第45話 光の魔道具

 グリムリーパーのエリアを抜けて、次のモンスターは?


「あれはウサギ?」

「キラーラビットね。初心者殺しと呼ばれているわ。可愛い外見に騙されると、ざっくりいかれてお陀仏よ」

「動きが素早いから、アンデッドが苦戦しそうだな」


 と思ったが、そうでもなかった。

 アンデッドは食われても、邪回復の魔道具、『亡者の聖具』があるから、ちょっとな怪我は関係ない。

 そして、さっき作った『邪なる者の香炉』が邪気を吐き出し、アンデッドに有利なフィールドに変える。

 地の利があればそれは強いよな。


 リリム達が帰って来た。


「邪気が濃くて、うっとうしくてたまらないわ」

「そのために光魔法を貸してるだろう」

「何か発動しながらだと、集中力が削がれるのよね」

「仕方ないな。アルチ、光魔法の魔道具を作ってやれ」

「はい。【魔道具化】できました。『光の聖衣』です」


 魔道具は布の形をしてる。

 これなら首に巻き付けておけるな。


「ありがと」

「他のみんなはどうだ?」

「子蜘蛛達が邪気に侵されるので、光魔法で包むと何もできません」

「私は光魔法の魔道具があれば問題ないかな」


 子蜘蛛をまだ引き連れていたんだな。

 シャランラは蜘蛛マスターになるのかもな。

 緑魔法と相性が良さそうだし。


 子蜘蛛用に光魔法の魔道具を作るか。


「アルチ、子蜘蛛達をなんとかしてやれ」

「じゃあ、みんな輪になって」


 手を繋いで輪になるのはなんか恥ずかしいな。


「【魔道具化】。『光の組紐』完成」


 出来た魔道具は光輝く組紐だった。

 シャランラが組紐を身に着けると、光の糸が子蜘蛛達に伸びていった。

 子蜘蛛達が光を纏う。


 さて、俺も久しぶりに運動するか。

 草原を行くと草むらが揺れて、キラーラビットが飛び出してきた。

 その軌道上に聖剣の刃を置く。

 キラーラビットは自滅した。


 レベル差があるから運動能力では負けない。

 どんどんと掛かって来るが、キラーラビットは俺にかすりもしなかった。


「【地図作成】。ふはは、草むらに隠れているのがお見通しだ」


 狩りの効率が上がった。

 単純な運動能力の勝負ならAランクモンスターもやれるだろう。

 いやSランクでも余裕かも。

 だがこれが対人戦となるとフェイントや駆け引きが生じて、運動能力だけではきつくなる。

 もっともカンストしてる俺に対応できる奴は少ないと思うが。


 キラーラビット戦はもう良いだろう。


「リギッド、カーカス任せた」

「うが」

「うー」


 リギッドが先頭に立つ。

 キラーラビットはリギッドに飛び掛かり噛みついたが、その強靭な皮膚を貫けない。

 リギッドに集ったキラーラビットをカーカスが剣で刺していった。


 カーカスは頭がいいな。

 楽して倒している。


「この邪気は貴様らの仕業か」


 聖騎士が出てきた。

 邪気で煙っているから遠くが見えないので接近を許したように見えるが、地図作成で実はいるのが分かってた。


「そうだと言ったら」

「神に仇なす輩め成敗してくれる。掛かれ」


 リギッドに何本もの剣が突き立てられる。


「うがっ」


 効いてないよという表情のリギッド。

 リギッドが聖騎士の盾を一撃で粉砕して戦いが始まった。


 カーカスが生命力吸収の斬撃を飛ばす。

 聖騎士達は光魔法や浄化で身を守っている。

 カーカスはけん制する役目に徹するようだ。


 リギッドが丁寧に聖騎士を一人ずつ葬っていく。


「神よ。お見捨てになるのですか」


 いや、人間同士の戦いに手を出さないだけだ。

 そんな些事に構っているほど暇じゃないのだろう。

 それに信仰心が神に力を与えているのかな。

 もしそうだとしたら、人間の方が神より偉いことになってしまう。

 そうでないとすれば、神は人間がどれだけ死んでも構わないのだろう。

 モンスターと人間の関係が、代理戦争というのであれば、指揮官ぐらい送ってくるはずだ。


 そんな話は聞いたことがない。

 邪神と善神の関係はマッチポンプのような気がしてならない。

 邪神サイドも、人間を大事にしないのだよな。

 邪神側のスキルがそれを証明してる。


 神がしている何かの実験場。

 そんな気がしてならない。


 そう思うのは俺だけだろうか。

 聖騎士の亡骸をゾンビに変えてアイテム鞄に収納した。


 邪神サイドには指揮官として魔王という存在がある。

 善神サイドは勇者が対する存在としてあるが、奴は俗物だ。

 魔王の行動も良く分らない。

 街を幾つか滅ぼして終わり。

 全人類抹殺を考えているとは到底思えない。

 そのうち分かるのだろうか。

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