第74話 殺し屋到来

 むっ、殺し屋か。

 夜、猛毒ネズミが報せにきた。

 庭に出ると庭は真っ白な世界。

 吐く息も白い。

 殺し屋の仕業らしい。


「名乗っておくわ。雪女よ。あんたを殺す名前を刻みつけて死ぬのね」

「御託は良い。掛かってこい」


「【氷魔法、超低温】【氷息吹】」


 雪女と名乗った殺し屋は氷のブレスを吐いた。

 ただでさえ寒かった庭が更に寒くなる。


「寒いな。暖かくしてやるよ。【火魔法×6、火炎旋風】」


 火魔法で、炎の竜巻が出来て庭の温度が上がる。

 ちょっと熱いか。


「【氷魔法、氷の爪】」


 雪女は氷に爪を振りかざして襲ってきた。

 俺はそれを素手で掴み取った。

 俺の手は凍り始め、やがて全身が凍り付いた。


 お遊びはここまでだ。


「【賠償】」

「寒い」


 雪女はそう言うと、唇を紫にして震えた。


「【氷魔法、棺】」


 雪女は氷の棺に閉じ込められ凍死した。


「ステータスオープン」


 氷魔法、氷息吹、氷耐性の3つのスキルが増えている。

 氷耐性があったから、自分は寒くなかったのだな。

 そして賠償で取られたから凍死した。


 氷息吹は魔道具にしたら、夏にもってこいだ。

 アルチに作らせよう。


 氷耐性の防寒着なんてのもいいな。

 これもありだ。


 ただ、氷息吹はともかく、防寒着は温暖なこの辺りでは売れない。

 流通が発達してないのも考え物だ。


 雪女をアンデッドにしたら、アイスコープスというアンデッドになった。

 肌が透き通るほど白くて触ると冷たい。


 氷を操るアンデッドらしい。

 こいつをメイドにして働かせるか。

 今の家もかなり汚くなった。

 リリム達が積極的に掃除しないからだ。


「雪女、お前は今日からスノーを名乗れ。そしてメイドをしろ」

「はい」


 スノーからは冷気が下に流れている。。

 まあ、メイドとして働かせるには良いだろう。


 さあ、寝直すぞ。

 朝起きると屋敷はピッカピカになっていた。

 ただ、淹れたてのお茶が冷え冷えだ。

 スノーには料理とかは無理だな。


 アイスクリームとかなら作れるかも知れないが。

 イヤミィを片付けてまた旅に出る時は、旅の一座のアイスクリーム売りをやらそう。


 猛毒ネズミがモグモグと何かを食っている。

 げっ、Gじゃないか。

 見るとGがドアの隙間からなだれ込んでくるように入って来る。

 そしてドアが開き、Gを纏った男が現れた。


「【賠償】。よくも精神的苦痛を与えやがったな」

「痛い。こら齧るな。あがぁ」


 Gを纏った男はGに齧られて骨になった。


「【氷息吹】」


 Gは凍らされて固まったように動けない。

 そして、Gは猛毒ネズミ達の胃袋へ消えた。


「ステータスオープン」


 虫操作、蟲毒のスキルが増えていた。

 このスキルがあったからGに食われなかったのか。


「スノー、猛毒ネズミ、Gの残りを排除しろ。一匹たりとも逃がすなよ」

「きゃゃ!」


 リリムの悲鳴が聞こえた。

 駆け付けるとGを指差して震えている。


「服に入った」


 涙目で訴える。

 俺はそうっとリリムの服をめくる。

 Gの黒い体がちらっと見えた。

 素手で掴むのは嫌だ。


 くそっ。

 俺はリリムの服を力任せに千切って剥がした。

 下着姿になるリリム。

 Gは下着の中に入った。


「ちょっと、駄目。そこは駄目」


 下着を剥ぎ取るのは流石に抵抗感がある。


「【虫操作】」

「あっ、駄目。動かないで、あああ」


 リリムが悶える。

 そしてテカテカして湯気が上がっているGが下着から出て来た。

 助平な奴だ。

 猛毒ネズミに食われてまえ。


「リリム、諸悪の根源は去ったぞ」

「ちょっと、もっと上手くやれなかったの。物凄く恥ずかしかった。虫にあそこを触られるなんて」

「災難だったと思えよ。野良犬に噛まれたでもいい。そうだスノーがアイスを作ったんだ。それ食って気分を直せよ」

「スノーって誰?」

「アンデッドのメイドだ。氷女だぞ」

「お風呂に入りたい」


「スノーにはお湯の準備は無理だな。だが水は張れる。水は火魔法で温めろよ」

「きゃー」

「なんだ?」


 リリムは手で体を隠した。


「下着姿見られた」

「今更だろ。Gにはチョメチョメされたしな。それを見られたことに比べたら」

「出てって」


 全く、そのぐらいで怒るなよ。

 助けてやらなかったら内臓をGに食いちぎられていたのかも知れないからな。

 そのぐらいあのGは凶悪だ。

 蟲毒スキルは伊達じゃない。

 虫を共食いさせて強化できる。


 俺は使わないと思うがな。

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