エピローグ
最終の魔法「いつでも、ルミナエール堂はあなたの心と共に」
今日は、真理の給料日。
真理の意見で、出所不明のお金を持っていたら。親に不審がられるのでルミナエールにお金以外の物にしてもらっている。
今回の給料は、“ルミナエールと外食に行くこと”だ。
真理はいつものように真理の部屋から、ルミナエール堂に誘(いざな)われる。
彼女は、水色のワンピースにりぼんと、フリルが付いた衣装に髪を下ろし、花飾りの付いた青いヘアバンドをしていた。
「とても、可愛いよ。真理ちゃん」
「ありがとうございます。ルミナエールさんもそのスーツ似合ってますよ」
ルミナエールは、藍色のスーツを着ていていつもと雰囲気が違ってみえる。
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「ありがとうね。では、行こうか!」
「はいっ、ところで今日はどこに行くんですか?」
真理が聞くとルミナエールは、店のドアに鍵をかけ、(出かけています)と書かれたプレートを掛けた。
「うん?今日は、真理ちゃんに選んで貰おうと思ってるよ。町を歩きながら決めようか」
「了解で~す!」
真理は嬉しそうに答えた。
◇ ◇ ◇
ここは、ルミナエール堂がある場所からは、少し離れたマテ横丁と呼ばれる場所だ。
真理の世界では夜中だが、ここでは昼間で時間差と時の流れが違う。
真理とルミナエールは店を見て回った。
魔法の薬局、魔法の杖の店、魔法動物を売っている店等。さまざまだ。
魔法薬店の前の出店でジェラートを売っていた。
「あっ、イチゴ美味しそう~」
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真理は、美味しそうな物を見つけたと嬉しそうにひょいと店を覗く。
すると、ジェラート店のお姉さんがにこりと微笑み。
「可愛いお嬢さん。ジェラートは、いかがですか?」と言った。
すると、ルミナエールが真理の横に来て、指でVサインを作り
「イチゴとチョコ二つくれる?」と注文した。
お姉さんは、「ありがとうございます。二つですね。587ルセントになりま~す」
にこやかなスマイルでコーンにアイスを盛り付け、二つのジェラートを渡してきた。
ジェラートを食べながら町の散策(さんさく)をするふたり。
「ねえ、ルミナエールさん。」
「なんだい?」
「私が一人前の魔女になったら、魔法の杖持てますか?」
と無邪気に聞いて来た。
「そうだね。その時、考えようか」
と答えてくれたが、その表情は少し、不安そうな顔でいつもの笑顔ではなかった。
「どうしたんですか?」
と真理が聞くと、ルミナエールは首を横に振り、「なんでもないよ」と言った後。
露店で、真理に可愛い白(しろ)鳩(ばと)のブローチを買ってくれた。
「可愛いっ! ありがとうございます」と喜ぶ真理に、「良く似合ってるよ」と微笑むルミナエール。
◇ ◇ ◇
その後、真理はファミリーレストランを選んで、ルミナエールと入店した。
店内は、ちょうど込み合っていて二人は並んで、少し待った後に窓際の席が空いたのでそこに座った。
「私は、海老ドリアとアイスコーヒーにするよ」
ルミナエールが真理をちらっと見ると、メニューを開いてまだ、悩んでいるようだった。
少しして、決まった様子で顔を上げた。
「私、ピーチジュースとチキングラタンが良いです!」
「それで良いのかい?」
ルミナエールは、真理をじっと見る。
「えっと……。値段が高くない方が良いと思いまして」
と冷や汗を流して、言うと。
「本当は何が食べたいの?」
「チーズイン・ハンバーグ……です」
と真理が頬を染め、遠慮がちに言った。
魔女は「分かった」とにこりと微笑み、店員を呼んだ。
「海老ドリアとアイスコーヒー。チーズイン・ハンバーグとピーチジュース。
あと、この子用でテイクアウトに特製ミルクプリンね!」
店員が注文を繰り返そうとすると、真理は「待ってください!私、ミルクプリンは」
