第62話 商売

 魔法関連の本を買い漁り過ぎた。

 目立ち始めているってことが不味い。

 その金はどこから出てるとかショウに聞かれた。

 パトロンからだよと言ったが、限度がある。


 商売して辻褄を合わせるか。

 何を作ろうか。


「アルチ、画期的な魔道具を考えろ」

「ええっ、そんな物が作れたら、禁忌魔道具職人なんてやってない」

「それもそうか。うんうん、じゃああれだな」


 電化製品をパクるか。


「あれって何?」

「リモコン付き魔道具だ」

「へっ、リモコン?」

「魔道具を遠隔操作するんだよ。念話スキルがあるから余裕だろ」

「作れなくはないけど。それって便利なの」

「ああ、立ち上がるのがおっくうな時があるんだよ。例えば灯り。布団に寝てから灯りを消したいだろう」

「なるほど。こんな簡単なことをどうして思いつかなかったのかな」

「ものぐさは悪徳。教会の教えだろ」

「まあそうだけど、便利とものぐさは違う」


 灯りと、冷房のリモコン付き魔道具を作ってみた。


「さあ、売るぞ」

「売るんだったら、商業ギルドのギルドカードが要る」

「じゃあギルドに加入しようか」

「最低ランクのギルドカードは金貨50枚よ」

「そのぐらい軽い」


 儲ける必要はないんだからな。

 儲かっているふりで良い。


 商業ギルドに入ると、好奇心がこもって目で商人達とギルド職員達が見てくる。

 まあピエロが商売するのはおかしいよな。


「ギルドに入りたい」

「えっ、あなたがですか?」

「これでも商品のネタはたくさんあるんだ。ここに銅貨が入ったガラス瓶があるだろ。はっ」


 銅貨が割れる。


「この手品が何か?」

「こういうのか一般人にも出来るように道具を売る。こういう商品を取り扱っている奴なんかいない」

「そうですね。新商品と言えます」

「そこでだ。商業ギルドは類似品が出たら仲裁してくれるよな」

「まあそうですね」

「大手の商会に俺の商品を真似されなきゃ良い。でギルド登録だ。もちろん登録料はパトロンが払ってくれる」

「そういうお話なら納得できます。どのランクになされます」

「最低のFランクだ」

「金貨50枚、頂きます」


 適当にほらを吹いて登録は出来た。

 さてと、リモコン付きの魔道具をどこで売ろうか。

 露店で売るのはアルチに任せる。

 だが、それだと大量に売れない。


 大量に売るなら、大商会だな。

 だが、伝手がない。


 俺はリリムの帰りを待った。

 待つ間、魔道具を量産したのは言うまでもない。


「リリム、護衛して、商人と仲良くなったか」

「そりゃあね。私らの実力はAランクよ。Eランクの冒険者とは違うわ。トラブルにも迅速対応で、評価も満点よ」

「魔道具を作ったんだが、営業して売り込んでこい。契約取るまでは帰って来なくていいからな」

「ちょっと、そりゃないでしょ」


「領主になるつもりなら、このぐらいの営業は鼻歌混じりでこなせよ」

「分かったわよ。素早く契約をまとめてあなたをぎゃふんと言わせてやる」


 リリム達が出て行った。

 そして鼻息荒くリリムが帰ってきた。


「どうよ。契約を取ってきたわ」


 俺は契約を確認した。


「どれどれ。あー、ぽったくられたな。これだと俺の利益はほとんどない。なんて商会だ?」

「ええー、あんなに苦労したのに。ボッタクリー商会よ」


「まあ良くやった。今回必要なのは品物を大量に売ったという実績だ。どれだけ俺が儲かったかなんて普通なら分からないからな。これで変に目立つ事がない」


「納得いかないわ。リベンジよ」

「まあ頑張れ」


 たぶん無理だろう。

 商人のネットワークは馬鹿に出来ない。

 他の商人にもカモ認定されているに違いない。

 少しでも高く売れたら褒めてやりたい。


「これだから、商人は油断ならない」


 アルチが憤慨してる。


「いいんだよ。目的を達成できたから」

「私の苦労は何だったの」

「ご苦労様。いいカモフラージュになったさ」


 さて、ギルドにホラを吹いて手品の道具を作ると言ったからそのアリバイもするか。

 電撃魔法を使って、電磁磁石を作り、磁石を作った。


 磁石は手品の種としては色々と使える。

 宴会芸で覚えていたのが役に立った。


 方位磁針も作ってしまった。

 こっちは大商いになるから、リリムに売らせるのは駄目だな。

 俺がボッタクリー商会に話をつけよう。


 その前に。


「【賠償】」


 金貨が零れ落ちた。

 ぼったくりは駄目だよ。

 特に俺からは許さない。

 今頃その商会は、なくなった金貨を盗んだ奴を探すので大忙しだろうな、


 さあ、方位磁針をたくさん作って、リリムの敵討ちだ。

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