第111話 決着

 リリムには打って出るように伝えた。

 城塞の前の平原で、俺達の軍とウェイ軍が睨み合った。

 さて、激突すると犠牲者が多数出る。

 それは本意ではない。


 かと言ってわざとやられるつもりはない。

 こう着状態が良いんだな。

 地面はぬかるんでいる。


 この状態で凍らせたら、さらに状況は悪化するだろう。


「【氷魔法、冷気】」


 兵士が震えあがった。

 防寒具など持ってないから、次第に兵士の動きは鈍くなった。

 アンデッドは悪環境に強い。

 こういうフィールドでは無敵に近い。


 俺達は先陣を切る役目。

 走って、城塞を避けて、その背後に出た。

 そこは冷気などない。


「いいのか。走っただけだぞ」

「いいんだよ。敵の後ろを取ったって報告すりゃいい」


 冷気の魔法を防ぐために、とりあえず防寒対策をすることになったらしい。

 日が暮れたので陣に帰ると、火魔法の魔道具を渡された。

 そして将軍に呼び出された。


「プフラ小隊長、貴様にはスパイの嫌疑が掛かっている」

「ええと、戦いの場を突っ切って背後に出たからですか」

「敵と示し合わせたとしか思えん」

「でも他の味方もほとんど戦ってないですよね。寒くてそれどころじゃなかった」

「口答えするな。スパイの罪で処刑だ。逮捕しろ」

「くっくっく」

「何が可笑しい。もう詰んでるんだよ」

「なにっ? 憲兵早くしろ」


 寄生蟲、体を食い破れ。


「あがが」


 将軍が血を吹き出して死んだ。

 士官以上が死んだので陣は大混乱。


「【賠償】、神に逆らった賠償だ。うほっ、スキルが何万と入ってくる」


 もう戦いも終わりだな。


「お前ら、俺の下に集まれ!」


 呼び掛けているのはウェイ。

 奴は寄生蟲の料理を食ってなかったんだな。

 ニックの姿も見えた。


 ウェイ軍はアンデッドに包囲された。

 リリムの指揮は見事だ。

 アンデッドの指揮は執り易い。

 命令違反などしないからな。

 ただ、アンデッドは馬鹿だから臨機応変とかはないけど。


「ウメオ、俺と一騎打ちしろ!」


 そう言っているのはニック。

 一騎打ちねぇ。

 応じてやるか。

 勝てば戦いが終わるだろう。


「ウメオ、お前の命運もここまでだ」


 姿を現した俺にニックがそうほざく。


「御託は良い。掛かって来い」


 ニックが俺に剣で打ち掛かった。

 その瞬間、視界が真っ白に。

 聖遺物を発動したらしい。


 俺は冷静に剣を剣で受け止めた。

 白い光が治まった。


「なぜだ。なぜアンデッドが滅びない」


 灰になったアンデッドはいない。

 そりゃそうだ。

 神の名付けを甘く見て貰ったら困る。

 だが騎士と教会軍は諦めなかった。

 乱戦が始まる。

 一般の兵士は、一騎打ちで片が付くと思ったのに不意打ちして空振りの事態に、戦うのが嫌になったらしい。

 みんな棒立ちしている。


「【賠償】」


 魔王討伐の功績の横取りと、今回の戦いで迷惑を掛けた賠償をニックから取る。

 もう、レベルは1まで落ち込んでいるはずだ。


「力が失われた?」

「【生贄】」

「くっ、禁忌スキルなぞレジストしてやる」


 プリシラが現れた。


「ニックあなたは魔王討伐の功績を横取りしましたか」

「したぞ、それが何だ。なんでレジスト出来ない。俺のレベルなら可能なはずだ」

「有罪です」


『何をお望みですか』

「要らんスキルが多過ぎる。もっと有用な力に。そうだ神の力に変えられないか」

『可能です。スキルは想いの力。想いは神に力を与えます。あなたは下級神クラスになりました』


 ニックの死骸をアイテム袋に入れた。


「ニックを討ち取ったぞ」


 騎士団が戦闘を辞めて逃亡に掛かった。

 ウェイはとみると逃げようと馬に乗った。


「【賠償】」


 ウェイからも魔王討伐の功績の横取りと、今回の戦いで迷惑を掛けた賠償を取る。

 ウェイはどうやら逃げたようだ。

 くそっ、逃げないと思ってたのに。

 予想外に根性なしだったらしい。

 ここで逃げるのなら軍を起こすなよ。

 非常に迷惑だ。

 大人しく討たれろよと言いたい。


 まあ戦場から逃がすつもりはないんだが。


 リリムにウェイを絶対に逃がすなと念話する。

 ウェイは今レベル1。

 簡単に捕まるだろう。

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