな。


「それでそれで? どう? 学校。楽しい? 良いことあった?」


 いそいそとメイド服を着用したヨルはオレの横に座って聞いてくる。

 たった二日とはいえ、話すことには困らないが、正直どう話したものかわからない。

 とりあえず時間だけはあるので、一から説明することにした。


「実はな……」


「――ふむふむ。なるほどそんなことが」


「いやまだ話してねぇよ」


 実はな……と言っただけで食い気味で頷いたヨルに突っ込む。

 どうやらスキップ機能を使おうとしたようだが、この世界にそんなシステムはない。

 

 油断したらすぐにボケをかましてくるので若干疲れる。


「え? なんかそんな感じで全てを理解するのはお約束じゃないの?」


「そんなシステムはない」


「冗談です。同僚のエッちゃんから聞きました。リドが他国と戦争するって。どんな喧嘩売ったか?」


 呆れた様子で眉間を抑えるヨルを横目に紅茶を啜る。

 どんな喧嘩も何も、普通にしてたら喧嘩をふっかけてくるやつが多かっただけで、何かをした覚えはない。


「まぁともかく、オレは今一緒に戦ってくれる奴を募集してる。知り合いに喧嘩強い奴いないか?」


 戦力は意外な所に転がっているかもしれない。

 

 正直一人の方が気楽だが、エマが参加すると言った以上、何人か集めた方が危険は少ないだろう。


 もしかしたら、ヨルの知り合いに世紀末覇者のような人間がいるかもしれない。

 

 全く期待はしていないが。


「地上最強の生物なら知ってる。小指で逆立ちして腕立て伏せしたり、オーガって呼ばれてる人」


「ほう? なんか凄そうな奴だな。誰だ?」


 オレの質問にヨルは指を自分に向けて、にへらと笑う。


「わたしわたし」


「髪の毛真っ赤に染めて、ワックスで逆立ててから出直してこい」


「飽くまで喰らえッ!」


「何をだよ」


「この前も地震をグーパンチで止めた。リドの肩を叩いたら多分爆発する」


 力こぶを作ってムキっとしている……つもりだが全く筋肉は見当たらなかった。

 日々メイド業務に励んでいるはずなのに、全くと言っていいほど筋力がないのは逆にすごい。


「リドは気がついてなかったけど、実は今のは嘘」


「一言目で気がついたけどな」


 自分の二の腕をぷにぷにとしたヨルは、素直に腕っ節がないことを認めた。


「か弱いヒロインなので。メインヒロインとしては力が弱いほうがいいってメイド長が貸してくれた本に書いてあった」


「どう考えても色物枠のサブヒロインだろ」


 オレの一言に「ムキーー!!」と言いながら肩を叩いてくるヨル。

 全くダメージを感じなかった。


 一通り怒り散らしてからオレの横に座って紅茶を啜ったヨルは、一息ついてから申し訳なさそうに目を伏せる。

 

「私も力になってあげたいけど、当日は治癒隊のお手伝いで忙しい。自分で探して」


 どうやらエルセレム帝国側から、騎士団戦での怪我人を治療する医療班が出るらしい。

 当日ヨルはそこに配属となっていた。

 流石に強引に引き摺り出すことは出来ないようだ。


 ……いや、引き摺り出しても多分使い道はないが。


「チッ、ヨルなんかに少しでも期待したオレがバカだったよ。所詮乳臭い子供か」


「ふっふっふ。とうとう気がついたか。私があまり強くないことに」


「出会って2秒でわかってるわ。仕事に戻れ。カーラにチクるぞ」


「くっ……そんな姑息なことを言うようになるとは……流石学校に入るだけはありますね。頭いい」


「当たり前だ。なんならこのまま、オレの話術でヨルを朝まで楽しませ続ければ……明日からオマエの立場はなくなるぜ?」


「ひ、ひきょうものー! ちくしょー! そんな手にひっかかってなるものかーー! また来ます」


 小芝居をしながらヨルは外に出ていった。

 相変わらず頭のおかしい奴だ。


 だが久しぶりに日常に戻ってきたような気分になり、少しばかり張り詰めていた気が散っていった。


 自室の机の上にカーラが置いていったものだと思われる新しい本があったので、それを読みながら時間を潰すことに決める。


 まだ友人と呼べる人間は出来ていないが、どうやって騎士団戦を乗り越えようか。

 そんなことを考えながら読書を始めた。



 ○  ●  ○


 同日同刻。


 アミリット王国騎士団詰め所。

 

