幕間5 愛染

夏休みも残り一週間を切り、

俺は残り夏休みの課題を片付けていた。


カリカリ


カリカリ


「翔は夏休みの宿題を

 後回しにするタイプなのか?」

俺が課題をしていると

ベッドで俺の枕を抱きしめている

玲が話しかけてくる。


「後回しというより少しずつやるって感だ。

 ある程度、勉強する癖をつけとかないと

 2学期に入ったとき授業がダルくなる。」

「怠けてるのかと思ったら違う理由か。

 理由が真面目なのが君らしくて好きだよ。」

「それはどうも」

俺の答えに彼女は満足したようで

また静かに枕を抱きしめる。


「暇じゃないのか?」

俺は話相手になってもらって感謝しているが

彼女はつまらないのではないかと心配になる。


「大丈夫だよ。十分楽しめているさ。」

「いや、面白くないだろ」

彼女は問題ないように言うが

絶対につまらない思いをしているだろう。


「せっかく、来てもらったのに

 相手をしないのは俺としても嫌なんだが。」

「私は君に会いたくてここに来ただけだ。

 勉強の邪魔をしに来たわけではない。

 だから、君は気にすることではないよ。」


キリッとしながら言ってくる玲はカッコいい。

男の俺でもカッコいいと思えるほどだ。


「お、おう。

 何かあったら言ってくれ。

 可能な限り答えるぞ。」

「ふむ、そうか…」

そう言って少し悩みだす玲。

やはり、何か不満でもあったのだろうか?


