case.2 四条美鈴 後日談


「先輩!」

「美鈴、元気にしてたか?」

「はい。先輩もお元気そうで何よりです。」

数日が過ぎ、俺と美鈴は 

近況報告も兼ねて公園で会うことになった。


「それで、大丈夫なのか?元カレは」

「私の顔を見ると震えながら

 離れていくので近づいても来ません。

 よほど、先輩が怖いんでしょうね。」

「それは良かった。」

「全部、先輩のお陰です。

 ありがとうございました。」

そう言って、ぺこりと頭を下げる美鈴。

彼女の顔を見るがその表情に悲壮感はない。

よかった。本当によかった!


「美鈴が助けを求めて動いたからだよ。

 じゃなかったら、俺は何もできなかった。」

「いえ、先輩のおかけです!!

 謙虚なところも先輩のいいところですが       

 謙遜も過ぎると相手に失礼ですよ。」

「それは悪かったな。」

お互いに笑いあう俺たち。

腹を割って話すのもたまには悪くないと思う。

こういう関係が俺は一番好きだ。


「それで、

 本題に入らせて貰ってもいいですか?」

「元カレのことが本題じゃないのか?」

「はい、それはあくまでおまけです。」

啓大の件はおまけだと彼女は言う。


てっきり、俺はそれが本題だと思ってた。

他に話すことなんてーー


「実はですねー」


ああ、そうか。

美晴ちゃんとの約束があったな。

その件についての相談か?

なるほど、確かにそれは重要だな。



「先輩、私を抱いて貰えませんか?」



子供と遊んだことはないが

遊園地にでも連れて行けばいいか?

美晴ちゃんもその方が喜ぶだろう。



ん?



今、美鈴のやつ…なんて言った?



「美鈴、今なんて?」

聞き間違いだ。

そう信じて彼女に聞き直す。



「私を抱いてくださいって言ったんですよ。」

聞き間違いではなかった。

美鈴は確かに俺に抱いて欲しいと言っている。


「ど、どうしてそんなことを…」

「私、

 先輩のことが好きになってしまいました。

 だから、私のことを抱いてください。」

彼女は頬を染めながら俺に言ってくる。


告白…だと

だけど、なにかおかしい。


「だからって…んん!?」

違和感の理由を聞こうとしたが言葉が続かない


口を塞がれたからだ。


「ふぅ、先輩にキスしちゃいました~♪」

他ならない彼女の口によって…



「なんてことを…」

「だって…

 好きな人にはキスしたいじゃないですか?」

「そういう意味じゃない!」

彼女は特に意識していないのか冷静でいる。


どうして…


「返事はどうですか?」

上目遣いで俺の返事を待っている美鈴。

彼女の瞳は期待に満ちている。

彼女の気持ちはすごく嬉しい。


しかし…


「すまない。美鈴

 お前の気持ちには答えられない。

 俺にはそういう関係は無理だ。」

俺は美鈴のことをフった。


彼女の恋人になるのは俺では力不足だ。

俺なんかよりいい人が彼女には絶対にいる。


「知ってますよ。

 先輩は体だけの関係がいいんですよね。

 私はそれでも構いませんよ。」ギュ

「どうしてそれを?」

彼女は俺の秘密を言いながら抱き着いてくる。

俺は驚き、呆然としてしまう。


何で美鈴がその事を知っている??

まさか…


「美鈴、俺の噂を信じて…」

「噂ってなんですか?」

「え?」

俺の学校での噂を聞いて

こんなことを言ってると思ったが、

どうやら、彼女は俺の噂を知らないようだ。


だったら、

なんで彼女は◯フレのことを…


「それよりも先輩。これな~んだ?」

彼女は自身のスマホを俺に見せてくる。


そこにはーー



『…んん。ちゅぱ…きもちいいよ翔…』



そこには、俺と玲が体育館裏で

キスをしているシーンが写っていた。


「な!?」

「よく撮れてますよね~。

 先輩と生徒会長さんの熱いキスシーン。

 学校でこんなに激しいキスをするなんて

 私、妬いてしまいそうですよ。」ギュ

彼女は抱きつく力を強めてくる。


どうして…


彼女の行動が理解できず、

俺の頭は疑問に埋め尽くされていく。


「こんなのもありますよ。」

そう言うと

彼女は動画のシークバーの

位置を変えて再び動画を再生する。


『違う!俺と五十嵐はそんな関係じゃない。』

『必死になってるところが怪しいな』

『学校に玲以外の◯フレはいない!