 普段は騎士たちの熱気で賑わっている場所だが、今日は息を潜めるように静まっていた。

 机は満席となっているが、皆一様に団長に視線を向けて言葉を待っている。

 

「知っている者も多いと思うが……今朝、シルビエ第三王女殿下から直々の命令が届いた」

 

 きっちり30人の騎士が集められている大広間の中で、中心に座っているのは体格の良い騎士だった。

 その騎士を中心に円卓の間に武装した騎士たちが座っている。

 

「その内容は、1週間後に隣国、エルセレム帝国のルイ・カルメン騎士学院生徒30名と、今ここに俺が招集した、アミリット王国騎士団の精鋭30名でフェーベル草原へ赴き、騎士団戦を行えとのことだ」

 

 羊皮紙を鎧小手を付けた手で持ち、その内容を簡潔に伝える。

 

「ギル団長! 発言良いですか!?」

 

「許可する」

 

 ギルと呼ばれた大男は、これまた体格の良い30代前半といった中年に視線を向ける。

 

「相手はたかが学生ですよね? 本当に精鋭を集めなくても、若い騎士たちの練習台にでもすればいいんじゃないですか?」

 

 そう話す中年の目には油断と怠慢が宿っている。

 率直に言って、面倒くさいのだろう。

 わざわざ隣国まで行き、学生と戦って帰るなど演習より酷い。そう目で語っている。

 

「貴様の言うように、相手はたかが学生だが、得物は真剣を使えとのことだ。万が一ということもある。それに、シルビエ王女殿下や隣国の皇帝陛下も参加される。新兵を送り出し、無様を晒すわけにはいかん」

 

 自己保身を第一に置くギルという男は、そう口にした。

 事前情報で、体裁的には隣国との共同開催で祭りを開く。という段取りになっている。

 試合の映像も主要都市に送られるらしい。

 そこに新兵を送り込んで、万が一があれば国の名誉を落とすことになる。

 

「真剣……? 怪我とか、最悪死人も出るってことですか?」

 

「首を斬れば死ぬだろうが、書面によればエルセレム帝国の治癒魔導士隊が会場で治療に当たるそうだ。そうそう死にはしないだろう」

 

 それを聞いた騎士たちは一人を省き、一様に安堵の息を吐く。

 

 集められている精鋭騎士たちの中には、20年前の戦争経験者も含んでおり、エルセレム帝国の治癒魔導士の練度の高さを知っている。

 

 首さえ繋がって息さえしていれば、綺麗に斬られた両手足も治療することが出来るとまで言われている。

 

「もう一つ質問があります。王女殿下にアンリ皇帝陛下が参加する、とはどういうことですか?」

 

「それは、この騎士団戦の決着条件が降伏と全滅以外にないからだ。双方が本陣に主君を置き、それを守らなければならない。こちらの主君がシルビエ第三王女殿下。相手がアンリ皇帝陛下となる。事の重要性は理解できたか?」

 

「は、はいっ!」

 

 手を上げ、立っていた中年騎士は胸の前に力強く右の拳を握る。

 アミリット王国騎士団の敬礼である。

 

「それから、この戦いは私情ではなく、あくまで親交上のものとするという理由から、会場の外には露店などが開かれる。それにより、戦いの様子は投影魔法により観客の見世物となる。もう一度だけ言う。無様を晒すな! いいな!?」

 

「「「はっ!」」」

 

 その場に居た一名以外の騎士たちは立ち上がり、胸の前で拳を握る。

 

「…………」

 

 そんな騎士達の様子を、同じく精鋭に選ばれた騎士の一人である少女は横目で見ていた。

 退屈そうにあくびを噛み殺した後、窓の外の風景に視線を戻す。

 

 どうでもいい、やる気が出ない。

 

 そんな態度を隠そうともしない様子で、テーブルに頬杖をついて窓の外を見ていた。

 春の陽気は穏やかで、春風が木々を優しく揺らしている。


 少女が育った環境には木というものすらなかった。

 初めて見た時には酷く驚いたな。と感情に浸っていた。

 

