第58話 魔法戦の情報
学園初日だ。
学園の入口で扉にカードを差し込む。
残り日数29日の表示が出た。
扉のロックが解除されたので学園の教室があるエリアに入る。
研究室とかもあるが、ロックされていてまるで企業の開発室だ。
初級魔法学の教室に入る。
「俺ってさ、イヤミィ学園長に憧れてこの学園の聴講生になったわけだけど。学園長の現状を教えてくれる? ただとは言わないよ。銀貨1枚払う」
男子生徒を捕まえて、俺はそう持ち掛けた。
「えっ、ピエロ。ピエロが憧れても問題ないか。うん、いいよ。俺が知っていることを教えてあげる。まず魔王討伐の呪いは完全に解けたみたい。元のレベル以上に上がったって」
「それは何よりだ。でもレベルが上がるのが早いね」
「それなんだけど、秘術を開発したらしいよ。学園長と親しい教授が我が事のように自慢してた」
「ふーん。どんな秘術かな」
「きっと凄いと思うよ。ただ自慢してた教授もどんなものなのか知らないんだって」
「学園長と会いたいとしたら、どうしたら良いかな?」
「それなら、もうすぐ魔法戦があるよ」
「それ詳しく」
「魔法戦てのは怪我をしても平気な結界の中で魔法で戦うんだ」
「ええと殺しても死なない?」
「うん。ただ意識を失ったり死んだりすると、結界の外に出される」
「便利だね」
「この学園にしかない設備さ」
「で、その魔法戦で勝つと学園長と会える」
「うん、それどころか優勝者は学園長と手合わせしてもらえる。そこで学園長を倒すと、学園長になれるみたいだけど、いままで勝った人はいないよ」
「魔法だけと言ったかな。身体強化スキルとかはパッシブだろ、そこんところどうなっているの?」
「魔法で戦うけど、パッシブスキルは禁止されてない。付与魔法とかあるからね。そういうのを使えば互角さ。ただ殴ったり、蹴ったり、武器を使ったりは禁止。攻撃はあくまで魔法のみ」
となるとリリム達に貸してた魔法スキルを一時的に返してもらわないとな。
「ありがと」
俺は銀貨1枚手渡した。
おっと、講師が来た。
「今日はテキスト22ページからです」
俺は静かに教室を出た。
ええと、魔法戦の参加申し込みは?
廊下の掲示板に参加申し込みは事務局までと書いてある。
事務局に行って参加手続きをする。
講師以上は予選免除らしい。
学園長の座を狙う教授も出るのかな。
俺には関係ないことだ。
だが、攻撃が魔法だけだと心許ない。
これまで禁忌魔法以外ほとんど魔法を使ってないからな。
禁忌魔法は反則負けになるだろう。
そこは聞かなくても分かる。
防御に武器を使うのはどうだろう。
ルールブックがあったので買う。
武器を使った防御は認められるらしい。
だが、そういうのに頼るとブーイングが起きるので気をつけましょうとも書かれている。
盾なんかも魔法で出せということらしい。
氷魔法が要るな。
シャランラから返してもらおう。
魔法で作った武器による攻撃は認められている。
なら楽勝だ。
氷魔法で剣を作って力技に頼ればいい。
拳に魔法を纏わせるのはどうだろう。
肉体の接触がなければセーフと書いてある。
さらに勝てる要素が増えたな。
氷でガントレットとブーツを作り殴る蹴るができる。
ルールブックを全部読み終わったら、午前の授業が終わってた。
午後は実技をやるらしい。
使える魔法は光魔法しか持ってないのでパス。
借りた家に帰ると、リリム達がぐーたらしてた。
「お前ら、暇だったらギルドに行って依頼でも受けろ。それと、シャラランラ、氷魔法返してもらうぞ」
「ギルドには行ったけど、学生が優遇されているのよね」
「どんな具合だ」
「素材の買い取り額が倍も違うの。生活依頼も一緒。あんな金額ではやる気を失うわ。それに朝早く行かないと良い依頼は全部学生が持っていってしまうみたい」
「早起きしたらどうだ」
「依頼取り競争は壮絶だと受付嬢が言ってたわ。例外は護衛依頼。学生は遠征してたら授業が受けられないものね」
「じゃあ近場の護衛依頼を受けろよ。隣町までだったら往復で4日ぐらいだろ」
「そんな、Eランクがやるような依頼を受けろっての。屈辱だわ」
「我慢しろ」
「はいはい」
リリム達3人が重い腰を上げた。
アルチはと部屋を覗くと、アンデッドに装備させる禁忌魔道具を作ってた。
プリシラは何を調べているのか部屋にはいない。
まあ、あいつのことだから、イヤミィの裏でも取っているのだろう。
確たる証拠がないと処罰できないと言ってた。
口頭でも証言があれば処罰は可能だ。
嘘判別スキルがあるからな。
プリシラが聞いていれば問題ない。
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