「君の小さい頃の写真がみたい。」

「俺の小さい頃?」

「ビデオでもアルバムでもいい。

 何かないのか?」

「どうしてそんなものを?」

玲は物好きにも

幼い頃の俺が気になるらしい。


「私は翔のことをもっと知りたい。」

彼女は俺のことを知りたがる。

前に告白してきてから

俺へのアプローチが増えてきている気がする。



「ごめん、玲。

 昔のアルバムは引っ越したときに捨てた。

 だから、もう残っていないんだ。」

俺は理由を告げて断る。


「本当かい?」ジッ

「…っ本当だ。」

彼女は俺の目を凝視しながら聞いてくる。

これをされるのは

嘘をついた気分にさせられるから苦手だ。


「嘘はついていないようだね。」

「分かるのか?」

「君のことを愛しているからな。」

「そ、そうか」

彼女は俺を少し見つめた後、納得した。

どうやら、愛は人の嘘が分かるらしい。


「じゃあ、君の口から教えてくれないか?」

「わかった…」

口頭で話すように言う玲に俺は従う。


省略して話せばいいか。

俺は玲にかいつまんで説明していくことにした

大した内容ではない。


小学生の頃に転校してここを離れて県外に行き

中学卒業とともに一人暮らしをするために  こちらに戻ってきたこと。


俺の過去について軽く話した。


「なるほどな。話してくれてありがとう。」

「こちらこそ、つまらない話で悪いな。」

玲は真剣に最後まで聞いてくれたようだ。


「ふふ、大好きな君の話だ。

 つまらないわけないだろう?」ギュ

「それはよかったな」

そう言うと

ベッドから降りて俺に抱きついてくる玲。

俺は抵抗せずに受け入れる。

この夏休みの間に散々されたから、

もう慣れてしまった。


「ところで、翔」

「なんだ?」

「君は私のことが好きかい?」 

「急だな」

彼女の急な質問に俺は苦笑いで返す。

この手の話題は俺が一番苦手な話題だからだ。


「前に読んだ本に好意を繰り返し伝えれば、

 相手もその気になってくる効果があると

 書いてあったのを思い出してね。」

「あー俺も聞いたことがあるかもな。」

玲は心理的な効果にいて説明する。


俺もその効果に聞き覚えがあった。

営業とかでもよく使われる有名な手法だ。


つまり、玲が言いたかったことは…


「その効果で俺が玲のことを

 好きになってるか知りたいってことか?」

「…」コクリ

俺の質問に抱いたまま無言で頷く玲。

質問の意図はこれで合っているようだ。


玲は日常や行為中に

俺によく好きや愛してると言ってくるからな


「ごめん、玲。

 俺にはお前のことが好きか分からない…」

「…そうか」

俺が正直に答えると彼女は落ち込んでしまう。


それでも仕方がない。

俺は正直に答えただけだ。

彼女が傷ついてもそれは俺のせいじゃない。


そう心に言い訳していても俺はー


「だけどな…」

「翔?」

俺は口を開いた。


なんとなく、

俺は玲が悲しそうにしているのが嫌だった。

だから、少しでも彼女のために伝える。


「別に…お前のことは嫌いじゃないぞ」

出来る限り玲に顔を見られないようにした。

こんな恥ずかしいこと顔を見ながら言えない。

だから、俺は精一杯の照れ隠しをしたつもりだ


「…。」フルフル

玲は黙りながら、震えている。


彼女は滑稽な俺を見て笑っているのだろうか?

それとも、中途半端な俺に怒っているのか?

どちらにせよ。

早くなにかを言って欲しい。

今の空気は俺には耐えられない。


「翔…」ギュ

玲が俺に抱きつく力を強める。


助かった。

ようやく何かを言ってくれそうだ。


「君は本当に女泣かせだね。

 落としたり上げたりして、

 私の心を弄ぶなんて本当に最低だ。」

「す…すまない。」


うっ…

予想通りの罵倒だ。

俺が悪いとはいえ、結構堪える。


「だけど…

 そんな君に弄ばれるのが私は好きだ。」チュ

玲は甘い声で囁きながら俺に口付けをする。


「君の言葉に私の体は疼いてしまったよ。

 …今からシてもいいかい?

 いや、君から誘ったんだからいいよね。」チュ

「んんぅ…首はやめろ…」

「首が弱いところもかわいいね。」

俺の一言で玲のスイッチが入ったようだ。

俺の首筋にキスを落とす。


チュ


チュ


チュ


「はぁ…玲…まだ課題が…」ハァハァ

「翔、大丈夫だ。

 後で私が優しく教えてあげよう。」サスサス

「…っ。せめて…夜まで…待って」ビク

玲の行為はどんどん過激になる。

それにより俺の理性もドロドロに溶けていく。


「夜は夜で愛し合おう。

 それとは別に

 今、私を優しく愛してくれないか?」チュ

「課題が…んんぅ!?」

「ぷはっ…無粋なことを言う口はこれかな?

 翔…私は君のことを愛してる。」

彼女は俺の話を聞かずに俺のことを蹂躙する。


好き

好きだよ

大好き

愛してる

君だけを見ている


愛の言葉を玲はキスする度、俺に伝えてくる。

俺の脳が言葉を聞いてくうちに麻痺していく。


「玲…」

課題のことなど忘れ、彼女の名前を呟く。

今の俺にはもう彼女しか見えない。


「翔、もっと私の名前を呼んで…

 君から私のことを愛して」ギュ

彼女の抱きしめる力はさらに強くなる。

俺の愛を必死に求める彼女に俺はー


「かけ…んん!!ちゅっ……」

自分から彼女にキスをした。


キスをした途端に大人しくなる玲。

彼女はただ俺のことを

見つめてながらキスを受け入れている。

その表情は俺を余計に興奮させる。


…ちゅっ…ちゅっ


そのままの体勢で静かにキスを続けた。

俺たちの時間が止まったように感じる。


チュパ


しばらくして、俺たちはキスをやめた。

そして、ベッドの上に移動する。


「ん…。」

「玲…」

玲が仰向けになって腕を広げている。

欲情的な彼女の姿に俺は目が離せなくなる。



「翔…来て?」

玲の言葉を皮切りに俺は理性を失った。


「あっ…」

俺は玲に覆い被さった。


その後のことを俺は覚えていない…

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