第4章 戦争編
第90話 宣戦布告
「我々は、亡き魔王の配下であるウメオに対して宣戦布告する」
王都からの使者が来て、そう述べた。
王都は俺のことを裏切り者の魔王配下として扱うつもりだ。
そうしないと大義名分が立たないのだろう。
あくまでも裏切り者。
地方領主は俺を魔王として扱っている。
まあ武力をみればそうなるよな。
「ウメオ、どうするの?」
返答をどうするか考えていたら、リリムが心配そうに聞いてきた。
大事になるのが嫌なのだろう。
だが、俺がウザリとイヤミィを殺したのは知れ渡っているだろうし、ニックとウェイも殺されたくはないから軍を展開するよな。
「そりゃあ、戦うために軍を率いてきたんだから戦うさ」
「大戦になるわね」
「まあそれは別に良い。問題は相手の兵士を神経戦でいかに減らすかだな。いやいや従っている兵士には撤退して貰いたい」
「こっちの大義名分が必要ね」
こっちの状況は魔王か邪神の陣営だと取られても仕方ない。
しかし、俺としては邪神サイドに与したと思ったことはない。
俺は俺だ。
オファーがあって魅力的ならどこかの神の陣営に入るのもやぶさかではない。
俺を紹介するためのキャッチコピーみたいなのが必要だ。
「俺は復讐の神を名乗ろうと思う。だからアンデッドだ。死者は復讐するものだろう。復讐に正邪は関係ない。貴族や王族だって復讐はする。悪人も善人もだ。だから復讐の神」
「教会を敵に回すわね」
「だが、俺に対してウェイとニックがやったことを言えば、復讐しても不思議ないだろ」
「まあね」
考えは決まった。
「返答は。俺は復讐の神だ。神に対して宣戦布告など頭が高いにもほどがある」
「よりによって神を騙るとは」
「赦されるだろ。剣の得意な奴を剣の神とかいうだろう。俺は復讐心で魔王を倒し、こうしてアンデッドの軍団を率いて偽勇者に立ち向かう。復讐の神を名乗ってもいいはずだ。天罰を下したいなら下すがいいさ」
「ふん、ではそのように伝える」
使者が去って行った。
さて、ウェイ達の悪行を世に知らしめないとな。
俺は魔王戦の歌を作った。
対峙する勇者一行と魔王。
だが、勇者は偽勇者だったのです。
雑用係を生贄に逃げ出す勇者。
だが、雑用係は復讐心を持ったのです。
勇敢な雑用係を讃えよ。
彼こそが真の勇者。
真の魔王討伐を讃えよ。
彼こそが復讐の神。
こんな感じの歌だ。
アンデッドに歌わせて進軍する。
遂にウェイの軍と俺の軍が睨み合いする形になった。
「プリシラ的にはこの戦いはどうなんだ」
「神を名乗って軍を率いるのであれば、全ての法律は適用されないと思うよ。神に法律が適用されるのを認めるほど傲慢じゃない」
「超法規的措置って奴かな」
「モンスターにも法は適用されないし」
モンスター扱いか。
まあいい。
そうだよな神が人間の法律を気にする必要はない。
敵の軍を観察する。
王都の騎士団と守備兵。
おそらくニックが率いているのだろう。
王族派閥の貴族軍。
こっちは烏合の衆だな。
みた感じ統制がとれているとは思えない。
数は少ないが学園都市の生徒兵もいるな。
こちらはロイヤルガーデンの残党かな。
かなり痛い目見たと思ったが、まだ足りないらしい。
教会の兵はかなり大人数だ。
教会は神託を無視したんだな。
いいや都合よく捻じ曲げたのか。
噂を拾いに行ったプリシラが帰ってきた。
「ウェイも神を名乗るみたい。自分こそが真の勇者で魔王で神と名乗っているようね」
「そんなことをしたら、神が庇ってくれないだろう。天罰が恐ろしくないのか」
「恐ろしいみたい。酒の量が増えて、ご乱行が目に余るそうよ。軍出入りの商人まで話が聞こえてくるのだから相当ね」
「恐ろしいのならやるなよと俺なんか思うな」
「後には引けないから。王族が優遇してくれてるのだって魔王討伐の功績があるからよ。あれがないとなったら詐欺師」
「まあ、ペテン師野郎というのは確かだが。ここで俺が神の奇跡とかやれたら、形勢は一気に傾くな」
ひとつ、やってみるか。
「【土魔法、城塞建築】」
土と石で城塞が出来上がっていく。
魔力が減っている感がないので、際限なく大きくなっていく。
アンデッドの軍を収容できる範囲で止めておいた。
ウェイはこれをみてどうするかな。
ウェイも土魔法使いを動員して城塞を作り始めた。
だが、その規模は砦だ。
一気には作れないと悟って何日もに掛けてやるらしい。
この様子をみて貴族軍の何割かが減った。
負け戦は嫌だと敵前逃亡したらしい。
王都から連れて来た守備兵にも動揺が広がっているようだ。
うろたえないのは教会軍。
一番奇跡に敏感かと思ったが、生贄スキルとか総動員したと思われたかな。
とにかく教会軍は健在だ。
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