第101話 肩書
「リリム、お前を復讐神軍の将軍にする」
「いまさらね」
「名付けに意味があるんだよ。肩書だって意味があると思わないか」
「そう言われると、なんだが強くなった気が」
さて、アンデッド達の様子はどうかな。
「うー、異常なしです」
ハイゾンビのジュークがそう言った。
あれニジュウだったか。
まあいいや。
アルチが、魔道具で邪気を吸い取ってる。
「邪気爆弾か?」
「それ以外に何があるっての」
「邪気爆弾を作るのに副作用とかないのか。こうやって作ってるってことは平気だってことだよな」
「邪気爆弾を作るのに必要なスキルは光魔法なのよ。光魔法の魔道具で邪気を圧縮封印する」
「光魔法に反発する邪気の特性を使っているんだな」
「ただ、出来上がると邪気が漏れるから、アンデッドでないと触れないけど」
「保険として肩書を付与してやろう。お前は復讐神の魔道具師だ」
「それって効果あるの」
「神が肩書をつけるんだぜ」
「まあ、あっても困らないから貰っておく」
『邪なる者の香炉』から湧き出る邪気を吸い取りでもしないと、ここら一帯は汚染された地域になるな。
俺の尽きない魔力で浄化するのもいいかもな。
それならここをリリムの領地として貰ってからが良いな。
戦いに勝てばそれぐらい分捕れるだろう。
シャランラが蜘蛛に布を織らせている。
まあ、蜘蛛がやることはないからな。
「精が出るな」
「ええ、スパイダーシルクはみんなに好評よ。やる気も出るわ。私、この戦いが終わったら、機織りとして暮らすの」
「好きにするさ」
「それにしてもアルチが邪気を吸い取る魔道具を作ってくれて助かったわ。あれがないとぞわぞわくるのよ」
「じゃあ邪気に負けないように、お前を復讐神の機織りとして任命する」
「謹んで受けるわ」
こうなったら、メッサとプリシラにも肩書をやらないとな。
メッサは城塞の訓練場で剣を振るっている。
鍛錬を欠かさないとは見上げた心意気だ。
良い肩書を付けてやらないとな。
「何?」
「肩書を付けて回っている」
「ふーん」
「お前は復讐神の筆頭騎士だ。励めよ」
「言われなくても鍛錬はする」
何となくメッサが強くなった気がする。
メッサの剣の素振りからも明らかだ。
神が肩書を与えると本当に効果があるんだな。
プリシラの肩書はどうするかな。
「プリシラ、お前どんな肩書が欲しい」
「ギルドマスター」
はっ、ギルドマスターになりたいのか。
別に良いか。
「お前を、復讐神ギルドのギルドマスターに任命する」
「少し変わった気がする。邪気が嫌でなくなったような。でも身に着けている光の魔道具も心地いい」
「復讐は負の念だから、邪気と相性がいいのか。だが、光が苦手というわけでもない。なるほどな」
名は神も縛るのかもな。
俺は復讐神を名乗ったからこうなったようだ。
となると、ウェイは英雄の神を名乗っているわけだから、そういう行動をとると強化されるのか。
まあ、神ではないから、そんなこともないか。
それに今のウェイは英雄と程遠い態度だ。
教会は神がどういう存在なのか知らないのか。
教会もかなり胡散臭いな。
さて、貴族軍に戻るか。
「プフラ、どこに行っていた。新しい隊長が呼んでるぞ」
「おう」
俺達4人が新しい隊長の下に行くと、新隊長は書類と格闘してた。
「すまん、士官が大量に死んだだろう。どこも人手不足でな。俺なんか事務屋なのに最前線に送られた」
「それは大変ですね」
当たり障りのないことを言った。
「大変なのはお前だ。お前達3人を隊員として、お前を小隊長とする。プフラ小隊だ。任務は斥候と裏工作だ」
「承りました」
死亡率が高そうだな。
「よ、プフラ小隊」
「おめでと」
「小隊長殿に敬礼」
3人は能天気だ。
どういうことか分かっているのか。
俺の城塞に潜入しろとかこれから言われるんだぜ。
中に入るのだって大変なのに、中はアンデッドがうじゃうじゃいる。
アンデッドは生き物の気配に敏感だ。
俺がいて良かったな。
俺がいなかったら、100回は死ぬだろう。
「では任務が下されるまで待機しているように」
「了解」
みんな敬礼した。
「プフラ小隊長の昇進祝いしないとな」
こいつら、俺に酒を用意しろって言わんばかりだな。
まあ、酒ぐらい用意するけど。
商人の肩書で何で斥候。
まあ、リリム達に商品を持っていって中に入れて貰えということなのかもな。
そのロールプレイをしますか。
リリムに商品を貢いで仲良くなる。
リリムは何を喜ぶだろうな。
嘘の話でもリリムが喜ぶ物を持っていきたい。
考えないと。
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