第53話 ざまぁ開始

 目的を達してアンデッド達が帰って来た。

 ボス部屋の前まで行ったらしい。

 お疲れ。

 アンデッド達をアイテム袋に収納する。


 ボス部屋の前は聖騎士が固めていた。


「お前らは何だ?」

「さあ何だろね」


 聖騎士の誰何に俺は惚けた。


「愚弄するか。やれっ」

「物騒だな。【次元斬】」


 聖騎士達は一撃で両断された。

 ウザリはポスと対戦中らしい。


「リリム達は外で待ってろ」

「私は入らせてもらうわよ。悪いわね、依頼が関係してるので」

「プリシラは何やら訳ありのようだな。俺に危害を加えないのなら許す」

「それはギルドの法に従うとしか」

「まあ、それでいいか。さてと、【賠償】。くはは。ボスとやっている最中にウザリからスキルとレベルを奪ってやったぞ。さて中はどうなっているのかな」


 俺はボス部屋の扉に手を置いた。

 押すと、音もなく扉が開いた。

 プリシラとボス部屋に入ると、聖騎士の精鋭とウザリがパーティを組んでドラゴンと対峙してた。

 扉が閉まる。



「【聖域】。何で発動しないのよ」


 ウザリが上手くいかなくて焦っている。

 いい気味だ。


「よう、ウザリ」


 俺は手を上げて挨拶した。


「お前はウメオ。お前の仕業かぁ!」

「まあな。ところで俺なんかに気を取られていていいのか」


「ぐあああ。聖女様お助けを」


 聖騎士がドラゴンに片足を食いちぎられた。


「【聖域】【聖域】【聖域】。何でよ。神が私を見捨てたというの」


 ドラゴンが大きく息を吸った。


「ブレスが来るぞ」


 聖騎士達が盾を並べて備える。

 俺とプリシラは素早く部屋の隅に逃げた。


 ドラゴンが炎のブレスを吐き始めた。

 その熱気は離れたこちらにも伝わってくるようだ。

 いや、部屋の温度が上がったか。


 ブレスが止まる。

 聖騎士は真っ赤になった盾を捨てて、突撃する。

 ドラゴンの脚に斬りつけるが、剣の刃は通らない。

 Sランクモンスターだからな。


 聖域の助けがなければこんなものか。

 リリムの鋭刃×6ならどうかな。

 たぶん傷ぐらいつけられるだろう。


 ウザリがどうしているかといえば、聖騎士達の後ろで聖句を唱えている。

 聖騎士のひとりが、ドラゴンの尻尾を避けそこなって、ミンチになって壁に叩きつけられた。


「ひっ」


 ウザリが悲鳴を漏らす。

 そんなので聖句を中断するようでは、神への信仰心が足りないんじゃないかな。


 聖騎士が一人、ドラゴンの脚に踏まれてペシャンコになった。


「くあああ」


 ウザリが美しい銀髪をかきむしる。

 死へのカウントダウンが始まったのを意識したらしい。

 またひとり聖騎士がドラゴンに食われた。


「あんた! 隅のほうで見てないで、手伝いなさいよ!」

「嫌だね!」


「聖騎士が全滅したら、あんたも食われるのよ!」

「それはどうかな」


「くうう、何で助けないのよ」


 何か言っているが聞こえない。

 またひとり聖騎士が死んだ。


 次々に聖騎士が死んで、最後のひとりも死んだ。


「ああ、神よ」


 俺とプリシラはウザリのそばに寄った。


「聖女様に聞きたい事があるのよね」


 プリシラが鋭い眼光を放ったような気がした。


「何よ?」

「魔王討伐の達成金を受け取ったけど、あなたの貢献度はどうだったの」

「何をいまさら、ウメオに聞いたでしょ。私達は討伐してない」

「そう、当事者から話を聞かないとね。達成金をあなたは横領したことになる」

「それが何よ」


 聖騎士の死骸を食おうか俺達を殺そうかドラゴンは迷ってる。

 ドラゴンは俺達の実力を試すために尻尾で薙ぎ払いにきた。


「どっせい」


 俺は尻尾を受け止めた。

 そしてドラゴンを投げて壁に叩きつけた。

 轟音と共にダンジョンが揺れる。


 ドラゴンは大きく息を吸った。

 邪魔なトカゲだな。


「【次元斬】」


 俺の攻撃はドラゴンのブレスを切り裂き、首を貫通した。


「ギャン」


 ドラゴンの首に赤い筋が出来る。

 そしてどさりと首が落ちた。

 血が噴水のように噴き出す。

 そしてドラゴンが倒れた。


 ウザリはこの展開に目を丸くしてる。


「あんた、その力は何?」

「俺を害する奴に償って貰った」

「じゃあ、私の力がなくなったのって」

「そういうことだな」


 プリシラが一歩前に出る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る