「……ギル団長。本当にこの方も連れて行くんですか?」

 

 先ほど質問していた騎士が、控えめにその少女を指す。

 

「精鋭を選んだと言っただろう。態度はともかく、剣の腕ならこの娘……いや、我が騎士団の副団長を超えるものは居ない」

 

 そう、先ほどからずっと無礼な態度を取っていても何も言われないのはこの中で二番目に偉いからである。

 

 力量だけなら国随一ということもあり、皆が恐る精鋭の中の精鋭だった。

 

「ですが……」

 

 なおも食い下がろうとする騎士をギルは手で制する。

 

「俺の決定に貴様の意見など求めてはいない」

 

「……はっ」

 

 ギルの眼光に中年騎士は萎縮した様子で視線を外す。

 

「あの、自分からも質問良いですか?」

 

「許可する」

 

 恐る恐るといった様子で、中年とは反対側の席に座っている甲冑を身に着けた若い騎士が手を上げた。

 

「シルビア第三王女殿下は、何故この戦いを? 学生と戦って何か得になるとは、自分には思えません」

 

「……あぁ。何でも、ルイ・カルメン騎士科に所属する一名の生徒を、シルビエ様がスカウトした際それを断られた。そこで我らとその生徒率いる騎士団との戦いが決まったらしい。勝利すればその騎士がシルビア王女殿下の所有物に出来るという契約を交わしたそうだ」

 

「ははっ……昔から変わりませんねシルビア第三王女殿下は。欲しいものはどんな手を使っても手に入れる。その手段が戦争でも……」

 

 空笑いを発したのち、目の前で手を振りながら『怖い怖い』と笑う甲冑の騎士。

 

 それに釣られて周囲の騎士たちも鼻で笑ったり、苦笑いを浮かべている。

 

「一応、誤って手を斬り落としたりして使い物にならなくなってしまわないように、シルビア第三王女殿下のご寵愛を受けている生徒の風貌と名前だけ教えてもらえますか?」

 

 薄ら笑みを貼り付けながらその騎士は問う。

 

「そうだな。だがその前に、今回の戦にはトリエテスの娘が参加する。あの『臆病者』の娘は必ず使い物にならなくしろ」


『臆病者』


 それはアミリット王国騎士団が、クリード・トリエテスを指す言葉だ。

 

「ほう。あの後方騎士様の娘が参加するんですか」

 

 男はつまらなさそうに鼻で笑いながら問う。

 

「あぁ、騎士科で主席を取っているそうだが、我らの敵ではあるまい。腕を切り落としても治癒魔法で再生はするが、神経までは治らん。親子揃って二度と剣を握れないようにしてやれ」

 

 周囲の騎士たちは歪んだ笑みを見せる。

 20年前まで続いていた戦争経験者の騎士たちは血の気が多く、人の人生を奪うのにためらいが無い。

 

(くだらない連中……)

 

 そんな光景を見て、銀髪赤眼の端正な顔立ちの少女は不快そうに鼻を鳴らした。

 氷のような無表情を貼り付けて、残念な人間を見るような蔑みを含んだ目で睨みながら。

 

(でも……わたしは、この国に居場所を作らなきゃいけない……あの地獄から、あの人を安全な場所に連れて行くために……)

 

 少女は窓の外を飛ぶ二羽の鳥を見る。

 オスの方は少しばかり怪我をしており、それを心配した様子で周りを飛ぶメスの姿。

 先ほどまで見ていた木の枝に二羽の鳥は止まり、メスが口に咥えた餌を渡していた。


 オスの鳥も少し戸惑いながらもその餌を受け取る。


 仲睦まじい二羽の鳥。


 こんな退屈な会議の中だが、そんな様子を見たことで張り詰めた心が癒やされていく。

 

(あの人はきっと突然居なくなったわたしを恨んでいる……物心ついてからずっと……あの場所で、あの地獄の中で、見捨てず守ってくれた)

 

 痕跡一つ、行先一つ教えずに少女はある少年の前から去った。

 少年を誰よりも想って離れた。

 

(守ってくれたのは……何かの気まぐれや思惑があっても関係ない。物心ついたときには親も、兄妹も、家も、お金も、何もなかったわたしに、愛おしく思える大切な時間をくれた。その事実だけがあれば充分だ……)

