第99話 ウソツキー侯爵の始末
さてと、ウソツキー侯爵はどこにいますかね。
プリシラの指針剣があればな。
だが頼り過ぎも良くない。
リリムが頼まなかったのは自分の手で始末をつけたかったのかも知れない。
となると、俺とアンデッドはリリムにとって身内と見ているのだな。
俺が信用できなければ、リリムは何事も進まないだろうから、分からないでもない。
プリシラを動かすには何か交換材料が必要だ。
俺はプリシラにスキルを貸し出している。
だから協力的なのだろうな。
さて、使い魔の類は無理だな。
匂いとかの手掛かりがない。
そうだ。
念話を使ってみよう。
あれは一方通行ではない。
双方向で会話ができる。
これを拡大すれば、この戦場の人間の全ての念が拾えるはずだ。
「【念話】。くっ、負担がでかいな。ええとまずは男性に絞って、若い男を除外と。ええと年寄りは何人かいるな。いたウソツキー侯爵だ」
『早く逃げねば。何でこうなった。侯爵のわしが徒歩で逃げねばならぬとは』
ふんふん。
『早くお前の鎧を寄越せ』
兵士から鎧を奪って着替えるつもりだな。
ええと方向はあっちか。
ウソツキー侯爵の念は覚えたから、いつでも念話で場所が分かる。
俺はウソツキー侯爵がいるであろう場所に向かって駆けだした。
兵士の集団を見つけた。
その手前には鎧を脱がされて下着姿の男達。
当たりだな。
「これはこれは、侯爵閣下ではございませんか」
俺はその一団に近寄って話し掛けた。
「この馬鹿が。その名前を出すでない」
「失礼いたしました。安全な逃げ道がございます。案内いたしますが、どうしましょうか」
「それを早く言え」
「ではこちらです」
リリムと念話でやり取りしてアンデッドの空白地帯を作った。
そして行った先にはという感じだ。
「なるほど、アンデッドが出ないな。その方、なかなかやるな」
「下賤の者は逃げ道をいく通りも用意しておくものでございます」
ウソツキー侯爵を油断させるために適当に話を合わす。
「無事帰れたあかつきには褒美を取らせようぞ」
「それはもうたんまりとはずんで頂かないと」
「正直な奴は嫌いではない」
そして、リリム達がいる場所にウソツキー侯爵の一団を案内出来た。
「お前はリリン家の。騙したな」
「ウメオ、ありがとう」
「お前がウメオか。者どもここにいる者を全て討ち取れば、この戦いに勝ったも同然だ」
「夢を見るのは勝手だが、そう上手くいかないと思うなっと」
喋りながらウソツキー侯爵の護衛全員の首を刎ねた。
「くっ、金ならいくらでもやる。そうだ、リリン家の復興を約束してもいい」
「お断りよ。父母の無念、晴らさせてもらうわ。【斬撃】」
「あっ……」
ウソツキー侯爵はあっけなく散った。
まあ悪党といっても小物臭がある奴だからな。
こんなものだろう。
「ウメオ、ありがと。これが成せただけでも、あなたに付いて来た甲斐があるわ」
「まだ、貴族にもなってないし、領地もない。先はまだ長いぞ」
「そうね」
じゃあ、貴族軍に戻りますか。
3人の居場所も念話で分かる。
ほどなくして合流できた。
「偵察してきた。敵のいないルートは分かる。任せてくれ」
「おう頼むぜ」
「お前が女なら惚れてるところだ」
「告白できたら、プフラを結婚式には呼ぶよ」
「まだ、陣に帰ったわけじゃない。気を引き締めて行くぞ」
敗残兵の足取りは重い。
だが俺達4人の足は軽い。
なぜか希望に満ち溢れていた。
死亡フラグってのは活力になるんだな。
まあ、生きる希望みたいな物だから。
貴族軍に辿り着くと、隊長の戦死が知らされた。
名前も聞かなかった隊長よ安らかに眠れ。
士官がごっそり死んだので、軍の統制が取れない。
雑兵ばかりの集まりなので纏まりなどありはしない。
「軍の上の奴らは安全な場所でふんぞり返っていやがって」
「とくに虚栄有神様は死んで詫びてほしいぜ」
「そうそう、1回ぐらい先頭に立てよって話だ」
「不味い飯をなんとかしろよ」
「雨を止ませろ」
「とにかく勝てる作戦を寄越せ」
「無能は死ね」
もう言いたい放題だ。
上の不満が噴出すること。
俺も一生懸命悪口を並べ立てた。
士気はもう最低なのは言うまでもない。
次なる作戦としてはあれだな。
大脱走。
戦うのが嫌な兵士を根こそぎ逃す。
士官がごっそり抜けた今なら可能だと思う。
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