第1の魔法「魔法のスプーン~真理の幸せ~」
「あなたが、魔女ルミナエールさん?」
ルミナエールは、そうだとうなずいた。
彼女は、ゆっくりとそれでいてしっかり、真理を見ている。
「うん……あんたは、不思議な子だね。そして、とても優しい子のようだ。
このような不思議な体験をしたのは、これが初めてではないね?」
「いいよ。話してごらん。どんなふうに幸せになりたいかを」
真理が嬉しそうにうなずき、思っていることを思い切って伝えた。
「私は、七歳の頃にお父さんが亡くなって……それから、お母さんが一人で私を育ててくれているんです。私はいつも、頑張ってるお母さんに幸せになって欲しい!」
真っすぐにルミナエールを見つめた。
彼女は、優しい微笑みで二度うなずき、真理を見つめ返し言う。
「解った。あんたの願いは、母親を幸せにしたいんだね」
ルミナエールは、商品棚を調べていく。
少しして棚から、一つの商品を持ってきた。小さな金色のスプーン。
それにはツタが絡んでおり、これでは小さすぎてシチューも、すくえないだろう。
しかし、妖精が使いそうな可愛らしい物だった。
「わあっ、可愛いっ!」
「これは、“魔法のスプーン”こんなに小さいからね。食事には使えないが、たくさんの幸せをすくいとってくれるんだ。あんたにぴったりだと思うよ」
ルミナエールは、そう言うと、真理に魔法のスプーンを見せた。
それを見て真理は、慌ててポケットに手を突っ込んでみた。
先程まで、部屋にいたので財布は、持っていない。
しかし、ポケットには昨日の買い物で返って来たおつりが、二百五十円入っていた。
見るからに高価そうな品物だ。財布を持っていたとしても、
真理のお小遣いでは買えそうもない。
彼女は、ポケットから小銭を取り出し、全てのものを恐る恐る差し出し問う。
「今、これしかないけど。大丈夫?」
すると、魔女はまた、くすっと微笑んで真理の手のひらから百円玉だけを取った。
「これで充分だよ。持っておいき。お母さんを大切にね」
ルミナエールは、小さい紙袋にスプーンと説明書を入れ、真理に渡す。
「それとこれ、購入してくれたお客さんへのサービスね」
彼女はウインクをして、竹かごに並べられた小さな可愛いポプリを一つ取り、真理に一緒に渡した。
「いい香り~」
真理は、甘くて爽やかな香りただよう。ポプリの香りをかいで喜ぶ。
「ありがとう。ルミナエールさん!」
魔女と言われているが、本物はとても、優しい女性だった。
真理はにこりと微笑み、手を振る。ルミナエールが指を振ると再び光に包まれた真理は、家に戻って行った。
真理は、一緒に付いていた説明書通りに魔法のスプーンを使った。
その後、しばらくしてから。母親に再婚相手が見つかった。
その男性は、父親に勝るとも劣らない優しい人だった。
最初は、戸惑ったが真理は、徐々に慣れていった。
「お礼言わなくちゃ。また、魔女さんに会いたいなあ」
真理は、心からそう願っていた。
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