第68話 第2回戦

 今日は本戦の第2回戦。


「では構えて。始め!」


「【火魔法、火炎旋風】」


 おっといきなり大技だな。


「【虚無魔法】」


 俺は大きく息を吸い込む動作をする。

 炎の竜巻は虚無魔法に吸い込まれるようになって消えていく。


「あっ」


 ぷーっという音が鳴り響いた。

 もちろんおならの音のおもちゃだ。


「【毒魔法、毒ガス】」


 対戦相手は青くなって喉をかきむしった。

 そして石舞台から弾き飛ばされた。

 死亡認定されたようだ。


 笑い声が会場に溢れる。

 みんな臭くはないのに鼻を摘まんで手で仰いだ。


「今回も笑ったぜ。屁は反則にならないのか」

「ならんだろ。出物腫れ物所嫌わずだぜ」

「そうだな。それにしても、お前、女に人気がないな」

「いや、影じゃ大笑いして俺に好意を持っている」


「そういうことにしておいてやるよ」

「そんなことを言うと女を紹介しないぞ」

「うそうそ、みんなお前が大好きだ」


 ロイヤルガーデンのメンバーの視線が俺を殺しそうなぐらいだ。

 こりゃ、近々襲撃があるな。

 わざと隙を作るか。


 俺は放課後、図書室で暗くなるまで本を読んだ。

 俺の他には誰もいない。


「くひひひ、いるんだろ」

「何で分かった」


 男達が本棚の陰から現れた。

 なんで分かったかと言えば、ただ思わせぶりに言ってみただけだ。

 誰もいなかったら恥ずかしいが、誰も聞いていないなら、気にする必要もない。

 結局、どっちに転んでも勝ちだ。


「ピエロのこの丸い赤鼻が教えてくれた」

「匂いか。スキルじゃないとすれば、お前、裏の世界の住人だな」

「俺は笑いの世界の住人だ」

「戯言はここまでだ。掛かれ」


 男達が武器を手に迫る。

 さて、どうしようか。

 あれかな。

 幻影魔法でハトを出した。

 俺は暗闇に包まれ男達の間を駆け抜ける。

 すれ違う間に一撃を加えるのを忘れない。


「幻影に惑わされるな」


 レベルが違うんだよ。

 ハトの幻影は羽毛の霧となった。

 もはや俺以外は視界ゼロ。


 ふふっ、容易い奴らだ。

 わざわざスキルを貢にくるとは。


 男達は全員を叩き伏せた。


「【賠償】ステータスオープン」


 結構良いスキルを持ってたな。


 毒魔法

 一撃必殺

 消音

 貫通


 身体強化を除けば、めぼしいのはこれだ。

 一撃必殺はお笑いスキルで名高い。

 ミスばっかりで、必殺の一撃がなかなか当たらないと評判だ。

 もっともレベルが低ければという但し書きがつく。

 魔王とかが持っていると途端に強敵になるスキルだ。

 俺にとってはとっても使えるスキルだ。


 貫通はほとんど意味がないな。

 貫通なんか今の俺のレベルだと、あってもなくても関係ない。

 ほとんど貫けるからだ。

 だが貸与するには良いスキルだ。


 消音はまあまあだ。

 だが応用範囲は広い。

 潜入任務とかには使える。


 本で知ったんだが、結界魔法と消音で、沈黙魔法の効果が出せる。

 まあ下位互換なんだが。

 ピエロの戦いネタとしては使える。


 洗脳魔法を掛けた女子生徒を呼び出す。

 そして服を切り裂いた。


「こいつらはお前をレイプしそうになった。だが奮戦して叩きのめした。いいな」

「はい」


 男達は学園の警備員に暴行の現行犯で逮捕されていった。


「【賠償】」


 何の賠償だというと、俺を襲うように男達に命じた賠償だ。

 うほっ、金貨がたくさんだ。

 呼び出した女生徒に金貨30枚を握らす。

 洗脳魔法を掛けているとはいえ働いてくれたお礼だ。

 レイプ未遂とはいえ、評判が落ちるからな。

 その慰謝料みたいなものだ。


「好きに使え」

「はい」


 女生徒が帰っていく。

 ロイヤルガーデンの止めを刺したいな。

 さて、どうしよう。

 まあ、洗脳魔法に掛けるって手もある。


 だが、今まで奴らの悪行で泣きをみた人達がいるはずだ。

 そういう人の仇を取るには。

 そうだ。


 反ロイヤルガーデン組織を立ち上げよう。

 そして悪行の証拠を押さえる。

 で告発して罪を償わせる。

 嘘判別があるから証拠は証言だけで良い。


 告発する勇気をもって貰えればそれでいい。

 となると3回戦で勝った時に宣伝しよう。


 それと金だ。

 証言してくれた人には多額の金を出す。

 金なら余っている。

 金貨1000枚ぐらいは少しも痛くない。


 とりあえずこの方針でいこう。

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