第3話 滅殺メンバー

Side:ウメオ

 リリン邸の1階の隅の部屋。

 そこがシャランラの職場だ。


 シャランラは緑色の髪でロングにしている。ちょっとおっとりした顔つきの女性。

 没落する前に親がリリムの家に仕えてた。

 魔法使いだ。

 蜘蛛を操る。


 部屋の扉をノックする。


「どうぞ」


 部屋に入ると、シャランラが迎えてくれた。

 木箱がたくさんあり、箱には蜘蛛の巣が張ってある。

 蜘蛛はシャランラの眷属というか使い魔みたいな物だ。


「邪魔するぜ。貸与してたスキルが無くなっているはずだ」


「ステータスオープン。なくなってる。統率スキルがないので、前みたいに蜘蛛は操れないけど、とりあえず言うことを聞いてくれているみたい」


 なぜか満足そうなシャランラ。

 スキルがなくても蜘蛛が従ってくれるのが嬉しいのかな。


 ステータスを書いて貰った。

――――――――――――――――――――――――

名前:シャランラ

レベル:32

魔力:4157/4327

スキル:

  緑魔法

――――――――――――――――――――――――


 シャランラの緑魔法は畑をやるのに最適だ。

 だが、本人は機織りを選んだ。

 それも蜘蛛糸の。

 ただ、部屋にはまだ機織り機はない。

 蜘蛛の糸を巻いた物はあるけども。


「機織り機ぐらいリリムに買って貰えよ」

「友人にたかったら、それはもはや友人ではないわ」

「となると、俺はリリムの友人失格だな」

「あなたはいいのよ。多額の金をリリム姉に上げたでしょ」

「あれは国に入った」

「でも、リリム姉の懐に一部入ったわ。国も総取りはしないわよ。領地の開発資金もそこから出てるし」


「前に話してた滅殺復讐ギルドを始めるがやるか?」

「ええ、機織りはなにかと初期投資が必要だから。蜘蛛糸を売るだけじゃなかなかお金は貯まらないわ」

「シャランラの二つ名は機織りのシャランラだ」

「分かったわ」

「会合では機織りと呼ぶからな」

「ええ。糸をひとつマリーにもっていってあげて」

「なんで」

「婚約者がお世話になってますと挨拶にきたわ。菓子をもってね」

「へっ、婚約者?」

「仮だとは言ってたけど、仮をすぐに取ってみせますって言ってたわ」


 くっ、外堀が埋められていく感覚。

 いざとなったら、ウメオだとばらして、こんな奴はと愛想を尽かされて終わりだな。


「まあ、聞き流してくれて構わない」

「良い子じゃないの」

「うるさいばっかりだ」

「それがいいのよ。叱ってくれるのは愛情があるからだわ。関係ない人は駄目な姿を見て笑っているだけ」

「そんなものかな。糸ありがとな」


 冒険者ギルドは大通りの広い区画に建っていた。

 さすがに王都の冒険者ギルドだけのことはある。

 中に入り、見回すと、依頼受付の所にプリシラが座っているのが見えた。


 プリシラは銀髪でつり目の生意気そうな女性。

 魔法剣の達人だ。

 冒険者ギルドの密偵でもある。


「よう」


 カウンター越しにプリシラの前に立つ。


「依頼なら、依頼票を書いて」

「貸与してたスキルあっただろう。あれ無くなったから」

「ステータスオープン。所詮借り物の力よ。なくっても構わないわ」


 さっぱりしたという感じのプリシラ。


――――――――――――――――――――――――

名前:プリシラ

レベル:36

魔力:4351/4351

スキル:

  魔法剣

――――――――――――――――――――――――


 書いてもらったステータスにはやはり貸与してた物はない。


「前に話してた滅殺復讐ギルドを始める。銅貨6枚の依頼が来なかったか」

「来たわよ不自然だと思ってた」


 俺は滅殺復讐ギルドのシステムを説明した。


「私がやらないっていったらどうするの」

「そんときは、俺が銅貨6枚の依頼を片っ端から受ける。大半は未達成で終わるけどな」

「まあ、やるけど」

「お前の二つ名はギルド職員のプリシラだ」

「分かったわ」


 ここは土壁で出来た倉庫。

 醤油蔵に使う予定だ。

 マリーの持ち物だ。

 ガタがきているのでかなりの不良物件だ。

 俺はマリーから格安で借りている。


 財布から抜かれた金で賄っているが、マリーが不正してても問題ない。

 賠償スキルがあるからな。


 土の香りがする。

 雑菌とかいたら醤油を作るのに不味いんだっけ。

 他に良い物件がないから仕方ない。

 テーブルに4人が着く。


「前金で金貨3枚積んだ女がいたよ」


 滅殺復讐ギルドの会合で、プリシラがそう言った。


「前金を積んだのはそいつだけか」

「いいえ。ただ金貨を積んだのはその人だけ」


「裏に書かれていた内容は?」

「商会の会頭の屋敷で働いているみたいだけど、そこの家庭事情が複雑で。先妻の子がいるんだけど、後妻がその子を邪険にしてる」

「よくあることだな」

「だけどね。先妻の子を毒殺する計画がありそうと書いてある」


「助けましょうよ」


 リリムが口を挟んだ。


「俺達は復讐ギルドだ。毒殺の計画もありそうだろ。それでは動けない」

「薄情過ぎる」

「だが、かも知れないで全ての人は助けられない。いくら神だってな」

「ウメオがこんな人だとは思ってなかったわ」


 リリムが大股で出て行った。


「仕方ないことなのかも」


 シャランラも乗り気ではない。


「じゃあ、前金は返すという方向で」


 プリシラが締めくくって会合は終わった。

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