第72話 第3回戦

 今日は第3回戦。

 これが終われば、ベスト8が出揃う。


「構えて。では始め!」


 俺は氷魔法で玉を作ったその上にひょいと飛び乗る。

 足を滑らせたふりして、玉乗りする。


「その姿には騙されないぞ【火魔法、散弾】」

「危ないって、おっとっと」


 俺の乗った玉はあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。

 そして、遂に俺は玉から滑り落ちた。


 怒ったふりして、氷の玉を蹴る。

 氷の玉は、爆発して飛び散った。


「【土魔法、盾】」

「玉乗りはこりごり」


 そう言ってから、野球ボールほどの氷の玉を4つだしてジャグリングしはじめた。


「ああ」


 氷の玉のひとつが明後日の方向に。

 俺は足でその玉を受け止めようとして、キック。

 凄い勢いで氷の玉は対戦相手に向かう。


 そして石の盾を粉々に砕いた。

 ジャグリングしている氷の玉のひとつが俺の足元に転がる。

 俺はそれを踏んずけてずっこけた。

 空中に投げる予定の氷の玉が、対戦相手に向かって飛ぶ。


「ありゃ数が減っちまった」


 氷魔法を発動して氷の玉を100個ぐらい増やす。

 そして、氷の玉をジャグリングできずに、全部床に落とした。

 そして、コケまくって対戦相手の方へ飛んで行く。


「おっと。危ない」


 氷のステッキを出して、支えようとして対戦相手に突きを放つ。


「あわわわわ」


 突きの連打が止まらない。

 対戦相手は氷のステッキの突きを股間へもろに食らって、死亡判定された。


「だから、芸をしている時は邪魔しちゃ駄目だって」


 笑いが起こる。


「世の中笑っていきたいものです! 笑いを阻害しているロイヤルガーデンなる組織があります! 被害に遭われた方はこのピエロまで囁いて頂ければ、ピエロが笑いに変えて差し上げます! ではごきげんよう」


 俺は右腕を胸の前で折り、仰々しくお辞儀してみせた。


 教室に一人でいたら、ドアの隙間が手紙が差し出された。

 さっそく訴えた人がいたのかな。


 手紙にはカンニングの手伝いをしろと強制されましたとある。

 あー、どうするかな。

 講師とかに訴えても無視されるような気がする。

 まあ、嘘判別スキルを使う段階までことを進めれば問題はないが、訴えても握りつぶされたらそこまで行かない。


 ふん、こんなの洗脳しちまえばいい。

 俺はカンニングを手伝えといったであろう生徒に洗脳魔法を掛けた。


「カンニングするのを手伝えと言ったのか?」


 一応聞いておかないとな。


「はい、言いました」

「じゃあ、その事実を大声で触れ回れ。それだと注目を集めないかも知れないから裸でやれ」

「はい」


 生徒が裸になって大声で触れ回るのを見物人のひとりとなって見ていた。

 講師や教授達が、生徒を止めに来たので、洗脳魔法を解除する。


 とうぜん、講師が俺の所に話を聞きに来た。


「何かしたかね」

「ええとカンニングしたと本人が白状したので、その事実を明らかにするように言いました」

「ほう。で全裸になって叫んだと」

「目立ちたかったんじゃないですかね。ピエロとしては全裸ってのは芸として下品だと思いますが」

「嘘判別スキルに掛けてもいいかね?」

「もちろん」


 嘘判別スキルがあるが嘘スキルがあるので無効化される。

 それにほとんど本当のことを言ったからな。


 俺の所には手紙がたくさん寄せられた。

 ロイヤルガーデンは悪いやつらだ。

 こんなにも悪行を重ねているとはな。


 友達が退学に追い込まれたA君からやってみよう。

 とりあえず、洗脳魔法。


「生徒を退学に追いやったと内部告発があった。本当か」

「本当です」

「判決を下す。退学届けにサインして出して来い」

「はい」


 退学がなったところで、洗脳魔法を解除する。


「あれっ、俺は何をしてたんだ。何で校門の外に。授業に戻らないと。カ、カードがない」

「ぷぷぷっ、慌ててる」


 俺はそれをニヤニヤ眺めた。


「おい誰か。カードをなくして入れない」


 警備員がやって来た。


「お待ちください」


 そして、しばらくして。


「あなたは自主退学したと記録にあります。何人も生徒を退学に追いやったという理由でね」

「何でそれがばれた」


 お前が退学届けに詳細なことを書いたんだよ。


「お引き取りを」

「あれは間違いだ。復学の手続きを」

「無理だと思います。私が聞いた話では、悪事の裏を取って証言が得られたそうです。しつこいようなら、警備兵を呼びなさいと言われました」

「くそっ。いったい誰の仕業だ」


 後ろの方で見ている俺だよ。

 そのうち俺に行きついて復讐にくるかな。

 来たら面白いけど。

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