EP.2 崩れゆく関係 ◯

体育祭に文化祭


この二つの行事と言えば

学校生活において有名な行事であると言える。

俺の通うこの高校にもら

もちろん二つの行事は存在する。

厳密には体育祭はないのだが、

スポーツ大会という小規模のものがある。


行われるのはもう来週の話で

うちの高校ではそのスポーツ大会と文化祭は

まとめて行われることになっている。

スポーツ大会、文化祭の順に

3日間丸々使ったとても大きな行事だ。

高校生活の中で最大の行事だと

言っても過言ではないと俺は思う。


まあ、青春とまるで縁のない俺には

関係のないことだからどうでもいい…


「佐藤くんはどのスポーツにするの?」

俺が適当なことを考えながら座っていると、

隣席の五十嵐がそっと俺に話しかけてくる。


今はスポーツ大会の競技を選ぶ話し合い中。

正直、俺としてはサボる気だから

どれになろうが関係はない話だ。


「教室で俺に話しかけるな。」

「クラスメートなんだからいいじゃん。

 私はねぇ~バスケにしようと思うんだ。」

あまり目立ちたくはないので

五十嵐に話しかけないように注意するが

彼女は特に気にした様子はない。


「…余ったのでいい」

「それじゃあ、つまんなくない?」

できる限り、速やかに話を切り上げようと

俺は早めに返答にしたが彼女は食い下がる。


「どうせサボるから関係ないしな。」

この時の俺は早く答えることに集中して

あまり深く考えずに返事をしていた。

それがいけなかったのだろう。


「え?」

「あっ…」

気づいたときにはもう遅かった。


「佐藤くん、サボるの?」

俺は気が抜けていたのかバカ正直に

サボることを彼女に言ってしまった。

面倒な性格をしている彼女のことだ。


俺がサボるなど言えばー


「佐藤くん、駄目だよ。

 そんなことは私が許さないよ。」

案の定、五十嵐は頬を膨らませながら

俺に向かって怒りをぶつけてくる。


「あまり、俺の方を見て話しかけるな。

 他の人に見られるぞ。」

「話を反らさないでよ。

 スポーツ大会に出ないなんて絶対に駄目。」

俺が五十嵐にこちらを見ないように言うが

怒り興奮している彼女には通じなかった。


「五十嵐、いい加減にしろ」

「いい加減にするのは佐藤くんだよ。

 スポーツ大会に出るって

 言うまで私は話し続けるからね!」

「俺はお前のためにだなぁ…」

俺が少し強めに言うが五十嵐は怯まない。

玲もそうだが最初の頃は

少し強めに言うと怯えていたのに

今となってはまるで効果はない。


「佐藤くん…

一緒に思い出作ろうって約束したよね?」

彼女は少し涙目になりながら俺の方を見る。

なんとしてでも俺のことを

スポーツ大会に出したいらしい。


それに約束か…

確かに友人関係になったときに

思い出を作ろうと言われたのを覚えている。


「わかった、スポーツ大会に出る。

 だから、もう話しかけるな」

俺としては早く大人しくさせたいので

俺は彼女に折れることに決めた。


それに約束はできる限り破りたくはない…


「約束だからね!

 サボったら、引っ張ってでも連れてくよ。」

「それは流石に困る。」

彼女だったらやりかねない。

俺はそう思いながら五十嵐と約束をした。


「佐藤くん、スポーツ大会楽しみだね!!」

「…そうだな」

キラキラした笑顔で俺を見てくる彼女を

俺は苦笑いで俺は答えた。







それから、一週間が過ぎて

スポーツ大会と文化祭の準備期間が始まった。

うちのクラスはお化け屋敷に決まり、

俺はというと小道具などを作る裏方に

五十嵐により無理矢理配属された。


「佐藤くん、看板お願いしてもいいかな?」

「…」スッ

看板の組み立てを五十嵐に頼まれた俺は

片手をあげて承諾の意志を表して

黙々と看板を組み立てていく。

場所は空き教室で俺達の他に人は誰もいない。



「佐藤くんって、

 料理もそうだけど本当に器用だね。

 小道具作りに看板作りとか

 細かい作業なんでもできるしすごいよ!」

「…」カンカン

横で話しかけてくる五十嵐を無視して、

木の板にトンカチで釘を打ち付けていく。


「そういえば、隣のクラスの出し物はねー」

「…。」

日曜大工などはやったことはないが、

案外こういうのが俺は好きなのかもしれない。


「ねえ!!さっきから無視しないでよ~」

「作業中に話しかけるな。

 手をトンカチで叩きたくないからな。」

「むぅ、ごめんなさい…」

俺が話しかけないように注意すると

五十嵐は少ししょぼくれながら謝罪する。


別にわざと無視をしていた訳ではなく、

流石にトンカチを持っている時に話すなど

初心者である俺はできないから

彼女の話を聞くことができなかっただけだ。


「…」カンカン

「…」ジー

五十嵐を注意した後、俺は作業を再開して

黙々と看板を仕上げていく。

俺が看板を仕上げる間、

五十嵐は何が面白いのか分からないが

その様子を無言でじっと見てくる。


「お前も仕事に戻れよ。」

「私の仕事は現場の指揮だから大丈夫!」

彼女の無言の視線に耐えられなかった俺は

仕事に戻るように言うが大丈夫と言い切られた


正直、俺には何が大丈夫なのか分からない。


「佐藤くんがサボらないか見張りだよ!」

「そんな無駄なことに時間を割くなよ。

 …ほら、できたぞ。」

「えっ、もうできたの!?」

俺がサボらないように

彼女は見張っていたらしいが無駄に終わった。

何せ、もうすでに看板作りは終わったからな。


「次の仕事は?

 何かあるなら手伝うぞ。」

「え、ええと…なら、私と見回りする?」

「見回り?」

「そう、サボっている人がいないか。

 私と一緒に回って見ていくの。」

「そうか。他のやつに話を聞いてくる。」スタスタ

俺がそんなことするわけないだろう。

仮に言ったとしても注目の的になるだけで

俺としては最悪でしかない。


「ちょ、ちょっと待ってよ!」

バカなことを五十嵐が言ってきたので

無視して俺が教室を出ようとしたときーー


ブルブル


制服のポケットに入れている

俺のスマホが突然震え出した。


「…。」

「佐藤くん、どうかした?」

「五十嵐、悪い。少し用事ができた。

 俺はクラスの方は手伝えそうにない。」

「え、え?」

「本当にごめんな」

スマホ画面を見ると俺は五十嵐に

手伝いをこれ以上はできないことを謝罪した。

今からすぐに行くべきところができたからだ。


「えーと、とりあえず何かあるんだよね。

 私も手伝おうか?」

「大丈夫だ。

 これぐらいなら、俺一人で十分だ。

 お前はお前の仕事をしてくれ。」

「う、うん。

 何か困ったことがあったら連絡してね!」

「…。」コクリ

俺は五十嵐の助力を断り、教室から出ていく。

彼女を連れていくことはできなかった。

なぜなら、メッセージの内容に関して

彼女がその場にいると面倒なことになるのは

目に見えていたから。


『助けて』


ただ一言…

ただ一言のそのメッセージ。

だか、そのメッセージは余りにも重い。


「どこにいるんだ…美鈴」

メッセージの送り主である美鈴のことを

心配しながら、俺は足早にその場を離れた。



 





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