第34話 嘘スキル

 国境の街に着いた。

 まずは教会に。


「貴方の心に平和と平穏がありますように」


 教会の神官から挨拶された。


「あなたにも」


 短く返答を返す。


「喜捨ですか?」

「巡礼の聖符が頂きたいのです」

「どなたかご不幸にでも?」

「商売をやってまして、店を出すことになりまして、その成功を祈っての巡礼の旅です」

「それは素晴らしい心持ちですね。ひとり金貨10枚の喜捨を頂きます」


 何が素晴らしいだ。

 金貨10枚も取りやがって。

 聖句と魔法陣みたいなのが書かれた紙を貰った。


「【賠償】。くそっ、取り返せない。」


 教会から出てスキルを使ったが、取り返せなかった。

 正当な取引ってわけか。

 こんな紙に金貨10枚の価値があるってか。

 これがないと教国に滞在できないんだから、ある意味仕方ないのか。

 聖符があると足税と聖堂の拝観料は無料だ。


 教国の全部の聖堂を回ると、たしかにそれぐらいは掛かる。

 納得したくないが納得しよう。


 さあ役所だ。


「越境許可がほしい」


 そう言って俺は聖符を見せた。


「金貨1枚になります」


 ここもぼったくりだな。

 だが、賠償は取れないのだろうな。

 税金の一種だからな。


 詐欺師を探すとするか。

 どうやって探そう。


「プリシラ、指針剣とやらで詐欺師を見つけられるか」

「ええ【指針剣】」


 プリシラのナビに従って進み。

 辿り着いたのは診療所。

 おいおい、医者が詐欺師なのか。

 まあ、この世界、医者は免許がいらないからな。

 名乗れば俺だって今日から医者だ。


「ごめん下さい」

「病気かい」

「ええ、少し熱っぽくて」

「それはいけない」


 おっと、なんか熱が出てきた。

 嘘から出たまことか。

 そんなわけないだろ。


「先生頼みます」

「この薬を目の前で飲みなさい。すぐに良くなりますよ」


 俺は言われた通り薬を飲んだ。

 ほんとうに治ったぞ。


「ありがとうございます」

「お代は金貨1枚だ。毎日ここに通いなさい。でないと病気は治らないよ」


 金貨1枚払って、診療所を出る。


「【賠償】、ステータスオープン」


 おお、偽病魔法と嘘スキルが増えている。

 良いことを思いついた。


「【偽病魔法】」


 俺は高熱を発症した。

 診療所に戻る。


「先生、さっきの薬だめみたいです」

「どれどれ。これは大変だ、。私の手には負えない。別の医者に行きたまえ」


 偽医者は俺のおでこに手を当てるとそう言った。


「さっきの先生の薬で悪化したんだ。どう責任を取ってくれる。あんたもしかして偽医者か」

「何をいうんだ。たかりなら帰ってくれ」

「俺は嘘判別魔法をもっているんだ。【嘘判別魔法】。やっぱりあんた偽医者だ」

「なんだって。ステータスオープン。うわ、スキルが消えている」


 俺の嘘スキルで信じたな。


「神様が罰を与えたんだな」

「そんなことって」

「どうする。俺はお前を教会に突き出しても良いんだぜ。きっと準禁忌スキルを持っていたんだろ」

「何でもします。それだけは」


「そうか。じゃあ他の詐欺師を紹介しろ。そいつらを突き出して、お前は許してやろう」


 次に行ったのは、偽両替商。


「邪魔をするよ」

「両替かい」

「まあな。金貨10枚を全て銀貨に換えてほしい」


 俺は金貨10枚を出した。

 偽両替商はそれを秤に載せた。


「おやっ、軽いのが混ざっているね。ちょっと失礼」


 偽両替商は金貨1枚を手に取ると、それを折った。

 断面が鉄の色だ。


「困ったねぇ、贋金を見つけたら、役人に突き出さないといけない。でもみたところあんたも知らなかったんだろう。ここで相談だ。金貨1000枚払って貰えれば見て見ぬふりをしよう。あんたも被害者だからな」


 俺は大人しく金貨1000枚を払って出た。


「【賠償】。ステータスオープン。うはは、嘘と結界スキルが手に入った」


 重さを変えるのに結界スキルを使ってたんだな。

 念願の結界スキルだ。

 得した気分。


 それから詐欺師仲間を何人も紹介してもらい、無事カモにされて、賠償をむしり取った。

 嘘スキルが人数分集まった。


「アルチ、お前にスキルを貸してやろう」

「えっ、そんなことできるの」

「まあな。【貸与、極小細工、ゴーレム生成、嘘】」

「やった。ゴーレム作ってみたかったんだぁ」


「前に言ってたあみの目の結界の魔道具作ってくれ」


 あみの結界の魔道具が作られた。

 強度がないので、刃物とかは防げない。

 防げるのは虫だけだ。

 だが、虫がうっとうしかったんだよな。


 これで蚊に悩まされることはない。

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