と言いかける。「真理ちゃん、これは私からの日頃の感謝の気持ちだよ。」と言った。
「わあっ、良いんですか?ありがとうございますっ」
真理は、ルミナエールの心遣いに素直に喜び、嬉しそうに微笑む。
◇ ◇ ◇
食事も終わり、レストランから出てルミナエール堂への帰路を歩き始める二人。
その道すがらルミナエールが口を開いた。
「ねえ、真理ちゃん」
「何ですか?」
真理が何となく、切なげなルミナエールの雰囲気を感じ取って心配そうに聞き返すと。
「真理ちゃんを魔女にしたのは私だ。だけど、魔女の仕事はこの前のような黒竜の血の杖のような。危険な仕事もある……。真理ちゃんをこれ以上、危険にさらしたくないんだよ。」
「それは……。魔女見習いを辞めさせられるということですか?辞めさせられると言う事は、ルミナエールさんともクリスお兄ちゃん達とも、会えなくなると言う事なんですよ?」
すまなそうにうなずく、ルミナエール。
「なん、で?やっと、ルミナエールさんとも仲良くなれたのに。勝手よ!ルミナエールさんのばかっ!!!」
「真理ちゃん!」
真理は、泣きじゃくるとそのまま、反対側の暗い路地へと走り去ってしまった。
◇ ◆ ◇
路地裏を一人歩く真理、道端には、中年の男性が酔っぱらっているのか。顔を真っ赤にして寝転がっている。
真理はゴクリと生唾を飲み込むと、きびすを返し、元来た道を戻ろうとした。
その時だ。
「可愛いね、お嬢ちゃ~ん。一人い~?」
酔っ払いが、嫌らしい表情で、千鳥足でおもむろに立ち上がる。
「おじさんとイイコトしない~?たっぷり、可愛がってあげるからさあ~」
「いっ、嫌っっ!!」
真理は青ざめて、震えながら後ずさる。酔っ払いの魔の手が真理に迫る。
その時、「待ちな!それ以上は、させないよ!」
何と、ルミナエールが目の前に突如現れ、真理を後ろに隠した。
「何だあ?突然、現れやがって。お前、魔女かあ?」
酔っ払いがもう一度、手を伸ばそうとすると、ルミナエールと真理はふっと消えた。
◇ ◇ ◇
ルミナエール堂の前に戻って来た、真理とルミナエール。
ルミナエールは、真理をキッとキツい表情で見た。
ビクッと肩を震わせ、謝ろうとした真理だったが……。
突然、ルミナエールはその胸に抱きしめた。
「ルミナエールさっ……」
「ばか、ばかっ!もう、心配したんだよ。真理ちゃん!」
ルミナエールは、涙をこぼしながら真理をきつく、抱きしめる。
「ごめんなさぁいっ……。ルミナエールさん」
二人はしばらく人が行きかう道で、抱きしめ合った。
ルミナエールは、鼻をすすりながら首を横に振った。
「いいや、馬鹿は私だったね……。大切な弟子のあんたを自分のせいで、危険な目に遭わせちまったよ。」
「いいえ、悪いのは私ですから」
真理は、力なくうつむきながら言う。
「私は、やっぱり見習いを辞めなくてはならないのですか?」
真理の瞳から、ぼろぼろと悲しみの大粒の涙が、こぼれ落ちる。
「いいや、あんたみたいな。優しくて肝の座った子。そうは、いないよ。」
「真理ちゃん。私からお願いする。至らない魔女だが、あんたの事は私が守るよ。
だからこれからも、私の元で魔女見習いをしてくれるかい……?」
ルミナエールは、一歩引いて真理に頭を下げた。
真理の顔が落ち込んだ表情からみるみる、晴天の太陽のように輝いてゆく。
「はいっ、ルミナエールさん。こんな私ですが。これからも、よろしくお願いいたします!」
真理は、おじぎをして、涙交じりに明るく元気に笑った。
~fin~
🌛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・🌛
「魔法雑貨店ルミナエール堂」本編は完結しました。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
後は、後日譚を投稿して完結になります。
よろしければ、最後までお付き合いよろしくお願いいたします。
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