 信じてくれ。玲』


最悪だ。

俺が玲との関係を言っている場面だ。


「生徒会長さんとは◯フレ関係なんですね。」

「あ…ああ…」

俺はあまりのショックに上手く言葉が出ない。


どうする?どうすればいい??


「なら、私となっても問題ないですよね?」

「玲以外に◯フレを作るつもりはない。

 だから、そんなこと言うのはやめてくれ。」

これ以上学校で◯フレを作りたくない。

確実に問題になる。

だから、彼女の誘いを断る。


「それは残念です。仕方ないですね。」パッ

彼女は俺に抱きつくのを止めて

俺から離れていく。


美鈴はどうにか諦めてくれたようだ。


これでいい

そもそも、彼女が俺なんかを

好きになることが間違っているんだから…



「いいんですか?先輩。

 今からこの動画を公開しちゃいますよ?」


!?


「な、やめてくれ!そんなことしたら…」

「そうですね~

 生徒会長さんが大変なことになりますね。

 そのとき、先輩は耐えられますか?」

美鈴は玲との関係をネタにして

俺のことを脅しているんだ。


なぜ?彼女がこんなことを…


俺自身は何をされてもいい。

しかし、俺のせいで

玲が巻き添えになるは絶対に避けたい。


「耐えられないですよね。先輩

 なら、すべきことは分かりますよね。」

「美鈴…どうしてなんだ…

 なんでこんなことをするんだ!!」

「どうしてって?

 先輩が教えてくれたんですよ。」

「お、俺が…」


俺が何を教えたって言うんだ!

俺はただ、啓大から美鈴を救っただけだ。

こんなことをしろなんて言っていない…


 って、先輩が言ったんですよ?」


あっ


『そうだな。その権利はみんなにある。

 美鈴も自分の好きなように生きればいい。』


俺は確かにそう言った…


「先輩のことを世界で一番愛しています。

 なので、先輩を手に入れるためなら

 私はなんでもします。

 生徒会長さんがいようとも関係ないです。」


そうかまた俺のせいなのか


「先輩、まずは体の関係になりましょう。

 そうすれば、動画も公表しません。

 それに生徒会長さんの関係も

 継続したままでもいいですよ。」


俺が余計なことを言わなければ


「私は優しいですから体まではいいですよ。

 体だけで心は絶対に許しちゃ駄目ですよ。

 先輩の心は私の物ですからね。

 それに安心してくたさい。

 私は先輩の全てを愛し尽くしますから。

 だからーーー」



彼女の事情に首を突っ込まなければ



も私の全てを愛してくださいね。」



彼女はこんなことにはならなかったのに




……



………



「…ぁあん!これすきッ!

 啓大のよりずっときもちいい!!」

あの後、俺たちは俺の家に移動し、

ベッドの上で一糸まとわずに乱れている。


「もっと、もっと激しくしてください。

 …んん、私のことを愛してください…」

そして、俺は彼女から一方的に貪られている。

俺はなにもできずに彼女にされるがままだ。


「美鈴…ぅぅ」ポロポロ

「あれ?翔さん、泣いてるんですか?」

俺は自分の罪に耐えきれず泣き出す。


「翔さんの涙…」ペロ

俺の涙を美鈴は舌で丁寧に舐めとっていく。


「ううっ…」ポロポロ

「んんぅ…翔さんの涙、美味しいですね。

 それにかわいい泣き顔をしてます。

 私、余計に興奮しちゃいます。」ゾクゾク

俺が泣いている姿を見ると

美鈴は両手を顔に当てて恍惚そうな顔をする。

その姿は醜くも美しい。


「美鈴…ごめん…ごめんなさい」

そんな姿を見ると罪悪感から謝ってしまう。


俺が…

他ならぬ俺が彼女をこうしてしまったから


「翔さん、謝らなくていいんですよ。

 私、幸せですから。

 だって、好きな人と一つになったんですよ。

 これ以上の幸せはありません。」ギュ

そう言って彼女は俺の頭を抱きしめる。

彼女の汗と甘い体臭に体が興奮して

俺は正常な判断ができなくなる。


「それに私達はお互い愛し合ってますからね。

 翔さんはもうすでに私のモノですもんね。」

俺には抱きしめられているから

彼女の顔は見えていない。


「これから、ずっと愛し合いましょう。」


だけど、何となく分かる。


「ね?翔さん」



今、彼女は悪魔のような笑顔をしていると…





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