第108話 気晴らし

「プフラ小隊のメンバーにはグリフォン勲章が授けられる。よくやった」


 隊長にそう言われた。


「これで年金が楽しみだぜ」

「婚約者にドレスが買える」

「君のために家を建てたよと言って告白しよう」


 浮かれてるな。


「プフラは将軍のところに行け。では解散」


 将軍は苦虫を噛み潰したような顔をしてた。

 俺が死ななかったのが面白くないのかな。


「将軍のネタミフだ。まあ掛けたまえ」

「どうも」


 了解です。将軍殿とは言わない。

 こいつは敵だからな。

 今回のことでそれが明確になった。

 それに喜んでるふりをすると馬鹿だと思われる。


「不満そうだな。君の活躍は上層部も評価している。王家に働きかけて、戦いが終わった後は男爵に叙勲するつもりだ」


 あれっ、どういうつもりだ。


「ありがとうございます」

「まあなんだ。証文の事は分かるだろ。格の低い貴族が騒いでもどうにもならない。気が向けば払うかも知れないから、家宝にでもするんだな」


 そういう手に出たか。

 取り込んでツケをうやむやにするつもりだな。

 俺は偽名を使っているから爵位は貰えない。

 それにリベンジャーが生きていると判れば、裏切りがばれる。

 でもここは。


「分かりました。そのように致します。子孫には粘り強く交渉せよと言い伝えます」

「貴族になったら、証文の話はステータスを上げるのに役立つだろうな。ただし、しつこいと」


 将軍が首を斬る仕草をする。

 爵位やるから黙ってろと言わんばかりだ。


「商人にとって交渉とは戦いです。撤退も時に必要ですし、停戦も必要です。ですが戦いですので、ただ負けると侮られます」

「ふむ、覚えておこう。ちなみに、君にあげる爵位は孫が手柄を立てて貰うはずだった」


 知らんがな。

 なんて返そう。


「私にとっては爵位なんか金貨1枚の価値もありません。どうです金貨1万枚で私から買われては」

「愚弄するのか」

「いいえ、商人とはこんなものです」

「もう良い、下がれ」


 3人の所に戻ると、3人は酔っぱらってた。


「勤務中じゃないのか」

「隊長が休みをくれたぜ」

「娼婦の所に行こうぜ」

「俺はちょっと」


「あのな。経験しとかないと失敗するぜ」

「じゃあ1回だけ」


 サキュバス魔道具『一夜の蝶の羽ばたき』に貰った金一封を使うのか。

 この戦いが終わって生き残っていたら、返してやろう。


 俺達4人はやり部屋ならぬ、やりテントに入った。

 盗用証文が使えなくなったので、規模は縮小したが、まだいくつか残ってる。

 兵士がなけなしの金で遊びに来るってわけだ。

 俺達みたいにな。


「いらっしゃいませ」


 女の子がテントの前で迎えてくれた。


「こってりとやってくれ」

「ええ」


 3人がテントに入っていく。

 俺もカモフラージュのためにテントに入る。


「プフラさんなら本番でもオッケーですよ」

「よしてくれ。商品には手を出さない派なんだ」

「ではマッサージでもいかが」

「それぐらいならな」


 俺は椅子に腰かけたままマッサージを受けた。

 やたら体を押し付けてきているが、気にしない。


「お堅いのね」

「ルールは破るためのものだという奴もいるが、俺はポリシーは曲げないタイプなんでな」

「はい終わり」


 俺は金貨1枚を出した。


「マッサージ代だ」

「またのご利用をお待ちしてます」


 テントから出ると、ミタイナーが待っていた。


「楽しんだみたいだな。香水の匂いがする」


 ああ、マッサージで体を押し付けられたからな。


「それなりにな。スッキリしたよ」

「お前はこういうことをしないと思ったぜ」

「息抜きは必要だ」

「蛇のような奴だと思ってたが、蛇にも息抜きが必要か。生き物ってことだな」


 コンヤックが出て来た。


「毎回、思うけど、病みつきになりそうだ」

「ほどほどにしとけ。貴族様じゃないからツケは受け付けないぞ」

「プフラ頼むよ。毎晩とは言わないけど週に1回」

「駄目だ。金を取れない奴には貸さない」


 ツタエートが出て来た。


「良かったぁ、凄いよ。神秘だ。天国だ。感動だ。こんな気持ちいいことがあったなんて。俺はこのためなら死ねる」

「のめり込むのもほどほどにな」


 精気を搾り取られているのに気づかないとはな。

 サキュバス魔道具『一夜の蝶の羽ばたき』を作ったアルチには後で金一封だな。


 ばれると思ったんだがな。

 意外とばれないものだ。

 灯りを暗くしているのも良いのかもな。


 隊長に呼ばれた。


「休みが終わったら、歩哨の任務だ」

「了解です」


 次の任務は見張りね。

 リリムは進撃して来ないから安全だと思うが、戦場では野良のアンデッドや、モンスターが寄って来る。

 それなりに危険な任務だ。

 今回のことで厄落としになったら良いがな。

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