第44話 草原

 地下なのに草原に出た。

 これがダンジョンの特色。

 普通では起きない現象が起こる。


「敵はあれか」


 でかいカマキリがいる。


「グリムリーパーよ。鎌を持っているから死神の名前が付いている」


 プリシラが解説してくれた。

 いよいよ、アンデッドには良い武器がないと厳しいか。

 いまアンデッド達が使っている武器は盗賊の物と聖騎士の物だ。

 聖騎士の剣とかはそれなりに良いものだが、平騎士だと高が知れている。


 グールはなぜか武器を使いたがらない。

 組みつけば、体を食いちぎって勝利するけども。

 こういう相手には相性が悪い。


 偽太陽の光だが、これでもレッサーヴァンパイアに弱体化を起こす。

 フィールドが敵だな。


 その分リギッドが大活躍しそうだ。

 それと、邪気功を纏ったカーカスが黒いオーラを漂わせて強そうだ。


 俺はこの二人を重点的に鍛えることにした。

 グリムリーパーを見つけるとリギッドが近寄り斬りつけられるのも構わず、鎌を掴み折った。


 カーカスは聖騎士が使ってた剣を上手く使い。

 鎌を捌いてる。

 だが、打ち合わせるごとにグリムリーパーの動きが鈍っていく。

 なにかスキルを使っているな。


 二人とも危なげなくグリムリーパーを討ち取っていった。


「カーカスは特殊なスキルでも使っているのか?」

「うー、生命力吸収です」


 ああ、生命力吸収ね。

 剣からでも吸収できるのか。

 邪神のスキルとしては使い勝手のいいスキルだな。


「よし、生命力吸収は余っているから貸与してやろう。【貸与、生命力吸収】」

「うー、ありがとうございます」


 カーカスから、黒い斬撃が飛ぶ。

 それに当たったグリムリーパーの動きは鈍った。

 生命力吸収の斬撃を飛ばせるようになったか。


 リリムより強いかもな。

 だが浄化や光魔法という天敵がいる。

 天敵と当たった場合にどうなるか見物だ。


 草原を進むと聖騎士の姿が見えた。

 聖騎士も俺達に気が付いたようだ。

 モンスターを従えているので、テイマーだと思ったのか、警戒もせずに近づいてくる。


「くっ、この腐臭はアンデッド。貴様、死霊魔法使いだな。抜剣!」


 リギッドが前衛で、カーカスが遊撃だ。

 カーカスの黒い斬撃は、浄化スキルと光魔法に破られた。

 やっぱりそうなるよな。


 リギッドは相変わらず無双してる。

 だが、聖騎士には回復役がいるので、吹っ飛ばしただけでは戦線復帰してくる。


「【精神汚染、死ね】」


 俺は精神汚染のスキルを解き放った。

 一瞬、硬直する聖騎士。

 精神汚染も浄化と光魔法で破られるみたいだ。

 だが、一瞬の隙をついてカーカスが聖騎士を仕留めた。


「【精神汚染、死ね】」


 カーカスの刃で、また一人聖騎士が死ぬ。

 それから戦闘はこちらに傾いた。


「うー、殿、精神汚染のスキルを預けてもらえないでしょうか」


 戦闘が終わってカーカスからそう言われた。

 たしかにカーカスが持っていた方がいいよな。


「分かった、貸与してやる。【貸与、精神汚染】」

「うー、ありがとうございます」


「いい、部下をもったわね」


 プリシラに褒められた。


「カーカスは良い部下だが、ええと」

「精神汚染、使うとたぶん本人も少しずつ汚染されていくわ」

「何だって。いや、あり得るかも。邪神のスキルだからな。しかし、邪神は味方を殺してどうするんだ。カーカスは狂ったりしないよな」


「うー、使ってみます」


 グリムリーパー相手にカーカスが精神汚染を使う。


「うー、心地いいです」


 アンデッドだと精神汚染が気持ちいいのか。

 精神汚染ってたぶん邪とか闇の領域だから、アンデッドが心地よく感じるのもあり得るか。


 グリムリーパーにやられたアンデッド達が次々に運ばれてくる。

 普通のアンデッドだとこうなるのか。

 グリムリーパーはCランクで2段階のアンデッドと同格だ。


 何かしてやるか。

 身体強化20個を貸し出すことにした。

 これで少し底上げされるはずだ。


「アルチ、何か禁忌魔道具でアンデッドが強くなるようなのはないか?」

「邪回復魔法は作ったし、邪気展開かな。でもこれを作ると人間が一緒に戦えなくなる」


「とりあえず作ってみてくれ」

「【魔道具化】、『邪なる者の香炉』が出来たわ」


 出来た魔道具は確かに小さい香炉だ。

 対策として、各自が光魔法を持つことにした。

 ちょうど光魔法は6つあったからな。


 アンデッド達がいると邪気が満ちていくのが分かる。


「マスター、我らレッサーヴァンパイアの弱体化が緩和されるようです」


 そんな効果もあるとはな。

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