 

 少年と一緒に暮らせる家を手に入れるために、貧民街の出身というだけで嫌な顔をされて人扱いされない国を出た後、他国で一から地盤を築いた。


 スラムの人間にとって、外の方こそ怖いにも関わらず、彼女はたった一人で外に出たのだ。

 

 だが、現実は立つ鳥跡を濁さずとはいかない。恨まれるのは覚悟の上だった。


 それでも少女は、なけなしの勇気を振り絞って青年と二人で笑いあえる未来を選んだ。

 

 そして、その目標はもう少しで叶う。

 

 小さいだろうが、家を買う金はある。

 あと少しで、贅沢さえしなければ食事に困らないような生活の基盤を整えられる。

 

 少女がこのまま騎士として働き続ければ、給料日には多少贅沢は出来るだろう。

 

(……その時は、わたしを許して笑ってくれるよね……?)

 

「――話を戻すが、シルビア王女殿下のご寵愛を受けているのは……」

 

(それとも、『バカだな』と言って、昔みたいに頭を乱暴に撫でてくれるだろうか……?)

 

「燃えるような炎髪に、猛り狂う虎のように瞳孔を絞った目。名前は……」

 

(……わたし、成長したよ……? 早く会いたいよ……)

 

「――リド・エディッサ」

 

「っ!?」

 

 ガタッ!!

 ギルが口にした名前に、ずっと無表情で、どんな時も顔色を変えないことだけが有名な少女は、椅子を蹴り倒して立ち上がった。

 

「な、なんだ……? セシリア?」

 

 流石に周囲はどよめく。

 

 戦争が終わり、山賊が増えた昨今。

 治安維持の任務で訪れた廃村で、20人近くに囲まれても顔色一つ変えず周囲を血溜まりにした『血まみれ雪兎』(本人希望)の異名を持つ女。


 そんな彼女が目を見開いてズンズンとギルに近寄ると、紙を奪うようにして内容を何度も確認している。

 

「……り……ど……?」

 

「そ、そうだ。知り合いか?」

 

 ギルの言葉など耳に入っていないセシリアと呼ばれた女は一人、驚愕に目を見開いて紙に穴が開きそうなほど凝視している。

 

(なんで……?)

 

 その心の言葉は誰に向けられたものだろうか。

 恐らくリドだろう。

 

 何故なら紙には、


『エルセレム帝国所属。アンリ・シャパーニ皇帝陛下側近騎士リド・エディッサ』

 

 こう書かれているからだ。

 

 一般的に、側近騎士という名前がもたらす意味は、内縁というケースが多い。

 

 男の皇帝陛下なら、内縁の妻が側近騎士となることもあり、籍を入れれば夫人となる。

 

 女の皇帝陛下なら、次期皇帝の地位に最も近い存在という意味になる。

 

 ……つまりは、そういう関係だと誤解されてもおかしくない。

 

 ドゴォンッッッ!!!


 セシリアが紙をテーブルに叩きつけると同時に、その拳圧によって、円卓机が盛大にひしゃげる。

 

「セ……セシリア……さん……?」

 

 団長であるギルも敬語である。

 まず間違いなく、剣の腕も力も、女のセシリアの方が強いと知っているからだ。

 

「りど……」

 

「……え?」

 

「リド・エディッサ……わたしが……相手をする……」

 

「……えっ?」

 

 震える声でセシリアはそう宣言し、それに、団長も震えた声で意味を聞き返す。

 

「文句……ある……?」


「……えっ?」

 

 ぶんぶんぶんっっ!!

 

 まるでオオスズメバチの巣を突いたかのような音で、騎士たちは首を振る。

 

「なら、いい……」

 

 そう言って、セシリアは二本の角が生えた真っ白の兜をかぶり、これまた真っ白な鎧を鳴らして部屋を後にする。

 

「「「…………」」」

 

 残された兵士たちの間には、なんとも言えない空気が広がった。


(りど……ころす……ッ!!)

 

 その固い決意で、セシリアは鎧の奥にある赤い瞳を更に輝かせる。地面の大理石をとんでもない脚力で叩き割りながら廊下を進んでいく。

 まるで戦車のようだった。

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