第66話 ロイヤルガーデン

 測量機は売れた。

 こんな原始的なので良いとは。

 だが売れたと言っても30台だ。

 測量に関わる人間は少ない。


 学園を歩いていたら、緑服の奴がついて来いと言った。

 面白そうなのでついて行く。

 連れて行かれたのは日当たりの良い一室。

 丸テーブルがあり、みんな優雅にお茶を飲んでいる。


「魔法戦を辞退しろ。なに代わりの選手はこちらで用意する。ただとは言わない。それなりの謝礼はする」


 貴族らしい男にそう言われた。


「えっと、あっしにも矜持ってもんがありまして、ずるはいけない。トリックは良いんですがね」

「ピエロ風情が。我々が何者か知っての発言か」

「観客の皆様で」

「狂っているのか。とぼけているのか。我々はロイヤルガーデン。緑の服から分かるように院生の集まりだ」


 うん、ロープタイが緑だから院生だな。

 そうか緑服の奴らは院生のグループか。

 興味がなかったから調べなかった。

 絡んでくるようなら、賠償を取ればいい。


「さいですか。それがあっしと何の関係が」

「さらに言うなら、この会を作ったのは王族だ。由緒ある集まりなんだぞ」

「へぇ、さようで」


「こいつ、殺したらどうかな」


 別の院生が口を出した。


「いいや、こいつは不気味な奴だ。まず第一に背後に誰がいるのか分からない。だが、商売で大儲けしている。ピエロの才覚とは考えられない」

「どうせ下っ端だろう。殺そうぜ」


「あー、辞めておいた方が。警告はしましたよ」

「ふん、怖気づいたか」

「やっちまおう」


 おうとの声が多数上がる。

 みんな椅子から立ち上がり構えた。


 馬鹿な奴らだ。

 掛かってこいとジェスチャーした。


 詠唱が始まる。

 遅いんだよ。

 俺は当て身を食らわせながら、彼らの中を泳ぎ回るように動いた。


 一瞬で半数が戦闘不能になる。

 そして、目標を失った魔法が飛び交った。

 おいたは駄目だよ。

 優しく気絶させてやった。


「【賠償】、ステータスオープン」


 大量だ。

 有用なスキルがごろごろある。


 火魔法×6

 土魔法×4

 電撃魔法×3

 治癒魔法×2

 魔力操作×5

 魔力視

 水魔法×2


 これを得た。

 アンデッド達に魔法を貸与するんでもいいし、いろいろと使えるだろう。

 実に儲けた。

 ルンルン気分で教室に帰る。


 そして、学園の警備員に囲まれた。

 あいつらが訴えたのに違いない。

 さてなんて言って惚けるか。


「大人しくしろ。凶悪犯め。禁忌スキルなぞ使いやがって」

「何の事です?」

「惚けるか。ロイヤルガーデンのことだ」

「ずっとここにいましたが。なあみんな」


「ええ、いましたよ」

「授業を受けてました」

「ピエロなんで間違いありません」


 生徒が証言する。


「そのピエロの口調とかどうでした。私と違う偽者のピエロじゃないですか」

「おい、聞いて来い」


 そして。


「聞いたところ。口調が違うようです。自分のことをあっしと呼んでいたようです」

「ですよね。私は自分は私と呼んでます。おー嫌だ嫌だ。きっと私が本戦を勝ち進んでいるものだから妬みですね」

「すまなかったな。たしかにピエロの恰好は目立つが、逆に誰でもなりすましが出来る」

「分かればいいんです」


 警備員は去っていった。

 俺のアリバイを証言した生徒は洗脳魔法で洗脳してある。

 俺に嫌がらせをした奴らだから、洗脳もやむなしだ。

 賠償スキルでスキルを取らなかっただけましなので感謝してほしいぐらいだ。


 いもしない、俺の偽者騒ぎが始まった。

 洗脳した生徒にあそこでピエロを見たとか言わせた。

 警備員は見事騙されて幻影を追っている。

 ご苦労なことだ。


 ロイヤルガーデンのうちの一人に貸与という形でこっそりとスキルを返してやった。

 そしてそいつが偽ピエロだと噂を流した。

 一人だけスキルを失ってないので、疑いはマックスだ。


 そいつは殺された。

 殺される前にスキルを返してもらったのは言うまでもない。

 ご愁傷様。

 そして、偽ピエロ事件は幕を下ろした。


 俺には尾行がつくようになった。

 疑いの目は無くならない。

 まあそうだよね。

 敵もそこまで間抜けじゃない。


 殺し屋とか雇ってくるかな。

 来たらスキル奪えるから良いんだけど。

 面白いスキルが手に入ることを祈る。

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