第39話 聖騎士

 スライムのエリアを抜けてゴブリンのエリア。

 アンデッドたちがせっせとゴブリンと聖騎士の死骸を運んで来る。

 グール以外はな。

 グールの奴は死骸を見ると我慢できないらしい。

 食っちまうってことだ。

 しょうがない奴だ。


 そこいくと、レッサーヴァンパイアは可愛い。

 血を吸ってしまうだけだから。

 血がない死骸でも十分アンデッドにはできる。


 ハイゾンビは安定の使い勝手の良さだ。

 まあ、レッサーヴァンパイアより弱いけど。


 骨からアンデッドを作るとスケルトンが作れるらしい。

 スケルトンの良い面はゾンビみたいに臭くないことだ。

 レッサーヴァンパイアは血の匂いが、グールも腐った肉の臭いがする。


 これさえなければ服を着せて、化粧して、召使にするのにな。


 ゴブリンの死骸に上位種が混ざるようになった。

 そろそろ、このエリアも終わりかな。


 運び込まれてくるゴブリンの死骸数が凄い。

 ひっきりなしにアンデッドが持って来る。

 ついにグールまでもが持って来るようになった。

 お腹一杯になったらしい。


 そしてアンデッドの怪我人が続々と運ばれる。

 ゴブリンごときに遅れをとるような奴らじゃないのにな。


「強敵か?」

「うー、ゴブリンキングです」

「案内しろ」


 案内されると、ゴブリンキングと側近がアンデッドに対して善戦してた。


「【結界魔法】。ほらこのドライアイスを持って行け」


 アンデッドにドライアイスを結界の中に運ぶように言う。

 ほどなくして結界内は霧に包まれた。

 霧が晴れると立っているゴブリンはいない。

 二酸化炭素戦法使えるな。

 もっとも毒ガスの類を暗殺に使うのは基本だろうから、破られることもあるだろうな。

 こっそりやれば無色無臭だから、案外引っ掛かる奴もいるかも。

 次元斬で太刀打ちできない奴は想定できないから、必要ないかも知れないがな。


「お前がアンデッドを操っていたのか」


 聖騎士の一団が現れて俺を詰問した。


「だとしたら」

「殺してやる」

「それは困るな」


「命乞い、弁明、全て無用。背教者は死ね。抜剣、掛かれ、【光刃こうじん】」

「おう【光魔法、目潰し】、いまだ」

「【鋭刃えいば】」

「【貫通かんつう】」

「【斬撃ざんげき】」

「【鋭刃えいば】」


 俺はわざと斬られてやった。

 プリシラが法にこだわるからな。

 もっとも命を狙われると取れる賠償も大きい。


「ダメージ確認できず」

「攻撃を続けろ。正義は我々にある」

「くそっ、【鋭刃えいば】」

「何で針の穴ほどの傷が出来ない。【貫通かんつう】」

「【斬撃ざんげき】。なんて硬いんだ」


「貴様、ただの死霊魔法つかいじゃないな。生贄スキル持ちか、一体何人の人間を邪神に奉げた? どんなカラクリだ」

「知らんな。【賠償】」



「【光刃こうじん】、なぜスキルが発動しない」


 ふむ、神はお前達をさほど大事に思ってないらしいぞ。

 賠償してしかるべきと判定が下ったようだな。

 神は崇めよなどと言ったことはないんじゃないかなと思う。

 ないがしろにするのも違うが、立派な神殿とか、黄金の神具を作れとは言わないんじゃないかな。

 人間が勝手にやっていることだと思う。

 教義さえ神が作ったのか怪しい。


「なぜって奪ってやったからだ。【次元斬】」


 聖騎士達が死んだ。

 みんななぜって顔をしてる。

 賠償スキルもやつらにとったら準禁忌スキルなんだろうな。

 奪うスキルだからな。


 もうそこからして相容れない。


 ステータスオープンと。

 奪ったスキルは身体強化×2、光刃、浄化×2、光魔法×2、回復魔法、鋭刃×2、貫通、斬撃。

 さすが聖騎士。

 チンピラより良いスキルを持っている。


「プリシラ、結界魔法を持った聖騎士はいないのか」

「そういう人達は、神殿を守っているわ」

「そうか残念だ」


「それにしても聖騎士は酷いわね。いきなり斬りかかるのだもの」

「狂信者の集まりだからな」

「そうね。好きになれないわ」


 狂信者が好きな人はいないと思う。

 死兵となって戦えという奴らだからな。

 それにしてもウザリは、俺を生贄にしたことと教義とで、どう折り合いをつけたのかな。


 サルサン教徒なら高位の聖職者を逃すために、体を張って殉教しても当然ですぐらいに思っているのかな。


「結界魔法持ちの悪党はいないのか?」

「金庫番かしらね」


 金庫番か。

 じゃあギャングみたいな組織だな。

 大きい組織で街毎いや、集団毎に金庫番がいるといいな。

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