第31話 魔道具職人
ウソツキー領の領都に着いた。
門番に妨害されることなく領都の中に入る。
ウソツキー侯爵は一般人には、リリン家を改易させた奸計を知られたくないのだな。
スキャンダルだからな。
それに今は領都にいない。
侯爵は王都にいるはずだから、俺達が何かしたくても出来ないので、危険はさほどないと思っているはず。
とりあえず殺し屋を放っておこうぐらいのところか。
領都を壊滅するぐらい容易いが、領民を虐げても仕方ない。
復讐はしたいが、俺はそこまで腐ってないつもりだ。
リリムも同じ意見だろう。
お抱えの禁忌魔道具職人をとっとと拉致して去ろう。
ところで情報収集はどうやるの。
誰を拉致るのか名前さえ分からない。
「プリシラ、禁忌魔道具職人を捕まえたい。どうしたら良いと思う」
「そうね。情報屋にあたるのがいいけど、生憎と伝手がないのよね」
「噂を拾っても無理そうだな。ふっ、良いこと考えた。敵同士をぶつけよう。教会に密告してやる」
俺は禁忌魔道具使いゾンビらの似顔絵を街の絵かきに描かせた。
ゾンビは化粧しているからぱっと見は人間と区別がつかないはずだ。
近づかなければ匂いもばれない。
匂いを指摘されたら、こいつら喋れないので人の嫌がるゴミ集め関係の仕事をしていると言えば良い。
作戦は上手くいきばれなかった。
そして、そいつらのスキルをと手口を書いて、ウソツキー侯爵の子飼いとして飼われていると付け加えて、教会に投げ文した。
禁忌魔道具を作る職人がいるはずだとも書いたからきっと調べるはずだ。
教会を見張ると、聖騎士が何人も出て行った。
あいつら狂信者だからな。
今頃、ウソツキー侯爵邸に調べに入っているはずだ。
ウソツキー侯爵の使用人が何人も捕まったようだ。
嘘判別スキルがあるからきっと何かの罪を犯したに違いない。
上が腐っていると下も腐るのは自明の理だ。
どいつが禁忌魔道具職人だろうか。
区別がつかないな。
仕方ない、教会の牢屋に忍び込むか。
夜を待った。
「【隠身】」
俺は体を見えなくした。
風を読むような達人さえいなければ、ばれない。
消去スキルとか無ければ解除されないはずだ。
人相がばれなきゃ見つかっても逃げ切る自信がある。
牢屋までは簡単に入れた。
おかしいな人と全く出会わないなんて。
牢屋の通路に人形が置かれている。
嫌な予感マックス。
「ケタケタケタ」
人形が笑い始めた。
「くくくっ、わははっ」
俺はおかしくもないのに笑い始めた。
だめだ笑いが止まらない。
牢の中の人間も大笑いしている。
くっ、笑いが止まらない。
「わははっ、ひー、くくくっ、わははは、ば、【賠償】」
俺の手に人形が握られた。
人形を握り潰す。
「ふー、笑い続けるのがこんなに苦痛だったとはな」
さて、ステータスを確認すると。
道化と投擲スキルが手に入った。
俺は鉄格子に近寄った。
「魔道具職人は誰だ」
「はい」
女の子が手を上げた。
素直だな。
「鉄格子から離れていろ」
女の子が牢の隅に避難する。
「【次元斬】」
「頼む。俺達も連れてってくれ」
関係ない奴がそう言って哀願した。
「お断りだ」
「くそう。看守、囚人が逃げたぞ! 牢破りだ!」
さっきの人形の声を聞かないように、ウソツキー侯爵に買収されている牢番は近くにいないはずだ。
駆けてくる足音や、鎧の音も聞こえない。
女の子を連れて教会の牢屋から出た。
「透明さん助けてくれてありがとう」
「礼を言うのはまだ早い。話によったらもっと酷いことになる」
俺は隠身を解除した。
「酷いことはちょっと勘弁かな」
「冷静だな」
「教会より酷いことなんてないでしょ。禁忌魔道具作った職人がどうなるか知ってる。指を全て斬り飛ばされ、目を潰されて、何十年も鎖で繋がれるんだよ。聖句を無理やり唱えさせられてね」
「ウソツキー侯爵に対する忠誠はあるか?」
「ないない。さっき殺されそうになったからね。あやうく、自分で作った笑い人形で殺されるところだったし」
「名前は?」
「アルチ」
「教会とウソツキー侯爵から、助けてやる。契約魔法を受け入れるか?」
「受け入れるよ」
「【暗黒契約魔法】俺を裏切らない」
「承りました」
「よし顔を変えるぞ。【貸与、幻影】」
「もしかしてスキルを貸してくれたの」
「とっとと、幻影で顔を変えろ」
「はいはい、【幻影】どう可愛い?」
「前とは見違えるようだ」
「ちょっと、素顔がブスだったって言いたいの」
「じゃあ、どう答えりゃ良かったんだ」
少しイラっときた。
全く女って奴は、救いようがない。
命が危ないのを忘れて顔のことを気にしてやがる。
全く度し難い。
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