第3章 魔法学園編

第57話 聴講生

 魔法学園都市に到着した。


「ギルドカードか何かあるか?」


 プラムマンのギルドカードはあるがそれは出さない。

 俺はピエロの化粧をしている。


「旅芸人一座でして」

「旅芸人が魔法学園になんの用だ?」

「芸に行き詰ってまして、魔法を学んだら幅がでると思った次第で」

「よし得意な芸をやってみろ」


「取り出したるは、ガラス瓶。で銅貨を一枚拝借」

「これでいいか」

「ガラス瓶の中に落として下さい」


 門番は銅貨を財布から取り出して瓶に落とした。

 チリンと音を立てて銅貨がガラス瓶の中に入れられる。

 俺はコルクの蓋をしっかりと締めた。


「何の仕掛けもありません」


 そう言って瓶を門番に渡す。

 門番はガラス瓶を振ったりして確かめた。


「では」


 俺は瓶を受け取ると手のひらに置いて前に突き出した。


「よおく見て下さいよ。はっ」


 小声で次元斬を発動。

 銅貨は真っ二つになった。

 俺が瓶を振って門番に手渡す。


「凄いな。どうやったんだ。割れている銅貨をすり替えたってのは分かるが、どのタイミングだ。銅貨には触ってないし。うーん分からん」

「どうです。芸人だと認めてくれますか」

「おう、滞在許可を出そう」


 俺は書類にプリュネオムと記した。

 こんな偽装工作が通じるとは思ってないが、教国の国境を出てからプリシラに追っ手の有無を確かめて貰って、いないのを確認してる。

 教国としては国内から厄介払いできてひとまず良しとしたらしい。

 リベンジする機会は伺っているはずだが、普通にやっても勝てないのは教国も分かってる。

 勝てる算段を練っていると思われる。


 さてと、魔法学園都市をまずは観光しますか。

 魔法学園都市は6角形をしてて、都市の外縁には城壁がある。

 中央にまた6角形があり、これが魔法学園だ。

 魔法学園の中央には7つの塔。

 中央の塔が学園長の塔だ。


 この都市の善良な市民にはなるべく迷惑を掛けたくない。

 次元斬は放てば学園の建物は全て壊せるだろう。

 そうすると生徒にも被害者が出る。

 生徒に対しても俺は恨みがあるわけではない。

 なるべく穏便にいきたいものだ。


 だからアンデッドを都市中に放つなんてこともしない。

 情報収集してゆっくり行動するさ。


「これ美味しい」


 リリム達は完全に観光気分だ。

 屋台から食べ物を買って、ぱくついてる。


「殺し屋が来るかも知れないから、あまり気を抜くなよ」

「はぐはぐ、分かってる」


 ガイドを雇うことにした。


「ええと、下宿の確保と魔法学園に入りたい」

「その化粧は?」

「芸人なんだよ」

「まあ、ひとそれぞれです。下宿は学生相手の不動産屋ですね。魔法学園の入試は半年後です」

「魔法学園は見学とかで入れないのか?」

「卒業資格が要らないのであれば、聴講生という手があります。聴講生は高いですよ」

「金は問題ない」

「ではお任せを」


 不動産屋に案内された。


「お客さん、今は時期が悪いですな。学生が卒業するのは7ヶ月後です。いま空いている物件はいわくつきか、割高のしかありません」

「割高のでいい6部屋空いているアパートか貸し家で頼む」

「となると貸し家ですね」


 家に案内された。

 8部屋だったが、余る分には問題ない。


 そして、俺だけがガイドに連れられて魔法学園に入った。

 事務室に到着。


「こちらの方が聴講生希望だそうです」

「ピ、ピエロ」

「芸人が学を付けちゃ不味いか」

「不味くありません。どれぐらいの期間を希望ですか?」

「一ヶ月で良い」


「それですと。金貨30枚になります。教材と制服などは別料金になります」

「分かった」


 書類に記入して、教材や制服を売っている店の地図とカードを渡された。

 必要な物のリストもある。


 今日一杯は準備で潰れそうだな。

 まずは服屋に行く。

 これが一番手間取りそうだったからだ。


「いらっしゃい」

「魔法学園の制服がほしい」

「ええとお知り合いの方のですが。本人がいらっしゃらないと採寸できません」

「俺が魔法学園に入る」

「はっ、申し訳ありません。お客様の体型ですと、出来合いの物があります。特注すると一週間かかります」

「出来合いの奴でいい。2着くれ」

「お客様、ロープタイの色はどうなされます」

「えっと」


「聴講生だから白です」


 ガイドさんが、助け舟を出してくれた。


「ロープタイの色を教えてくれ」

「赤が新入生。橙が2回生。黄が3回生。緑が院生。青が講師。藍が教授。紫が学園長となってます」


 ガイドさんが教えてくれた。

 ガチガチの階級社会のなのかな。

 まあ良い。

 馬鹿にされたって別に困らない。


 教材集めは簡単だった。

 在庫は常にあるらしい。

 そりゃ、壊したり無くしたりする奴もいるだろうからな。

 それに毎年、品物が変わったりもしない。


「どの講義を受ける予定ですか?」

「それが何か関係あるのか」

「リストに書かれていない本が必要なんです。参考資料とか教授が書いた本ですね。これはどの講義を取るかで変わります」


 ガイドさんは詳しいな。


「今は要らない。必要になったら買うさ。生徒に教えて貰えば良いだろう」

「では、これで準備は終りですね」

「ご苦労様」


 明日から聴講生だ。

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