第109話 決戦前

 俺達、小隊は歩哨に立った。

 歩哨に立つ前に、みんなで酒を飲んだ。

 夜風が冷たくて気持ちいい。


 人影が5人立った。

 歩哨の兵士ではないようだ。

 黒ずくめだからな。


 掛かって来いよ。

 俺は手招きした。


 無言で5人は、剣を抜いて襲い掛かってきた。

 俺は剣を抜いて、攻撃を捌く。


「ただの商人じゃないのか」

「【賠償】。くくくっ、殺す意思のある奴は、殺される覚悟もあるんだよな。ステータスオープン」


 貰ったスキルでめぼしいのは、毒刃、発酵、呪魔法、幸運。

 検証は後だな。


 俺は殺し屋達を斬り捨てた。


「【死霊魔法、アンデッド生成】。お前ら、城塞まで行ってリリムの指揮下に入れ」


 死体の始末はこれで良い。


「戦闘音があったが」


 ミタイナーが駆け付けた。


「野犬が出て、傷を負わせた。そのうちどこかでくたばるだろう」

「そうか」

「持ち場に戻れ」

「了解」


 さて、獲得したスキルだ。

 毒刃はあまり使えないな。

 毒対策は基本だ。


 発酵はどうなんだ。

 傷を腐らせたりするんだろうけど、これもレベルが高い奴には関係ない。

 レジストされるか、回復力で何事もない。


 ただ、物作りにはいいかもな。

 発酵食品とかに最適だ。

 全てが終わったら趣味で醤油とか作ってみよう。


 呪魔法はデバフとそんなに変わりないな。

 これもレベルが高い奴には関係ない。

 魔道具には使えるかもな。


 幸運はいいスキルだ。

 魔道具にしてもいい。

 底上げになるからな。

 後でアルチに何か作らせよう。


 殺し屋を差し向けたのが誰か分からないが、俺が普通でないとばれたかな。

 ばれても問題ないような気もする。

 俺がここにいるのは兵士を殺さないためだ。

 士気を下げて脱走させる。


 潜入がばれるのも時間の問題かな。

 朝になり、軍は一斉攻撃の準備を始めた。

 騎士団と教会軍もだ。

 どうやら、軍の上は、俺が発動した聖遺物でアンデッドのほとんどが死んだと思っているらしい。

 攻めるなら今だと。


「いよいよ、決戦か。腕が鳴るぜ」

「戦いが終わって、婚約者のぬくもりがまた味わえるのかな」

「いろいろと告白する度胸がついたよ。もう迷わない」


 相変わらず、準死亡フラグの台詞だな。

 後ろにいるのが生き残れるのに、金一封貰って欲が出たかな。

 意気盛んだ。


「お前達、プフラ小隊には先陣に加わってもらう」

「了解しました」


 くっ、どうやら、俺を殺したくて仕方ないらしい。

 俺はいいけど、死亡フラグの3人はどうかな。


 兵士の犠牲者を少なくする戦いは、士官や指揮官を狙うことだ。

 寄生蟲を飲み水に混ぜるのが効率いいかな。

 これなら、寄生させて殺すのはこちらで選択できる。

 ただ、騎士団と教会軍は警備が厳重だ。

 やつらは貴族軍ほど間抜けじゃないからな。


 こうなったら洗脳魔法だな。

 料理に携わる騎士団と教会軍の人を洗脳する。

 さて、忙しくなるぞ。


「貴族軍にも食材を納入したプフラです。騎士団でもどうです。お安くしておきますよ」


 俺は食材の納入業者を装って、騎士団と接触した。


「そうだな。食材は足りてない」

「ではサンプルを料理人の方に見せたいのですが」

「ふむ、良いだろう」


 料理場の天幕で、料理服を着て丸々と太っている料理長を見つけた。

 料理長はお玉で見習いの手を叩いた。


「そんな味付けにしたら首が飛ぶぞ。でお前は?」

「プフラです。食材のサンプルを持ってきました」

「出してみろ」

「では別室で、そちらに用意してあります」

「お前ら、しっかりやれよ」


 そう言って料理長と簡単な椅子とテーブルがある天幕に入った。

 テーブルには食材が広げられている。


「【洗脳魔法】、他の料理人もこの天幕へ呼べ」

「かしこまりました」


 上手くいった。

 他の料理人も洗脳する。

 最後に命令を待つ間、普通に仕事しろと言い渡して去った。

 教会軍も同じ手筈でなんとかなった。


 後は寄生蟲を仕込んで、指揮官や士官を殺すだけだ。


 リリムにはなんて指示しよう。

 籠城戦か、打って出るか。

 寄生蟲で指揮官と士官だけを殺した後は、追い払うだけでいいな。


 全てはこちらの掌の上だ。

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