第30話 寄生ゴーレム

 休憩時間、馬車の外で筋肉をほぐしていたら、首筋にチクっときた。

 全員が首を手で押さえている。


 やられたな。


「プリシラ何だと思う?」

「寄生ゴーレムね。10分以内に取り出さないと危険だわ」

「【賠償】、俺のは取り出せた」


 手の平に蚊より小さい、羽虫型のゴーレムが乗っていた。

 速攻で彼女らを救う方法を考えろ。

 あれしかないか。


「【暗黒召喚、寄生蟲】、飲め」


 俺は彼女らにウジみたいな寄生蟲を飲ませた。

 さあ、体内で戦え。


 体内を進む二つのもの。

 4人はなんとも言えない顔をしている。

 気持ち悪いのだろうな。

 体内を異物が進む感覚なんて味わいたくない。


 しばらくして4人は、痛いと呻いた。

 どうやら戦いが終わったらしい。


「【治癒魔法】、これでどうだ」

「治ったわ」


「さて、術士からは何が貰えたかな」


 ステータスをチェックすると、極小細工、爆発魔法が増えてた。


「「「「ぺっ」」」」


 4人が寄生蟲と寄生ゴーレムの残骸を吐き出す。


「【帰還、寄生蟲】。プリシラ、ゴーレム使いを探して殺してこい」


「金貨10枚よろしく、それとゾンビの護衛付けてよ。ゾンビなら寄生ゴーレムも平気でしょ」

「そうだな。それで頼む」


 10体のゾンビがプリシラの指示で動く。

 ほどなくして、痩せて眼鏡を掛けた神経質そうな男をゾンビが担いで戻ってきた。


 もう男は死んでいたので、ゾンビにする。

 二度とこういうことが起きないように結界が必要だな。

 ただ、結界はめんどくさい。

 結界の外にいる人が当たると攻撃する。

 危険極まりない。


 中にいる人も外に出ないように注意が必要だ。

 それじゃ使い勝手が悪い。

 悪意を持った奴だけを迎撃出来たら良いのだが。

 もしできてもゴーレムに悪意があるのかは微妙だ。


 網戸みたいな結界が良いな。

 魔道具職人を捕まえたら、作ってもらうか。


「今回は酷い目にあったわ。ゴーレムが体内に入るし、ウジみたいなのを飲ませられるし」


 リリムがげっそりとした顔で言った。


「体内の異物を殺すようなスキルとか魔法はないかな」

「そんな便利な物があればいいのにね」


「血液魔法なら対抗できるかも知れないわね。吸血鬼がよく使うと聞いたけど。全身の血液が武器になるから、体内の物を攻撃できるわ」


 プリシラも会話に入ってきた。


「ゾンビから進化させるのは骨だな。できるかな【血液魔法】」


 試しにやってみた。

 指先から血が出て針に変化する。

 暗黒魔法に血液魔法は含まれていたのだな。

 でもこれ、使い過ぎると死ぬ奴だ。

 他人の血液ならそうでもないか。

 でもこういうのは抗われると、大抵レジストされる。


 許可を取って、体内の異物を取り出すのには良いかもしれない。

 その他だと使い所の難しい魔法だ。

 命を削るという意味では邪神が好みそうな魔法だけどね。

 吸血鬼が使う魔法だから、当然、禁忌魔法のひとつなのだろう。

 大っぴらに使えない魔法は要らないな。


「禁忌魔法でなく、もっと穏やかな方法はないのかな」

「穏やかじゃないけど、変化関係のスキルなら」


 とプリシラ。


「体を水に変えたり、炎に変えたりするのね」


 リリムが解説してくれた。


「それって無敵なのかな?」


 変化スキルに興味が出た。


「水だって細かくされたり蒸発させられれば、死ぬわ。炎も消されれば終わり」


 プリシラが答えをくれた。


「だよね。上手い話はないか」


 変化系スキルは体内の異物を取るには良いかも知れないけど、そのために探すのはちょっと違うな。

 そこまでの労力は掛けられない。

 でも対処法を知っておくのは良いことだ。

 俺に足りないのは知識だからな。


「【極小細工】」


 奪ったスキルを試してみる。

 試さないことには使えるかどうか分からないからだ。

 色々な物が細かい部分まではっきり見える。

 寄生ゴーレムが虫じゃなくて、作られた物だということがはっきりと分かった。

 寄生ゴーレムを針で分解する。

 手の震えもない。

 職人には夢のようなスキルだな。


 寄生ゴーレムが小さい爆発を起こして煙を上げた。

 爆発魔法が仕込んであったようだ。

 こんなのが、脳とか、太い動脈で爆発されたらたまらない。

 寄生ゴーレム恐るべしだな。


 爆発魔法は試すまでもない。

 火炎魔法に含まれているからだ。

 イヤミィもたまに使ってた。

 だから、使い方は分かっている。


 爆発魔法は誰かに貸与しよう。

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