第2部 滅殺ギルド編
第1章 滅殺の序
第1話 ウメオ
Side:ウメオ
「というと俺はもう人間ではいられないと」
『そうだ、そなたはもう人の身ではいられない』
下宿のベッドでくつろいでいる所、突然、神から話し掛けられた。
俺はウメオ。
地球日本からの異世界転移者だ。
「詳しく説明しろ」
『神として完成してしまったのだ』
数々の冒険を経て、俺は人の身でありながら、神になった。
というのも『賠償スキル』というものを持っていて、理不尽な事が起きるとこのスキルを使えば賠償が取れる。
取れるのは財宝だけでなく能力も含まれる。
それで、神から神力を奪ったのだ。
それで神になった。
最初は馴染まなかった神力が徐々に馴染んできて、完全な神となったようだ。
「でどうなる?」
『選択肢はふたつ。まず人間の肉体を捨てて、神として天界で暮らすのだ。あとひとつは、本体を天界に置いて、魂の分体を今の体に入れて人間として生きる』
なら話は早い俺は神だが人間だ。
あくまでもベースは人間。
「ふたつ目の魂の分体を今の体に入れるを選択する」
『よかろう。そうなると今まで蓄えてきた力は全て放棄することになる。配下のアンデッドもだ。配下のアンデッドは天界でのそなたの領域である復讐者の園で暮らして居る』
配下のアンデッドは天界の俺の領域で暮らしているんだな。
なら別に良い。
「そんなことなら構わない」
『利点もある。その体はもはや寿命以外に死なない。天界の本体が無事である限りはな。それと賠償スキルの機能が少し変わった』
「リセットされるが、不死身だというわけだな。スキルの機能が少し変わったぐらいで文句は言わない。全て了解した」
『では人間界を楽しむが良い』
ステータスオープン。
――――――――――――――――――――――――
名前:ウメオ・カネダ
レベル:1
魔力:0/0
スキル:
賠償
――――――――――――――――――――――――
リセットされている。
仕方ないな。
本体じゃないってことだから。
賠償スキルがあるのは嬉しい。
これがあるだけでも十分チートだ。
賠償スキルのことは追々で良いだろう。
俺の現状は、ほとんど財産がない。
魔王討伐で得た財宝は、魔王軍が荒らした地方の復興費用として国に寄付した。
リリムの名前でだ。
リリムは旅を始めたころは没落貴族だったが、見事お家再興を成し遂げた。
今は女領主様だ。
聖剣も財宝もほとんど国に寄付した。
残ったのは僅かな品だけだ。
リリムの領地は魔王軍によって壊滅した地域にある。
そこに旅の仲間が2人行っている。
リリムは王都に屋敷を構えた。
それと俺を裏切った勇者と戦争になって色々と儲けた金は、戦争で亡くなった兵士の遺族へのお見舞金に充てた。
つまり俺はほとんど財産がない。
まあ、物凄い大容量のアイテム鞄はあるんだが、これは惜しくて手放せない。
ほとんど一文無しと言っても良い。
本当に金に困ったらリリムに泣きつくさ。
だって、リリムを貴族にしてやったのは俺だからな。
リリムも質素な生活の生活費ぐらいだったら何にも言わないはずだ。
「プフラ、なんでこんな遅い時間まで寝てるの。ほらほら仕事に行かないと」
そう言って責め立てるのはマリー。
俺に気があるらしい。
この下宿の持ち主でもある。
甲斐甲斐しくしてくれるのは、ありがたい反面、少しうっとうしい気もする。
マリーには俺が神だとかそういうのは話してない。
マリーは俺が新興貴族リリムの食客だと思っている。
リリムから貰っている金は最小限だ。
だから、食客でも一番下っ端だと思われている。
プフラは俺の偽名。
ウメオは神として知れ渡っているからな。
色々と都合が悪いのでプフラの名前を使っている。
「へいへい」
「返事は、はい一回」
俺を注意したのはゴルダ。
マリーの母親だ。
本人は家督をマリーに譲って若いのに隠居暮らしだ。
「はい」
「よろしい。しかし、そのだらしないベッドはなんです。起きたらきちっと整えなさい。仮にも貴族様の顧問でしょう。こういう生活態度が出世に響くのです」
「お母さま、その辺にしておいてあげて下さい」
マリーがゴルダを宥める。
「じゃあ行って来る」
マリーが手を出した。
「何?」
「財布を出しなさい。持たせておくと使ってしまいますからね」
「へいへい」
俺は大人しく財布を出した。
「何度も言わせない。返事は、はい一回」
「ご飯は下宿で摂りますよね。小腹が空いたときのお金は銅貨8枚もあれば十分でしょう。あとは私が管理してあげます」
軽くなった財布が返された。
まあいいか。
金なんか別にどうでもいい。
「じゃあ行って来る」
「いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃい。ピシッと背筋を伸ばして歩きなさい」
復讐は終わった。
力はもう要らない。
だが、俺は復讐の神を宣言した。
神の宣言は軽くない。
特に神の能力に関わることは。
神になったいまそれが本能のように分かる。
一人でも滅殺復讐ギルド人を始めると決意した。
時間はある、ゆっくりやるさ。
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